博人は理玖にそう質問されて、手の動きをピタリと止め、さっきの未央の冷たい態度を思い出した。
この前病気を装ったことで、彼女の彼らに対する信用は地に落ちていたのだ。
すると。
期待の眼差しで見つめる理玖と目を合わせ、博人は口を開き、少しかすれた声で言った。
「理玖、いい子だな。パパがどうにかするからね」
理玖ははっきりとした回答が得られず、落ち込んで下を向いた。
そして暫く経った後。
彼は悶々とした様子でこう言った。「蛍が見つからなくて残念だなぁ」
その言葉を聞いて、博人は怒ったように低い声で彼を諭した。「今後、一人であんな危険な場所に行ったりしたらいけないぞ。分かったか?」
理玖は少し頭を傾け、ぶつぶつと呟いた。
「だって、ママに蛍を瓶にいっぱい詰めてあげたかったんだもん。ママが喜んだらきっと僕を遊園地に連れてってくれるでしょ。パパはいつも忙しいから、僕、自分で行くんだもん」
博人はその言葉に胸を刺された。やるせなさと悲しく苦しい気持ちが一気に押し寄せ、何か言おうと唇を少し動かした瞬間のことだった。
「コンコンコン!」
後ろからドアをノックする音が聞こえてきた。
博人が後ろを振り向くと、入り口に立つ未央の姿がそこにはあった。複雑そうな瞳であの親子二人を見つめた。
「理玖の様子を見に来たわ」
未央は病室に入ると、ベッドの上の小さな子供に視線を落とし、内心静かにため息をついていた。
さっきの彼らの会話が彼女に聞こえたのだ。博人がさっき廊下で言った話は自分を騙すためのものだと思い込んでいたのだが、まさか理玖が本当に入院しているとは思ってもいなかった。
理玖は自分が10か月もお腹の中で育てて産んだ子供なのだ……
未央の目つきは優しくなり、彼のまだ少し熱いおでこに手を当てた。高熱は下がり、すこし微熱があるようだった。
「ママは蛍、あんまり好きじゃないの。次はそんな危険な所に行く必要なんてないわよ」
未央がゆっくりとそうたしなめると、理玖はやっとそれを聞き入れ、お利口そうに頷いた。
そしてすぐ。
「だけど、ママと一緒に遊園地に行きたいんだ」幼い子供の声でそう懇願してきた。
未央は少し考えてから言った。「理玖の体が良くなってから、また話しましょう」
理玖は口元をニヤリとさせた。蒼白のその小さな顔は満足そうに笑った。
「だったら、