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第11話

離婚の手続きを終えたその日、私は医師から、残された時間はあと十数日ほどだろうと告げられた。さして悲しいとは思わなかった。最初に宣告された3ヶ月と比べれば、十数日も大して変わらない。どうせ、私が最後にやりたいことなど、もうたった一つしか残されていないのだ。「個展を開きたい」看護師は私が冗談を言っているのだと思い、「そんな……今のお体で耐えられますか?」と心配そうに尋ねた。「耐えられなくたって、開くんです」私はこれほど長く絵を描き続けてきたというのに、自分のための個展を一度も開いたことがなかった。18歳の時、私は海外の美術大学に合格した。だが、両親はその学費を姉の手術代に充てた。その後、自力でコンクールに出場して得た賞金も、父が会社の赤字を穴埋めするために奪っていった。結婚してからは、蒼真だけを唯一のモデルにして描き続けた。彼を誰よりも美しく描きさえすれば、いつか私を見てくれると信じていたからだ。死の淵に立たされて、ようやく分かった。私が最も描くべきだったのは、他の誰でもない、私自身だったのだと。この話が耳に入った蒼真は、海市で最も大きなギャラリーを手配してくれた。「手伝おうか」などと恩着せがましいことは一切聞かず、ただ会場の資料だけを看護師に託してきた。選択権は、私に委ねられていた。私はそれを受け入れることにした。彼を許したからではない。ただ、残されたわずかな命と引き換えにしてまで、プライドに固執して張り合う時間が、もう私には残されていなかったからだ。個展のタイトルは、「譲」と名付けた。展示された最初の一枚は、あたたかな日差しが差し込むベビールームの絵だった。部屋の中には、小さなベッドが二つ並んでいる。片方のベッドには柔らかな真っ白のシーツが敷かれ、枕元にはぬいぐるみが溢れんばかりに置かれている。そしてもう片方は、光の当たらない薄暗い部屋の隅に追いやられ、ペラペラの古い掛け布団がたった一枚置かれているだけだった。二枚目の絵は、姉の名前だけが書かれたバースデーケーキだった。画面の端の薄暗がりには、一度も火を点けられることのなかったろうそくを握りしめた少女が立っている。三枚目は、無残に真っ二つに引き裂かれた海外の美術大学の合格通知書だった。四枚目は、結婚式だった。祭壇に
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第12話

個展を終えて3日後、私は海へと向かった。医師からは猛反対されたが、私は無理を押し通した。蒼真は車を手配し、ありとあらゆる救急薬を積み込んでくれた。彼は道中ずっと、私の後ろを黙ってついてきた。私がどこへ行くつもりなのかと、問い詰めることすらなく。海風はひどく冷たく、強かった。砂浜にイーゼルを立てた時、太陽はまだ昇っていなかった。蒼真は手際よくキャンバスを固定すると、すぐさま数歩後ろへと下がった。私の選択に勝手に干渉しないことを、彼はすでに学んでいた。筆を握る手は、どうしようもなく小刻みに震えていた。その震えのせいで、最初の一筆はキャンバスに歪な跡を残してしまった。蒼真が反射的に身を乗り出しかけ、ぴたりと動きを止めた。「……手伝おうか?」私は静かに首を振った。「この絵だけは……私一人で描き上げたいの」私は、一人の女性の姿を描き始めた。彼女は海辺に立っている。その後ろには、両親も、姉も、夫もいない。彼女はもう、誰のことも見ていなかった。ただ真っ直ぐに、昇りゆく朝日だけを見つめている。絵が半ばまで仕上がった時だった。不意に咳き込み、一口の血を吐き出した。砂浜に散った真っ赤な鮮血は、打ち寄せる波にさらわれ、あっという間に滲んで消えていく。蒼真が血相を変えて駆け寄り、私を抱きとめた。今度ばかりは、振り払おうとはしなかった。ただ単に、そうするだけの力がもう残っていなかったのだ。彼は私の口元の血を拭いながら、ティッシュを持つ手が震え、今にも落としてしまいそうだった。「病院へ戻ろう」「一緒に……日の出を見てくれないかしら」彼は息を呑んで立ち尽くした。結婚して1年目の頃、私は彼に「一緒に海へ日の出を見に行きたい」とせがんだことがあった。彼は頷いてくれたのに、出発の直前、姉が心臓の不調を訴えた。たった一本の電話で、彼は私を置いて飛び出していった。私はただ一人、海辺で夜が明けるのを待ち続けた。家に帰った後、狂ったように寝室の物を手当たり次第に叩き壊した。彼は私を「頭がおかしくなったのか」と罵った。けれど本当は、私との約束を忘れないでほしかっただけなのだ。それから7年もの歳月が過ぎて――彼はようやく、私に付き添ってくれている。私たちは並んで砂浜に腰を下ろした。はるか沖合の水平線が、少しずつ
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