通りを歩く度に目が行くのは古い焼き鳥屋の軒先だ。人混みをくぐって小さな路地に入ると、木製の看板や赤い提灯がずらりと並ぶあの視覚は、映画のワンカットそのものに感じられる。俺はロケ地巡りをするとき、まずはそうした〈雰囲気が残っている店〉を選ぶようにしている。内装が昭和のまま残る店は、古い映画の時間をそのまま閉じ込めているからだ。例えば『Shall we ダンス?』の都会的な距離感を思わせるような、静かなカウンターがある焼き鳥屋は最高だ。
路地を覗き込むと、ひとつの小さな店が映画の一場面みたいに見える時がある。僕はそういう瞬間を求めて思い出横丁を歩くことが多い。映画の実際の撮影場所を厳密に追うより、その場の空気が作品とどれだけ響き合うかを楽しみたい派だ。例えば『Lost in Translation』の内向きな都会感が好きなら、静かなカウンター席だけのバー風の店や、狭い厨房から立ち上る湯気が印象的なラーメン屋あたりがぴったりだ。