そしてすぐ、博人は苦痛でその口を歪ませた。
もし、彼が以前、未央に対してあんなにひどい態度を取って彼女をここまで傷つけていなければ、今のようなことにはならなかったのだ。
そしてこの時、電話は鳴り響いた。
「西嶋社長、もう数日ここを離れていらっしゃって、会社の仕事がかなり溜まってきています。いつ頃お戻りに……」
高橋が催促する声が電話越しに聞こえてきた。彼がまだ話し終わっていないのに、博人に遮られてしまった。
「今は暫く帰るつもりはない」
「え?」
博人は意志の固い目つきで続けて話した。「俺は立花に子会社を作るつもりだ。暫くの間、こっちは俺が指示を出す。何か緊急を要する仕事はこっちに送ってきてくれ」
彼は顔を上げ、屋敷の明りが灯っている二階の部屋を見つめた。
すでに未央がいる場所は突き止めたのだから、どんな代価を払ってでも、どうにかして未央を虹陽へ連れて帰るのだ。
彼ら一家三人は、絶対に一緒に家に帰るのだ。
何があっても。
この時、悠生のことを思い出し、博人の危機感がまた込み上げてきた。
あいつを絶対に未央に近づけさせるわけにはいかない。
……
翌日の朝のこと。
未央はいつも通り病院の前までやって来た。すると石田が嬉しそうな笑みを浮かべて近づいてきた。
「白鳥先生、もう準備は整っています。白鳥先生が来るのを待っていました」
そして目の前の光景は――
そこにいたみんなは白衣やナース服ではなく、カジュアルな服装で旅行バッグを背負っていた。見るからにどこかへ日帰りキャンプに行くような格好だ。
そこで未央はようやく、この日は病院が毎月一度みんなで外出する日だということを思い出した。
精神科医が患者の治療に当たる際、多くの負の感情にさらされてしまう。それで病院で働く彼らは定期的に自分をリラックスさせ、気持ちを発散させなければならないのだ。
そこで外へ出かけ、大自然の中に身を置き、心を浄化させるのが一番良い方法なのだ。
未央は頷いて、一行を引き連れ、この日レンタルした小型バスに乗り込んだ。
この時、悠奈はいつもの様子に戻っていたが、まだ顔色は少し悪かった。みんながキャンプに出かけると聞き、急いで家から駆けつけてきたのだった。
優しい風が肌を撫で、一面緑豊かな自然に囲まれた場所。目の前にはキラキラと水面が輝く湖がある。
そして綺麗