光陰矢の如し。
それからあっという間に一年が過ぎていった。
「西嶋社長、こちらが今日の会議で使う資料です」
「ああ、そこに置いといてくれ」
オフィス内の空気は非常に息苦しかった。
高橋が顔を上げると、そこには目の前に感情の全くない男の姿があった。
夫人が去ってしまってから、社長はますます仕事の鬼に変貌してしまった。昼夜問わず、時には徹夜をして、忙しくすることで他のことは考えられないようにしているようだった。
彼はため息をついて、我慢できずに口を開いた。「社長、もう二日もろくにお休みになっていませんよ。そろそろ休憩されてはいかがですか?」
博人は顔も上げず、淡々と返事をした。「疲れていない」
あの家にいると、至る所に未央の気配が残っている。彼が目を閉じると浮かんでくるのはあの美しい未央の顔だった。
博人はペンを持つ手の力を無意識に強めた。いろいろな思いが堰を切ってなだれ込んできた。
あれから一年経った。今だに未央に関する情報は入ってこない。
彼女はこんなに簡単に彼と理玖の二人を捨ててしまったのだ!
高橋は眉間にしわを寄せて続けて言った。「噂によると立花のほうにとても腕の良い診療内科の先生がいらっしゃるそうです。社長がもし不眠症でお悩みなら、行ってみるのはいかがでしょう?」
目の前にいるこの男が聞く耳を持たないことが分かっていて、彼はまた少し考え一言付け加えた。
「社長、人はロボットではないんです。このような日々を過ごしていては、奥様が見つかる前にご自身が体を壊して倒れてしまいますよ」
博人は少しそれに反応した。それに対して何も返事はしなかったが、彼はこの日早めに仕事を終わらせた。
そして家に到着した。
屋敷の中は無機質に冷たく、リビングも一面真っ暗闇だった。
博人はそのまま二階の明りのついた部屋へと向かい、ドアを開けると理玖が机の上でお絵描きをしていた。
そこには三人の影があり、二人の大人が真ん中にいる子供と手を繋ぎ、満面の笑みを浮かべ非常に幸せそうだった。
ゴミ箱の中は捨てられた紙クズで満たされていた。
そのすべてが捨てられてしまった絵だった。
理玖はひたすら絵を描き続け、一瞬不満そうな表情を見せた。
そして描き終わった紙を手に持ち破いてしまおうとした時、博人に手を掴まれて止められてしまった。
「よく描けているのに、