1分20秒後、ジェットコースターはゆっくりと乗り場へ戻った。2人はそこでようやく、つないでいた手をそっと離した。篠原莉央(しのはら りお)は興奮した様子で大はしゃぎし、頬を赤く染めていた。「さっき心拍数150まで上がったんだけど!すっごくスリルあった!」藤堂晃希(とうどう こうき)は笑って莉央を見た。「俺も」2人はいつものように笑い合いながら、さっきのジェットコースターがどれだけ怖くて楽しかったかを話していた。それを聞いているうちに、私は背筋が冷たくなった。不意に莉央が、私――高梨結菜(たかなし ゆいな)へ目を向けた。「結菜は?さっき全然叫んでなかったよね」「私は……」一瞬言葉に詰まり、何と答えようか迷っていると、「はっくしゅん!」莉央が小さなくしゃみをした。ほんのかすかな音だったのに、晃希はすぐに気づいた。すぐに上着を脱ぎ、莉央の肩にかけた。「ミニスカートでジェットコースターに乗るからだ。ほら、冷えただろ」「好きで着てるんだからいいの!スリルあって楽しかったし!」莉央は晃希をじっと見つめ、わずかに眉を上げた。次の瞬間、晃希の頬に浮かんだ赤みが耳まで広がり、喉仏が何度か動くのが見えた。まだ身体に浮遊感が残っていたせいなのか。それとも、裏切られた痛みのせいなのか。目の前の光景に、めまいがして吐き気まで込み上げてきた。「晃希、低血糖みたい……」苦しさに耐えきれず、その場にしゃがみ込み、晃希へ手を伸ばした。だが、何の反応もなかった。もう一度顔を上げると、晃希と莉央はすでに10メートルほど先を歩いていた。陽の光の中で、晃希の影は長く伸びていた。莉央にはどんどん近づき、私からはどんどん遠ざかっていく。遊園地のスタッフが私を支えて立たせ、エナジードリンクを1本差し出してくれた。「お一人で回るときは、無理しないでくださいね。楽しい一日になりますように。お誕生日おめでとうございます!」私は苦く笑い、胸元のバースデーシールに触れた。今日は私の25歳の誕生日だった。入園してから、何人ものスタッフに誕生日を祝ってもらった。それなのに、すぐそばにいる一番親しい2人からは、ひと言の祝いすらなかった。スマホが震え、晃希から位置情報が送られてきた。【早く来て
Read More