ウィリアム・カーロス・ウィリアムズの 'The Locust Tree in Flower' は一風変わった選択肢です。桜ではありませんが、春の訪れを告げる木の花をミニマルに描いたこの作品は、『緑の/枝に/白い/花』という断片化された表現が印象的。あえて完成形を見せないことで、読者に桜を連想させる余地を残しているのかもしれません。シンプルな言葉の配置から、かえって豊かな春のイメージが広がるのが魅力です。
桜の花びらが舞い散る様子を『a shower of cherry blossoms』と表現すると、春の儚さと美しさが同時に伝わりますね。英語圏には桜にまつわる文化がないため、この表現は新鮮に映るようです。
『Spring whispers through the budding branches』というフレーズも好きです。新緑の芽吹きを「春の囁き」と擬人化することで、季節の移ろいをより繊細に描写できます。日本語の「風光る」のような感覚を、英語ならではのリズムで再現していると思います。
特に『The earth laughs in flowers』というエマーソンの詩の一節は、春の喜びを全身で表現しているようで心に残ります。日本語の春の詩に多い「待ち遠しさ」とはまた違った、生命力溢れる表現ですね。
吉田拓郎の『イメージの詩』は日本語独特のニュアンスが詰まった曲で、英訳するとなると言葉選びが本当に難しい。特に『イメージ』というタイトル自体が英語の『image』と似て非なるもの。歌詞の『誰かのために 生きてゆくなら』というフレーズは直訳すれば『If I live for someone』だけど、原曲の持つ献身的でどこか寂しげな雰囲気を出すには『To devote my days to another』の方がしっくりくるかも。
英語圏のポップスではあまり見ない『詩』という概念をどう伝えるかもポイントで、『poem』より『lyrics』や『verses』の方が自然に聞こえる場合もある。『涙のあとには 虹が架かる』のような比喩的な表現は『A rainbow spans where tears have fallen』とすると、英語圏のリスナーにも情景が浮かびやすい。翻訳は単なる言葉の置き換えじゃなくて、文化の架け橋になる作業だと思う。