伸はようやく目の前のギフトボックスに再び目を向けた。
頭の中は真っ白で、ほとんど無意識のまま箱を開けた。
目に飛び込んできたのは、細かく切り裂かれたペアルックのシャツの切れ端だった。
一番上にある襟の切れ端には、鹿乃が手縫いした「wife」の文字がまだ残っていた。
伸は恐る恐る「wife」と縫われた襟の布切れを持ち上げたが、思わず体勢を崩しそうになり、倒れかけた。
「これが鹿乃が今日、俺に用意したプレゼント......?そんなはずない......誰かの悪ふざけだ!彼女がペアルックのシャツを切り刻むわけがない......」
1年前、結婚4周年記念日の夜。
鹿乃はオーダーメイドのペアルックシャツを彼に渡した。
そのとき彼女は、潤んだ瞳で優しく微笑みながら言った。
「伸は私の夫で、私は伸の妻。伸と過ごす毎日が本当に幸せなの」
「でもね、もし......もし伸がいつか心変わりして、私が伸に、この結婚にも絶望したら......私は自分の手で全部を壊して、伸のもとを去るわ」
伸はその場で立ち尽くした。
魂を抜かれた人形のように。
鹿乃が、自分の手でペアルックシャツを切り裂いた。
まさか......自分と深雪のこと、全部知ってしまったのか......?
隣に立っていた秘書は、彼が動かないことに気づき、そっと声をかけた。
「小笹社長、下にも物があります」
伸は慌てて切れ端を脇に避け、その下の段を見た。
すると、そこにはバラバラに切り裂かれた結婚証書が入っていた。
鹿乃は結婚証書まで切ってしまったのか。
伸は震える手で、そのバラバラの証書を必死に元に戻そうとした。
そのとき視界の端に、箱の最下層に置かれていた離婚届が見えた。
動きが止まる。
彼はゆっくりとその離婚届を手に取り、細かく目を通した。
筆跡を確認した瞬間、これは間違いなく鹿乃の字だった。
伸はかすれた声で、横に立つ秘書に問いかけた。
「彼女は......俺が署名済みで金庫に保管してあった離婚届を、出させたのか?」
秘書は静かに頷き、淡々と答えた。
「はい。奥様はかなり前から小川弁護士に連絡を取っていました。この離婚届はすでに正式に効力を持っています」
たった一言。
それなのに、伸は激しく胸を打たれ、巨大な衝撃に身体が崩れそうになった。
彼はうつむき、離婚届を撫で