自殺……
自分と彼女の間には、確かに何かあったのかもしれない。
自分は無責任な人間ではない。
普通に考えれば、子供ができたら結婚するはずだ。
でも、結婚していない。
ということは、何か理由があったに違いない。
何か大きな出来事が起こったのか。
あるいは、彼女が何かおかしなことをして、自分が彼女を捨てたのか。
晋太郎は、後者が有力と考えた。
仕事が終わった後。
紀美子が家に戻ると、龍介の車が別荘の庭に停まっているのが見えた。
彼女が不思議に思いながら玄関に入ると、ゆみと龍介が話している声が聞こえてきた。
「約束するよ、冬休みには必ず紗子を連れてくるから……」
紀美子がリビングに入ると、龍介とゆみが同時に彼女を見上げた。
「ママ!」
ゆみは紀美子のそばに駆け寄り、笑顔で言った。
「珠代おばあちゃんがもうすぐご飯ができるって。おじさんも食事に誘ったの!」
紀美子は笑顔でゆみの頭を撫でた。
「ゆみもおもてなしが上手になったね」
ゆみは照れくさそうに「へへ」と笑った。
「ママとおじさんは話してて。私はお兄ちゃんたちを呼んでくる!」
「うん」
ゆみが去った後、紀美子は龍介に挨拶した。
「龍介さん、来るなら一言言ってくれればよかったのに。何か買っておいたのに」
「ただ君の様子を見に来ただけで、食事までとは思ってなかったんだ」
龍介は笑った。
「ゆみがあまりにも必死に引き止めるから、断れなかったよ」
「そうだったの。彼女はちょっと強引なとこもあるから」
龍介は少し考えてから言った。
「紀美子、晋太郎の方はどうなってる?」
紀美子は無理やり笑顔を作った。
「相変わらず、拒絶的だわ」
「医者に聞いたんだけど、記憶を回復させるには長い時間がかかるらしい。覚悟しておいた方がいいよ」
紀美子はうなずいた。
「うん、わかってる」
龍介は続けた。
「でも、紀美子、今は晋太郎にばかり気を取られている場合じゃないよ」
「え?」
紀美子は一瞬唖然とした。
彼が何を言おうとしているのか、理解できなかった。
「悟のこと。忘れてはいけない」
龍介は警告した。
「もし彼が晋太郎がまだ生きていることを知ったら、また彼を危害を加えそうとするかもしれない」
紀美子は我に返った。
「そうね、それはわかってる。今は情報を待っているところなの」
「だったら、この件を晋太郎に知らせるように誰かに頼んでみてもいいかもしれない