その発言に、他の記者たちが色めき立った。
「さすがゴシップ放送局!息子さんの取材まで?」
「息子さん?娘さんだけかと……」
陥没した顔の記者は意地の悪い笑みを浮かべる。「息子さんのことだけじゃありません。元旦那様が橘グループの社長・橘冬真だということも……」
その言葉は雷のように群衆の中に響き渡った。
「マジか!?」
「橘冬真って……桜都の御曹司の一人、あの橘冬真?」
衝撃的なスクープを知った記者たちの目が、一斉に変質する。
「なぜ玉の輿を降りたんですか?」
「橘社長があなたを離婚したのは、何かあったからでは?」
「名家は簡単には離婚しないはず。どんな不始末が?」
報道陣の目が、獲物を見つけた野犬のように輝いていた。スキャンダラスな豪門の内幕を暴こうと、執拗に食い下がってくる。
彼らの意識の底には、夕月が過ちを犯したという確信があった。
確かに藤宮家の令嬢ではあるものの、18歳まで家族と離れて暮らしていたという事実。
そこには、きっと橘家を追われるような不品行が……
ゴシップ放送局の記者が興奮した面持ちで、ICレコーダーを取り出した。
ついに真相を暴く時が来たのだ。
「皆さん、藤宮さんに騙されていましたね」記者は意地の悪い笑みを浮かべる。「では、ご本人の息子さんが、実の母親についてどう語ったのか、聞いてみましょう」
再生ボタンが押される。
「僕は橘悠斗です。五歳。妹の橘美優は今、藤宮瑛優って名前に変わりました」
幼い声が響き渡る。数人の記者がマイクをレコーダーに向けた。
「夕月はもう僕のママじゃありません。パパと離婚したんです!」
声音だけでも、男の子の怒りは明らかだった。
「あの人は僕を捨てたんです。この前、学校に取材に来た時も、僕を知らないフリして通り過ぎたんですよ!」
「実のお母様が、どうしてそんな……」記者の声が重なる。
悠斗は小さな大人のように深いため息をついた。
「うちはお金なんでも使わせてあげたのに、パパと僕のことばっかり文句言うんです。妹の名字まで勝手に変えちゃって……パパの顔を潰すためですよ!
知らないでしょう?ママってすっごく面倒くさいんです。家でブタみたいにゴロゴロしてるくせに……それに、僕をいじめるんです!ご飯も食べさせてくれなかった!」
「まさか……どうしてそんなひどいことを?」記者は