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Home / 恋愛 / 再び頂点に戻る、桜都の御曹司にママ役はさせない / 第96話

第96話

Author: こふまる
橘家で丁寧に育てられた坊ちゃまは、大物にも華やかな場面にも慣れているはずなのに、コロナの横に立ってLunaに話しかける時は、緊張で胸が高鳴っていた。

しかし、車内の人物からは何の反応もない。

「Luna選手?」

悠斗はつま先立ちになって、首を伸ばし、好奇心いっぱいの表情で車内を覗き込んだ。

藤宮楓は車から降りると、父子揃ってコロナの前に立っている姿を目にして、直感的な危機感が走った。

大股で近づきながら、「Lunaさん、噂は聞いていました。大型バイクのライダーとしても有名だとか。私もバイクに乗るんですけど、一対一で勝負してみません?」

冬真がLunaに負けた分、楓が取り返そうという魂胆だった。

Lunaはプロのレーサーだが、バイクの方は素人レベルのはず。

それに、過酷なレースを終えたばかりで体力も消耗している。今なら勝てる——楓はそう踏んでいた。

しかし、車内の女性は沈黙を守ったまま。

「そんなに冷たくしないでよ。せっかくだから、一戦やりましょうよ」

楓は不満げに声を上げた。

「えっ!Lunaさん、バイクも乗れるの?!」悠斗の瞳が輝きを増す。

その様子を見て、楓は片側の唇を上げた。もしLunaに勝てば、悠斗の視線は自分に戻ってくるはず。

冬真は足元に落ちた名刺を見下ろした。身のほど知らずな女が桐嶋に持ち上げられて、舞い上がっているとでも言うのか。

「2千万円で買おう。楓の相手をしてくれ」権力者特有の傲慢さで、冬真は金で全てが解決できると思い込んでいた。

夕月は思わず笑みがこぼれそうになった。

冬真の楓への溺愛は、ここまで来てしまったのか。

男は携帯を取り出し、送金用のQRコードを表示させ、Lunaに向かって差し出した。

夕月は男の存在を完全に無視し、涼の方に身を寄せて、耳元で何かを囁いた。

その親密な仕草に、冬真の眉間に深い皺が刻まれた。

二人の距離の近さが、どこか胸につかえた。

涼は夕月の言葉に頷き、冬真の方を向いた。

「Lunaの提案だが——バイクレースを受けよう、と。ただし彼女が勝った場合、その性別不詳の方には徒歩で戻ってもらう。Lunaとの差がついた距離分をな」

「誰が性別不詳だって?」

楓は声を荒らげ、車内に向かって怒鳴った。「ちょっと!ヘルメット取って、よく見なさいよ!私だって立派な女よ!」

楓は車窓か
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