「翔太、何ぼんやりしているの。早く中に入って、あの間男が誰なのか確かめなさい!」母は俺を急かすように言った。その焦った表情は、まるで心から俺のことを心配しているかのようだった。しかしよく考えれば、この不倫発覚の劇は母と弟が仕組んだ罠であることは明らかだった。前世の俺は旅行に出かけていたはずなのに、わざわざ母が俺に密告してきたのだ。あの時の俺は怒りに我を忘れ、すぐに家へ引き返し、彼らと揉み合いになった。俺は衝動的に結衣を突き飛ばしてしまい、その結果、彼女は流産した。母は心を痛めるふりをしながら、すべての責任を俺に押し付けた。そうして実の母の目論見通り、俺は子供を失い、結婚生活を失い、生きていくための居場所すら失った。俺は熱く腫れたまぶたを閉じ、胸を締め付けるような痛みを無理やり抑え込み、背を向けて外へ歩き出した。今世では、そんな未練はとうに捨てていた。愛だの恋だのはどうでもいい。金こそがすべてなのだ。俺が無関心な様子で歩き出すのを見て、母の目に驚きの色が走った。彼女は歯を食いしばり、勢いよく寝室のドアを押し開けた。続いて、悲鳴が響き渡った。神崎蓮(かんざき れん)は慌てて布団を引き寄せ、顔に後悔の念を浮かべていた。「母さん、俺……飲みすぎて、わざとじゃないんだ……」母はショックを受けたふりをして駆け寄り、蓮の頭を指差して泣きながら彼を罵った。結衣は全く慌てることなく、バスローブを手に取って無造作に羽織ると、ついでとばかりにタバコに火をつけた。彼女は俺を見て、皮肉すら交えた口調で言った。「今回は、どうするつもり?」一回目の不倫で、俺は彼女の愛人を裸のまま家から追い出した。二回目は、彼女のアシスタントの顔に傷をつけた。三回目は、彼女の会社に乗り込んで大騒ぎし、その日の株価を暴落させた。もう何度目か覚えていない。ただ覚えているのは、叫びすぎてかすれた自分の声と、怒りに歪んだ自分の顔だけだ。その結果、誰もが俺を見ると、「またあのイカれたサレ夫が乗り込んできたぞ」と面白がるようになった。結衣の行動は、回を重ねるごとにエスカレートしていった。しかし今世の俺は、すでに彼女を完全に見限っていた。ただ快適で平穏な生活だけが欲しかった。突然、蓮が恐怖に怯えながら俺の前に膝をついた。「兄
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