店員がテーブルにやってきて、「本日のカップル企画、おふたりでご参加になりますか?」と尋ねた。店員の目は、寄り添って座る直人と花連にしか向いておらず、愛想よく声を弾ませている。勘違いされても仕方ないだろう。ふたりは肩がふれ合うほど近くに座っていて、私だけが向かいの席にひとり、まるで相席の他人のように座っているのだから。「前回もおふたり、息ぴったりでしたよね。うちのアロマギフトをお持ち帰りになりましたし。今日はもっと豪華な景品ですよ!」手の中のフォークが皿に当たり、コトンと音を立てた。あのとき彼が「会社の抽選で当たった」と持ち帰ったアロマは、このふたりが一緒にカップルゲームに参加して勝ち取ったものだったのか。私が誘うたび、彼はいつも忙しいと言っていた。仕事が立て込んでいる、クライアントの相手をしなくちゃいけないと、週末でさえ30分の食事の時間すら作れないと言っていたくせに。やっと重い腰を上げてくれたと思ったのに、席に着いてみれば、花連はとっくに隣で待っていたのだ。ふたりとも、私の様子がおかしいことにはまるで気づいていない。顔を見合わせたあと、花連はもう笑顔で直人の腕に絡みつき、ステージに上がる支度をしていた。照明が点く直前になって、彼女はふと振り返り、申し訳なさそうに甘えた声を出す。「あ、未羽もいるんだったね。忘れてた。やっぱり未羽たちが出た方がよくない?」口では譲るようなことを言いながらも、直人の腕に絡めた手は少しも緩めようとしない。「いいわねえ、あのふたり。お似合い」「ほら、早く行きなよ!」周りのテーブルから囃す声が上がり、グラスの触れ合う音に周囲の笑い声が混じる。店中の視線が、固く絡み合ったふたつの手に集まっていた。私はグラスを握る指に思わず力が入ったまま、口元をわずかに引きつらせた。「いいよ、ふたりで楽しんできて」直人もさすがに私の様子がおかしいことに気づいたらしいが、振り返っただけで、花連とつないだ手を離そうとはしなかった。「機嫌悪くするなよ。今日、花連の誕生日なんだから」ステージはフロアより半段ほど高く、上がるには段を1段上らなくてはならない。花連は細いピンヒールのまま急いだせいで足元を狂わせ、体が大きく前のめりに傾いた。離れた席からでも小さな悲鳴が聞こえた。すると、
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