長い霧の先に、夜明けの光二宮梨花(にのみや りか)は、松井竜之介(まつい りゅうのすけ)にまる5年も片思いをしていた。
彼のために、故郷から遠く離れたこの街に残ることを決めたのだ。
竜之介の婚約者が婚約パーティー当日に逃げだすと、梨花は迷うことなく前に出て、その婚約の証である指輪を受け取った。
竜之介が自分を愛していないことなんて、梨花はとっくに分かっていた。
結婚式の当日、藤井渚(ふじい なぎさ)が、「胸が苦しいの」と一言つぶやいただけで、竜之介は梨花を置き去りにし、渚のもとへ駆けつけた。
周りの誰もが梨花を笑った。竜之介という大木にしがみつく惨めな蔦のようだ、いつまでも目が覚めない愚か者だ、と。
彼女自身でさえ、かつてはそう信じて疑わなかった。
けれど、どんなに深い想いも、無視され、冷たくあしらわれ、何度も後回しにされ続ければ、いつか静かにすり減って、消えてしまうものだ。
そして、竜之介がようやく梨花を振り返ったときには、かつて、ありったけの愛で彼のそばにいてくれたあの女の子は、もう遠くへ去ってしまっていて、二度と振り返ることはなかった。