仕方がない、桜子の周りにはあまりにも優れた男ばかりで、新たに登場した大佐の兄なんて、まったく隙がない！
「桜子、大丈夫？」彬は桜子の肩を両手で掴み、何度も彼女の体調を確かめた。
「大丈夫、大丈夫。彬兄、行こう」
桜子は彬が隼人の前で長居しないように気を使って、万が一何かのきっかけで火花が散ることを避けようとして、彼を急かして部屋を出ようとした。
だが、予想していたかのように、彬は冷ややかに言った。「兄さん、翔太、桜子を先に送ってくれ。俺は後から行く」
「彬兄！」桜子は眉をひそめ、焦りを込めてその名前を呼びながら、言葉の裏に複雑な感情が交じっていた。
「桜子、行こう」
樹は桜子の肩に手を回し、隼人を意味深に一瞥しながら耳元で囁いた。「彬は冷静で、最も優しい人だ。安心しろ、彼ならきっとうまくやれる」
桜子はため息をつき、病院では大きな問題は起きないだろうと思い、樹と共に先に部屋を出た。
隼人の熱い視線はずっと桜子を追っていたが、ドアが閉まればその姿も見えなくなった。
急に桜子が朝食を済ませていないことを思い出した隼人は、急いで茶卓に歩み寄り、弁当箱を取ろうとした。しかし、大きな手がその箱を押さえた。
隼人は冷たい目で彬と対峙した。空気の温度が一瞬で氷点下に変わったかのように、二人の間に緊張が走った。
「桜子はまだ朝食を食べていない。これを彼女のところへ持って行く」隼人は冷徹に言った。
「そんなもの必要ない。クズ男からもらった食べ物など食べさせたくない」
彬は眉をひそめ、冷笑を浮かべながら言った。「お前、桜子にどれだけひどいことをしたか覚えているだろう？今、少し甘い言葉と嘘を並べて、彼女を取り戻そうなんて、都合が良すぎる。桜子を再び宮沢家の魔窟に引き戻すつもりか？桜子はお前みたいな男の思い通りになるような女じゃない」
「以前は確かに俺が悪かった。でも、これからは桜子に全てを尽くす」隼人は真剣な眼差しで弁当箱を取ろうとした。
桜子の胃が弱いことを覚えていた。彼女が以前、チャリティーオークションの外でひとりで胃痛に苦しんでいたことを思い出し、その時、彼女を放っておけなかった自分が少し痛ましい気持ちを抱いた。
「ふん、お前の言葉など、全く信用できないな！」
彬は目を見開き、手を振り上げて弁当箱を床に叩き落とした！
隼人が反応を見せる前に、も
