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Home / ラノベ / 大晦日、怖い義姉がやって来た / 第8話

第8話

Author: 耳田総司
和真の毅然とした言葉は、彼の信念を感じさせるものであると同時に、私の心に深い痛みを与えた。

私は、義姉が和真を見つめる目に、計り知れない愛情が込められているのを見た。

二人が視線を交わすその間には、言葉を超えた深い絆が感じられた。

和真は義姉と私を背後に庇い、「少し下がっていろ」と促した。まるで次に何が起きるかを予感していたかのように。

次の瞬間、義母は手元にあった器を掴み、和真に向かって投げつけた。器は彼の額に当たり、割れる音が部屋に響く。

義姉は眉をひそめ、一歩前に出ようとしたが、和真が手を上げて制止した。

額から血が滲み出るのを見て、私は慌てて救急箱を探しに行こうとした。しかし、その前に和真が静かに口を開いた。

「渼乃香、ごめんな。初めてうちに来て、こんな醜い場面を見せることになってしまって。

海人が本当のことを言わなかったのは、俺が兄としてちゃんと教えられなかったからだ。

うちの家族は昔からこんな調子で、まとまりなんて一度もなかった」

彼はそう言いながら、倒れたテーブルを立て直し、椅子を元の位置に戻していく。

その仕草はどこか物悲しく、私はようやく彼がなぜここまで義姉を守ろうとするのか理解した。

和真は津川家の長男として、幼い頃から家族のために背負ってきたものが多すぎた。

弟や妹を大学に通わせるために、進んで働き、稼いだお金はすべて家に入れていた。

しかし、彼が交通事故で腎臓移植が必要になった時、両親は「お金がない」と手を広げて言うだけだった。

さらに、海人と妹が適合するドナーであると分かっていながら、どちらも助けようとはしなかった。

義姉だけが、彼を救った。彼女は移植費用を全額負担し、自ら腎臓を提供したのだ。

「麗香が流産したのは、俺たちにとって最初で最後の子供だった」

和真の声は震え、私はその言葉に胸が締め付けられた。義姉は俯き、涙が静かに頬を伝っていた。

その姿を見て、私の目頭も熱くなり、涙が次々と溢れた。

和真は椅子に腰を下ろし、地面に座り込んで泣き喚く義母を冷ややかな目で見つめた。

「母さん、俺を産んで育ててくれたことには感謝してる。俺を助けたくないと思ったことも、恨んじゃいない。

でも、あの時から俺の命はもうあんたたちのものじゃなくなった。俺の命は麗香が与えてくれたものだ。

麗香を傷つけ、俺たちの子供
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