唯花と明凛が本屋を離れた頃、唯月のほうは隼翔の車に乗って、星城高校前まで急いでいた。
この時間帯は登校が終わった後だったので、高校の周辺は静かだった。
学校前にある他の店は、まだ店を開けていなかった。
唯月は妹の本屋が閉まっていることに気づいた。
「なんで閉まっているのかしら」
唯月は車を降りて店の前までやって来ると、扉を叩いてみた。しかし、中からは物音ひとつ聞こえてこず、彼女は急いで携帯を取り出して妹に電話をかけてみた。
この時の唯花の心の中は結城グループまで行って理仁に直接本当のことを聞き出したいという思いでいっぱいだった。彼が本当に財閥、結城家の御曹司であるのかどうかをだ。
彼女はまるで携帯が鳴る音には気づいていないように、姉の電話に出なかった。
それで唯月は明凛に電話するしかなかった。明凛はというと、電動バイクで唯花を追いかけ道半分まで来ているといったところだった。そして走るスピードはだんだん遅くなっていた。
彼女は数日前に充電しただけで、もう充電切れになりそうだったのだ。
携帯の鳴る音が聞こえて、彼女はバイクを道端に止め、唯月からの電話に出た。
「唯月さん、今唯花は結城グループに結城さんを探しに行っています。今あの子の精神状態が悪いものだから、車運転してて事故にでも遭わないか心配してるんですけど、私電動バイクで出勤したものだから、追いつけないんです。それにもうすぐ充電が切れてしまいそうで」
明凛は電動バイクで出勤したことを後悔していた。彼女は自家用車のBMWに乗ってこればよかったのだ。
「わかったわ、私も今すぐ結城グループへ向かうわね」
妹が結城グループに向かったと聞いて、唯月はくるりと車のほうに向きを変えて車に戻った。その時隼翔のほうも誰かと電話しているようだったので、彼女はすぐには車に乗らずに、暫く待っていた。
隼翔が電話していたのは理仁だった。
彼は唯月を送って来る時に、唯月と明凛の通話を聞いていて、理仁の正体が唯花にばれてしまったことを知ったのだった。
明凛の話からすると、どうやら理仁のほうから自分の正体を暴露したようだ。
隼翔の見方だと、理仁が唯花を愛していると気づいた時に彼女に自分の正体を明かすべきだったのだ。しかし、理仁は唯花を失うことを恐れて、一向に彼女に打ち明けなかった。
隼翔も理仁が唯花と愛し合って