数日後の夜。 コンクリート打ちっぱなしの九条オフィス。 壁際の棚には資料の山。だが机の上は意外なほど整然としている。 私は、いつもより少し背筋を伸ばして椅子に座っていた。 対面のソファでは、九条がやや前のめりに身体を傾け、手元のレポート用紙をじっと睨んでいる。 その表情は真剣そのものだった。 「……なあこれ、お前が……ひとりで考えたのか?」 九条の声が低く響く。 「はい。これが、私の——残る999,500円の投資プランです」 私は、胸の内で緊張をなだめるように、ゆっくり息を吐く。 九条は黙ってページをめくる。 その目が細くなった。 (……ダメな部分があれば、きっとズバズバ指摘される——) 彼は何度もレポートをめくり直し、ため息をつく。 沈黙が続く中、私は耐えきれず口を開いた。 「……もし、足りないところがあれば、また作り直しますので——」 九条は手元の紙をトンと揃え、こちらを見た。「いや、悪くない。というか……正直、驚いている」 その声色に、思わず目を見張る。「……官民連携のAIヘルスケア、都市型再開発、資本提携直前の通信大手……どれも“現場の情報”が仮説のベースになっている」「そうです。“上昇材料の先回り”で、まず発表が早い一銘柄に資金を集中します」 九条が小さく頷く。「で、上がったら売って移ると?」「はい。仮説に達したら伸び切る前に利確。次の“材料待ち銘柄”に即移動。これを繰り返します」「……リスクは?」「当然あります。でも、“仮説”が外れても、次に移るだけ。重要なのは“回転力”と“判断の速さ“で複利の化物を短期で育てること」 一瞬の沈黙のあと、私は言い切る。「これは希望とか夢じゃなく、情報と速度で積み上げる資産形成プランです」 すると九条がニヤリと笑みを浮かべた。「つまり……“見えない構造”に仕込む。三條圭のやり方によく似てる——彼に聞いたのか?」 私は思わず首を横に振った。「いいえ。三條さんからアドバイスは受けてません。ただあのパーティで見たり聞こえた“情報”を、各社の四季報、経済誌の記事などに照らして全部仮説に組み込んだんです」 (——パーティで、“見聞きした”だけだと? なんてやつだ……もうその“目”を持ち、しかも構造に落とし込める
Last Updated : 2026-09-14 Read more