Search
Library
Home / 恋愛 / 今さら私を愛しているなんてもう遅い / 第87話

第87話

Author: 大落
夜はどんどん深くなり、明るい月が空に輝いていた。

二人は向かい合って木の下に立ち、見つめ合っていた。すると先に未央が口を開いた。

「藤崎さん、約束したこの関係をこれで終わりにしたいんです」

ただ恋人を演じるだけだったが、今はどんどん事が大きくなってきた。特に京香のあの嬉しそうな様子を見て、未央は心理的な負担でかなり押しつぶされそうになっているのだ。

悠生は眉間にきつくしわを寄せて、切迫した様子で尋ねた。「どうして?今まで問題なかったのに?」

未央は唇をぎゅっと結んだ。「おば様のことをこのように騙すのは良くないと思って。彼女はいつか本当のことを知るでしょう」

悠生はお酒を飲んでいてちょうど酔いが回ってきた頃合いで、うっかり口に出してしまった。

「だったら、本当の恋……」

その瞬間、急に黙った。

未央は不思議に思い、顔を上げ、何か物思い気な様子の悠生の瞳を見つめ、唾を飲み込んだ。

「藤崎さん、さっき何て?」

悠生は一歩前に出て、未央との距離を縮め、かすれた低い声で言った。

「俺は……」

瞬時にその場には曖昧な空気が流れた。

未央は眉をひそめ、近寄って来る悠生を止めようと思ったその次の瞬間、視界の隅にある人影が映った。

彼女が反応する前に、彼女の腕は別の大きな手にしっかりと掴まれてしまった。

すると、未央は鍛えあげられた胸元に引き寄せられた。

その瞬間、爽やかな香りが鼻に飛び込んできた。

未央が顔を上げると、そこには冷たい表情の博人がいた。この時の険悪なムードといったら、これまでになく重たかった。

「藤崎悠生、俺と未央はまだ離婚していない。このような真似は許さんぞ!」

博人は凍て付く顔で一字一句はっきりと主張した。

この時、悠生はもう酔いから醒めていて、慌てた様子で未央を見て言った。

「白鳥さん、俺は別に変な意味があったわけではないんだ。この件はじっくり考えてもらいたいと思って」

「考える必要などない」

博人は未央に代わってそう回答をし、無理やり彼女を引っ張って行った。

車の中は静寂に包まれ、空気は張り詰めていた。

博人は暗い顔で、アクセルを踏み込み、猛スピードで車を走らせ、人影のないある街道へとやって来た。

「降りろ」

彼は冷たい声でそう吐き捨てた。

未央は眉間にきつくしわを寄せた。このような態度の博人に驚いた。
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP