Search
Library
Home / 恋愛 / 今さら私を愛しているなんてもう遅い / 第97話

第97話

Author: 大落
未央は眉間にしわを寄せた。博人を見た瞬間、すぐに彼を避けたいと思った。以前のように彼らと騒ぐことなどしたくなかった。

しかし。

博人が何かに気付いたらしく、ちょうど顔を上げてこちらを見てきた。

二人はお互いに視線を合わせた。

博人は瞳を微かに輝かせ、急いで彼女のほうへやって来ると、嬉しそうにこう言った。

「未央、どうしてここに?」

そして、彼はとても心配し、彼女を気遣うような顔をした。

「どうした?どこか悪いのか?」

未央は冷たい表情で首を横に振った。「西嶋社長、お気遣いどうも。私の体はいたって健康ですので」

博人はホッとすると同時に、また彼女の冷たい態度を見て、心が苦しくなった。

瞬時にその場の空気は凍て付いた。

未央は冷ややかに目の前にいる二人を見つめ、くるりと向きを変えて去ろうとしたが、博人が勢いよく彼女の腕を掴んだ。

「未央、これにはわけがあるんだ」

彼はとても執着した様子で、さっき道端で言えなかった話をここで一気に全て吐き出した。

「理玖が今夜、君にあげたいと思って郊外に蛍を捕まえにいったらしいんだ。その時にうっかり池に落ちてしまって、体を冷やし高熱を出してしまった。

理玖はさっきずっと夢の中で『ママ』と呼び続けていた。未央、今から……」

博人の話がまだ終わっていないのに、冷たい女性の声がそれを遮った。

「西嶋社長」未央は横目で彼を睨み、皮肉交じりの笑みを浮かべた。

「私がまたそんなことに騙されるとでも?」

博人はその場に凍り付いた。未央が言っているのは、この間彼が理玖と一緒に病気を装って騙そうとしたことを言っているのだと分かったからだ。

「違うんだ。今日はそうじゃない。理玖は7階にある端の病室にいる。信じられないなら、一緒に見に行こう」

博人は焦って釈明した。

そして。

未央はもうこれ以上我慢できず、口調をさらに冷たくした。

「必要ない。私、忙しいの。西嶋社長と綿井さんの二人で理玖君のお世話をすればいいと思うわ」

そう言い終わると、彼女は一度も彼のほうを振り返らずにその場を去っていった。

博人はそこに突っ立ったまま、両手を急に強く握りしめ、近くの壁を思いっきり殴った。

雪乃はこの一連の光景を目の当たりにし、心中歓喜していた。人の不幸を非常に喜んでいたのだが、それを顔には出さなかった。

「博人、白鳥さ
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP