その子と初めて出会ったのは、師走の晴れた早朝。オープンとほぼ同時に来店したからよく覚えている。大学……いや、高校生だろうか。黒のジャケットに派手めの髪色。女性客は年齢問わず多いけど、若い男の子ひとりの来店は珍しい。ただ陳列された石を見る顔は真剣そのもので、不意の横顔に見蕩れてしまった。「なにかお探しでしたら、遠慮なくお声がけくださいね」少し離れた場所からゆっくり声を掛ける。すると彼はソワソワしながらこちらに顔を向けた。他にお客がいないことを確認し、目の前の大理石のトレイに置かれた石を指さす。「この石は、何か意味とかあるんですか?」彼の隣に立ち、指し示された品を見る。それは白く、傾けると七色の光を放つ石だった。「シンセチックオパールですね。小さな幸せを届けてくれると言われてますよ。あとは創造力を高める、明るさや希望を与えてくれるという石言葉があります。ただ……」「ただ?」「パワーストーンとしての効果に興味がおありでしたら、他の石の方が良いかも。シンセチックオパールは人工石なんです。オパールなんて言ってるけど、実はオパールじゃなくてガラス石ですし」「えぇ……」男の子が露骨にがっかりして見せたので、笑いながら「でも綺麗でしょう?」と持って見せた。この石に限らず、市場の低価格で販売されている天然石は合成石であることが珍しくない。それでもその石が持つ石言葉を信じれば、御守りとして持つのに充分だ。神社で買える御守りの効力を信じない人はたくさんいるし、パッと入った海外の雑貨屋の魔除けを信じて買って帰る人もいる。結局気の持ちようだ。だから普段何が売れようと傍観してる方なんだけど、この子があまりに真剣に見てるから、聞かれてもないことを喋ってしまった。こんなこと初めてだ。何となく、店に入ること自体緊張しているように見えたから……いつかの自分と重なったのかもしれない。「優しい色と光を帯びてて、僕も好きな石です。部屋 にも置いてるぐらいなんで」短く笑うと、彼はわずかに目を見開いた。「お差し支えなければ、ご自身用か贈り物かお聞かせ願えませんか」「プレゼント……。ばあちゃんが入院しちゃって、そういやこういう石が大好きだったな、って思って」「そうでしたか……。大変でしたね」彼はわずかに俯き、小声で答えた。気になるが、プライベートなことを深く聴くわけには
Última actualización : 2026-08-31 Leer más