Search
Library
Home / 恋愛 / 会社を辞めてから始まる社長との恋 / 第1147話 戻れない

第1147話 戻れない

Author: 花崎紬
「それだけではありません。私たちは万が一に備えて、スナイパー対策の人員も配置しています」

最後の言葉を聞いて、紀美子は思わず驚嘆した。

そこまで手配していたのか……

自分の心配は、本当に余計なものだったようだ。

「入江さん、あなたが今考えるべきは、どうやって彼に近づくかですよ」

美月は続けた。

「命の安全については、彼自身に任せておきましょう。自分の命さえ守れないようじゃ、家族を守るなんて無理ですよ」

紀美子は美月の言葉に笑みを浮かべた。

「前例があるから、どうしても心配になってしまいます」

「必要ありません」

美月は回転椅子に座ると、半回転して紀美子の資料を手に取った。

「ところで入江さん、もうすぐあなたの誕生日ですよね」

紀美子は一瞬戸惑い、携帯の日付を確認した。

確かに、あと5日で自分の誕生日だ。

10月10日。

紀美子は笑顔で言った。

「遠藤さんも来てくれませんか?」

「もちろんです。後で時間と場所を教えてください」

「わかりました」

電話を切った直後、珠代の声がドアの外から聞こえてきた。

「入江さん、塚原さんがいらっしゃいましたよ」

一体何の用?

前回あんなことを言ったのに、どうしてまた?

まさか、晋太郎がここに来たことをボディガードが漏らしたのか?

紀美子は急いで返事をした。

「書斎に通して」

珠代はすぐに悟を案内してきた。

悟が部屋に入ってきた瞬間、紀美子は彼の目に浮かぶ痛みをはっきりと見て取った。

「今度は何の用?」

紀美子は冷たい声で尋ねた。

悟はドアのそばに立ちながら言った。

「紀美子、俺はできるだけ君の前に現れないようにしてた。でも、ここ数日、どうしても我慢できなかった。正直に教えてくれ。君と龍介は、いったいどんな関係なんだ?」

「もう十分に話したはずよ!」

紀美子は言い放った。

「龍介とは何の関係もない。どうして彼にこだわるの?」

「じゃあ、なぜ彼はそんなに長い時間君の家にいたんだ?」

悟は紀美子に近づいた。

「紀美子、許してくれないか?」

悟が近づいてくるにつれて、紀美子は彼の身から強い酒の匂いを感じた。

紀美子はすぐに立ち上がった。

酔っ払った人間とは話すつもりはない。

そう考えると、彼女はドアの方へ歩き出した。

しかし、悟が素早く彼女の手首をつかんだ。

Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP