真夕が歩いてくると、舞はすぐに気がついた。
司と彩も真夕を見つけ、彩は驚いて言った。「真夕、どうしてここに?」
舞は嫌悪の表情を浮かべ、真夕を睨みつけた。「おい、昨夜あなたが和也兄さんに取り入った件は後でゆっくり清算するわ。今はケー様を待っているところなの。あなたに構う暇なんてないわ!」
司の視線も真夕に向けられた。彼は美しい眉をひそめたが、言葉は発しなかった。それでも彼女の訪れを歓迎していないのは明らかだった。
彼女はまるで邪魔をしに来たかのようだった。
真夕は気を悪くすることもなく、面白そうに三人を見回すと、ふわりと長いまつげを瞬かせた。「あなたたちがケー様を待っているのは知ってるわ」
彩が苛立ったように言った。「だったら早く出て行きなさいよ」
真夕は背筋をしなやかに伸ばし、三人の視線を受けながら、ゆっくりと唇の端を持ち上げた。「私が、あなたたちの待っている……」
言葉を終える前に、新しい人物が姿を現した。「真夕。あなた、ここで何してるの?」
真夕が振り向くと、そこには池本華(いけもとはな)が立っていた。池本家の老婦人には三人の息子がおり、長男の邦夫、次男の平祐、そして三男の忠行だ。そして華は池本忠行(いけもとただゆき)の娘だ。
華は非常に優秀で、彩よりも高学歴の医学博士だ。海外で二年間研鑽を積み、数々の大手術に参加した経験を持っている。そのためか、彩以上にプライドが高かった。
せけんでは、彩と華の二人を「池本家の二輪の花」と呼んでいた。
そして、この二人に共通していたのは、ともに真夕を見下しているということだ。
彩が華に言った。「どうしてここに?」
華は司の前に進み出て、自信に満ちた笑顔で言った。「堀田社長、こんにちは。ケー様の代理として参りました」
真夕は無言でいた。私の?
華は続けた。「私は現在ケー様のアシスタントを務めていて、彩の心臓治療の補佐を命じられました」
真夕はそこで思い出した。昨夜、先輩三郎からアシスタントがつくと聞いた。とても熱心で、経験を積みたがっているという人物だと。それが華だったとは。世間は狭いものだ。
華がケー様のアシスタントだと聞き、彩は笑った。「華、二年ぶりだね。いつの間にかケー様のアシスタントになっていたなんて」
舞は好奇心に目を輝かせて華に尋ねた。「華、ケー様って男性なの?女性なの?どんな