口に出しただけで場面が浮かぶセリフというのが確かに存在する。私はその中でもまず『The Big Sleep』を思い浮かべることが多い。原作小説では、マーロウの辛辣で機知に富んだ語り口が端的に表れていて、短い一言が登場人物の性格や場の空気を一瞬で塗り替える力を持っている。映画化もされており、映像版での台詞回しがさらに知名度を上げた例だ。
作品の魅力は単なる探偵譚に留まらず、都会の影と人間の弱さを同時に語る点にある。だからこそ、マーロウの代表的な名台詞はこの作品で特に印象深く響く。読むたびに言葉の選び方と間の取り方に唸ることが多く、いまでも誰かと語り合いたくなる小説だ。
映画版での表現や台詞のニュアンスについて語ると長くなるが、要点だけ言えば『The Big Sleep』はマーロウの“らしさ”が最も分かりやすく出ている作品の一つであり、そこに収められた台詞がしばしば代表的に引用されている。
英語で「らちがあかない」に近い表現を考えると、'going in circles'がぴったりくる気がする。
会話や議論が堂々巡りして全く進展がない様子を表すのに最適だ。ビジネス会議で同じ話題が延々と繰り返される時なんか、まさにこの表現を使いたくなる。
他にも'beating a dead horse'という面白いイディオムがある。日本語でいう「死んだ馬を鞭打つ」みたいな感じで、無駄な努力を続けるニュアンスが強い。この表現は特に解決の見込みがない議論を続ける時によく使われる。