【紗雪の姉がそこにいるかもしれないでしょ?一人じゃ絶対行けないよ】
紗雪はそのメッセージを見て、「OK」のジェスチャースタンプを送っただけで、それ以上何も言わなかった。
彼女も分かっている、
緒莉がどんな人間なのか。
緒莉は昔から清那のことをよく思っていなかった。
それはきっと、清那が幼い頃からずっと自分と仲が良かったせいだろう。
紗雪は、昔のことをよく覚えている。
まだ小さかった頃、清那が家に遊びに来たことがあった。
二人でプールサイドに並んで日光浴をしていて、周囲の大人たちも皆、彼女たちが仲良しだと知っていた。
だが、そのときの緒莉はというと、まるで輪に入るつもりもなく、遠くから眺めているだけだった。
清那に対しては、明らかに敵意すら感じられるような目を向けていた。
その日、緒莉は急にやってきて、「混ざってもいい?」なんて言ってきた。
幼い清那はあまり気が進まなかったが、紗雪の姉という立場もあって、無下にはできず頷いた。
三人でプールサイドに並ぼうとしたとき、真ん中の場所をめぐって、緒莉が清那を押すような形になり、
結果として紗雪がプールに突き落とされてしまった。
当時の紗雪は、まだ泳ぎを習っていなかった。
清那は驚いてすぐにプールへ飛び込み、紗雪を引き上げようとした。
救出の前に彼女は叫んだ、
「大人呼んできて!」
だがそのときの緒莉は、ただその場に立ち尽くしていた。
呆然としていたのか、あるいは聞こえないふりをしていたのか、
とにかく、何もしなかった。
幸いなことに、清那は泳げた。
紗雪を岸まで引っ張り上げたときも、緒莉はまだ立ったまま、どこか曖昧な表情を浮かべていた。
それを見た清那は怒りを抑えきれず、陸に上がるなり緒莉を突き飛ばし、こう言い放った。
「悪い子!もう絶対、一緒に遊ばないから!」
そう叫びながら、清那は紗雪を連れて家の中に戻った。
でも、プールに残された緒莉のことも忘れずに、大人を呼びに行った。
その後、震えながら入ってきた緒莉は、清那からの鋭い視線を受け、言葉を呑み込んだ。
美月に心配されながらも、清那のことは一切口にせず、「自分が足を滑らせた」とだけ説明した。
それ以来、清那と緒莉の関係は完全にこじれた。
どこかに緒莉がいると分かれば、清那は絶対に一人では近づかない。
あのと