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Home / 恋愛 / 幸せと呼べない日々 / 第9話

第9話

Author: 過
「ようやく気づいた。俺はずっと君のことが好きだったんだ。時雨、一緒に帰ろう」

私は不思議そうに彼を見て、問い返した。

「それが私と何の関係が?」

丈が何か言いかけたそのとき、私の背後から若い男の声がした。

「時雨さん、まだ帰ってないんですか?あとで一緒にご飯どうです?」

和真が近づいてきて、私を見つめながら言った。

「この人は……?」

丈は、私を見る目にどこか期待の色を浮かべていた。

私は平然と答えた。

「女遊びの激しかった元夫よ」

和真は、光から私と丈のことを聞いたことがあり、彼は露骨に軽蔑した目で丈を見た。

「……今さら後悔して、復縁でもお願いしてるんですか?」

その言葉に込められた嫌味はあまりにもあからさまで、丈の表情が曇った。

「お前には関係ないだろ」

私はクスッと笑って、彼には何も返さず、和真のほうを見た。

「どこで食べる?ちょうど今日は光がいないし」

和真は少し考えてから、遠慮なく言った。

「刺身が食べたい気分です」

私は片眉を上げて彼を見てから、先に歩き出した。

背後から丈が何度も私の名前を叫んだ。

声には次第に涙が混じっていた。

でも私はまったく心が揺らぐことなく、足を止めずに前へと進んだ。

食事の席で、和真は興味津々に丈とのことを聞いてきた。

私は食事をしながら、これまでの経緯を淡々と話して聞かせた。

話し終える頃には、和真は驚きのあまり食事の手が止まっていた。

そして最後に彼は酒を一口で飲み干し、同情するような目で私を見た。

「時雨さんなら、次はきっと、もっといい人に出会えるはずです」

その真剣なまなざしに、私は思わず笑ってしまった。

まさかあのプライドの高い丈が、こんなにも粘着質なことをしてくるなんて思わなかった。

翌日、出勤すると、私はまたスタジオの前で丈の姿を見た。

彼はバラの花束を抱えて、情熱的な眼差しで私を見ていた。

「時雨、俺は諦めない。君が気持ちを変えてくれる日まで、ずっと待ってる」

私は眉をひそめて、彼を見据えた。

「丈、私たちはもう終わったの。契約も済んでる」

それでも丈は現実を受け入れようとせず、無理にでも花を手渡そうとしてきた。

私は一瞥もくれず、くるりと背を向けてスタジオに入った。

その後しばらくの間、丈は毎日私の職場の前に現れた。

彼が自分に酔って
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