午後の光が差し込む、六畳一間のアパート。外では子どもたちの笑い声がかすかに響いているが、室内は薄暗く、カーテンは半分だけ閉ざされている。三枝美佳は、ノートパソコンの画面をぼんやりと眺めていた。指にはスナック菓子の粉がつき、ペットボトルの烏龍茶はぬるくなっている。「今日も、面接落ちか……」メールを確認すると、午前中に受けたコンビニの面接の不採用通知が届いていた。「また明日探せばいいや」と美佳は呟き、ため息まじりに椅子を回転させる。スマホが震えた。──【新着メール:アンケート協力のお願い(謝礼あり)】差出人は聞いたことのない「LAPIS DATA」なる会社。タイトルに「謝礼あり」とあるのが目に留まり、反射的にタップする。> 平素よりお世話になっております。簡単なアンケートにご協力いただくだけで、謝礼として現金5,000円をお送りします。ご興味のある方は、下記のリンクからご参加ください。(怪しい……けど、まぁ、見るだけなら)美佳はアンケートのURLをクリックした。開かれた画面は意外なほど洗練されていて、いかにも“それっぽい”アンケートフォームが表示される。質問は最初こそ軽いものだった。「あなたの性別を教えてください」「今のご職業は?」「普段感じるストレスの大きさはどれくらいですか?」(ありがちな質問ばっかじゃん……)そう思いながらも、美佳はぽちぽちと選択肢を選んでいった。進むにつれ、質問はやや深くなる。「これまでに人を強く憎んだことはありますか?」「あなたがいなくなれば楽になると思ったことはありますか?」「誰かに“消えてほしい”と思ったことはありますか?」(……ちょっと気持ち悪いな)引き返そうかと一瞬思ったが、すでに途中まで進めてしまっている。しかも、最下部には「この設問までに進んだ方には謝礼を確約いたします」の文字。──そうして、美佳は気づけば最後の設問まで到達していた。> Q.25(最終質問):「あなたがこの世から消えてほしいと本気で願う人物がいれば、その名前をフルネームでご記入ください。※該当者がいない場合は空欄でも構いません。」画面の下部には「※回答は匿名であり、プライバシーは完全に保護されます」と書かれていた。美佳はしばらく無言で画面を見つめた。記憶の底から、ある男の顔が浮かんできた。
Terakhir Diperbarui : 2026-07-07 Baca selengkapnya