未央も悠生の今の心情を理解し、軽く頷いて落ち着いた声でこう言った。
「分かりました。何か私に手伝えることがあったら遠慮せずに言ってください」
悠生が出て行ってから、室内は一気に静かになった。
この病室はかなり広く、悠奈が寝ているベッド以外に、傍には折りたたみベッドも置いてあった。
未央はそこで今夜は休もうと思い、ポケットに手を入れて携帯を取り出そうと思ったが、中には二台の携帯があることに気付いた。
家を出てくる時、かなり焦っていて、うっかり悠奈の携帯まで持って来てしまったのだ。
「ピコン!」
突然携帯から通知音が鳴った。
未央はぐっすりと寝ている悠奈をちらりと見て、無意識にその明るくなった携帯画面に目を落とした。
「晃一はあんたのせいで死んだのよ!
もし、あなたが別れを切り出さなかったら、あの子は自殺しようだなんて考えなかったのに
なのに、どうしてあんたは今のうのうと生きているわけ?」
……
未央はその瞬間驚いていた。その悪気のある言葉を見つめ、心の奥底にあった疑問がやっと解けた。
やはり、悠奈は長谷川晃一の事になると、突然発症するのだ。
未央は最初、悠奈が恋愛中に男からの束縛が激しくそれに傷つきずっと抜け出せないのだと思っていた。
それがまさか……
普段の悠奈はあんなに善良な女の子だ。このようなことに巻き込まれれば、心にある後悔と自責の念で押しつぶされてしまうだろう。
このショートメッセージを送ってきた人物は一体どういうつもりだ?
未央は冷たい目つきで、少し躊躇ったが、最後はやはりさっきのメッセージを全て消去してしまった。
悠奈にこれ以上ショックを与えてはいけない。
メッセージを消し終わって、未央はようやく横になり、疲労の溜まったこめかみをマッサージした。
今日起きたことが多すぎて、彼女の体は限界だった。脳裏にはあの個室での宏太の話がこだましていた。
新興製薬。
未央は目を細め、瑠莉とのチャットを開いた。彼女は瑠莉は夜型だからこの時間帯もまだ寝ていないだろうと思ったのだ。
「瑠莉、あることを調べてもらいたいの」
「どんなこと?」
瑠莉は秒で返事をしてきた。
未央は少しの間考え、文字を打っては消しを繰り返し、最後にこう言葉を打ち出した。
「新興製薬の後継ぎは誰なの?」
瑠莉からの返事はここで切れた。恐らくす