「134番!藤原優依(ふじわら・ゆい)さん!」看護師に支えられながら診察室へ入った。吉田さやか(よしだ・さやか)と文哉が診察室を出てから、もう二時間以上が経っていた。痛みで腰をまっすぐ伸ばせず、私は前かがみのまま体を強張らせていた。診察室へ案内してくれた看護師は、その場に残っていた。「町田先生、この患者さんは発熱と生理痛があり、遺伝性糖尿病もあります。また、ペニシリン系の薬剤にアレルギーがあります。先ほど痛みで階段から転倒し、足も怪我しました」看護師はそう言って、温かい牛乳を差し出してくれた。不意に、喉が詰まるような感覚に襲われた。看護師ですら、私が糖尿病で空腹を避けなければならないことを覚えていたのに、文哉は覚えていなかった。受付で順番を待っていたとき、文哉には私の姿が見えていたはずなのに、手に持っていた朝食をさやかに渡した。「それと、この方は黒川先生の……」「大丈夫です。普通の痛み止めの処方だけでいいです」私は看護師の言葉を遮った。文哉は、私が彼の医長という立場を利用して特別扱いされることを何よりも嫌っていた。昔の私は、そのたびに理由を尋ね、問い詰めていた。どれだけ傷つき、泣いても、納得できる説明を求めていた。だけど今は違う。今はただ、割り切って身を引くだけだ。看護師も何かを察したのか、それ以上私と文哉の関係には触れなかった。診察室を出たとき、ちょうど文哉と鉢合わせた。「帰ったらちゃんと温かいものを飲んで。田村先生に用意してもらったよもぎの入浴剤を、お風呂で使って。病院の待合室で体が冷えてると思うから」そう言いながら、彼は白衣を脱ぐと、ためらいもなくさやかの肩に掛けた。その眼差しはとても優しく、思いやりであふれていて、まるで恋人を見ているようだった。「分かりました」さやかは嬉しそうに笑った。「先生ったら、手術で忙しいのにわざわざ時間を作って診察に付き添ってくださって。もう心配をかけないように、ちゃんと体を大事にしますから」その瞬間、私の手から紙コップが滑り落ち、温かい牛乳が床に広がった。それだけならまだよかった。だが、もう片方の手に持っていた処方箋にも牛乳が飛び散って文字が滲んだ。そこでようやく文哉は私に気づいた。彼は慌ててさやかから手を離し、足早に私の方へ歩
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