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第22話

Author: 枝火
本来、彼女は和樹の髪の毛を使って親子鑑定をするつもりだった。面倒なことだった。

だが、深雪が普段から家の使用人たちに冷たく当たっていたおかげで、事がうまく運んだ。

彼女は使用人を見下していただけではなく、日頃から容赦なく叱責していた。

そんな中、彼女が使用人と話している時、用意していた金を出す前に、使用人は「鬱憤を晴らしたい」とあっさり協力を申し出た。和樹の髪を抜くくらい朝飯前だった。

上の階では、5人のスタッフが時間通りに料理を運んでいた。

そのうちの一人、マスクをした女性スタッフが、銀の洋食カバーがかかった皿を手に持って伸の横に近づいた。

そして、ゆっくりとカバーを取り外した。

皿の上には料理など一切なく、代わりに四枚のコピー用紙が無造作に置かれていた。

同じテーブルにいた人々は、一斉にこちらを見た。

騒ぎが大きくなり、隣のテーブルの客まで首を伸ばして様子を伺ってきた。

「なんだこれ?」

「知らないけど......なんかヤバい展開の予感」

横に座っていた深雪は一気に警戒心を抱いた。

慌てて書類を引き寄せようとしたが、伸が先に手を伸ばして一枚目を取った。

健康診断報告書。

氏名:小笹 伸

性別:男

診断結果:男性不妊症・無精子症

伸の瞳孔が一瞬で収縮し、検査結果を握る手が震え、力がこもった。

顔面は死人のように真っ青に染まり、震える手で二枚目を取り出した。

親子鑑定書。

鑑定結果:現有のデータおよびDNA分析に基づき、小笹 伸氏が被鑑定者・小笹 和樹氏の生物学上の父親である可能性を排除する。

三枚目も、親子鑑定書だった。

鑑定結果:現有のデータおよびDNA分析に基づき、梶本 伊吹氏が被鑑定者・小笹 和樹氏の生物学上の父親である可能性を支持する。

そして四枚目は、伊吹と深雪が密会している写真だった。

伸は、顔色を真っ黒に染めて全てを見終わると、隣の深雪を氷のような視線で睨みつけた。

その全身から恐ろしい冷気が溢れ出し、まるで今にも深雪を生きたまま食い殺さんばかりの殺意だった。

「この子は......俺の子じゃない?」

深雪は顔面蒼白となり、か細い声で必死に弁解した。

「こ、これはきっと誰かの罠よ!この子は伸の子供なの!」

そして伸の腕を掴み、懇願した。

「お願い......こんな報告書なんて信じないで!き
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