「女神様ではありません。私は異世界転生案内人カイです。あなたが選べる道3つをお示しします。1つ目は断罪直前の悪役令嬢であるリンド公爵令嬢、2つ目は貧しいけれど特殊能力持ちなので貴族界に入る平民レオナ、3つ目は世界を旅するユアンです。さあ、どれを選びますか?」
「全部、モテなそうですね。選びません。どれもキモい人間の人生です」
私は目を瞑って自分の罪について考えた。流されてしまった瞬間が確かにあった。
唯一愛したいと思っていた捨てた息子は自分を殺した。
ならば、私の存在には何の価値もない。「モテなければ、キモいですか? あなたがモテた瞬間がありましたか? 高校教師はあなたでなくても若い肉体を持っている女なら誰でも良い人間でした。あなたが結婚相手を条件で選んでいた通り、結婚相手も頭が悪くて扱いやすいあなたを顔だけで選んでましたよ」
カイはとても辛口に私が既に知っている事実を反芻する。
私が誰よりも自分に対した価値がないと知っている。「価値はありましたよ⋯⋯少なくてもあなたの親御さんと、息子さんにとっては⋯⋯」
カイは私に苦い言葉を投げかけた「私は、私に価値があると信じた人間を捨て殺されたのですね。もう、何の未練もありません。無になりたいです。私は十分に生き恥を晒しました」 私が「生」への未練を持った瞬間、私は「無」になった。「カイ⋯⋯あなたは裁判官にでもなったつもりですか? あなたに権限は与えられています。しかし、あなたがするべき事は異世界転生を案内する事です」
頭の中でまた声がこだまする。
私は人を裁く裁判官になった気などない。ただ、目の前に現れる人たちが新しい人生を望んでない。
私は未練を残して死んだが、意外にもそうではない人間が多く存在する。「人を裁いているつもりはありません。私は自分が罪人だと自覚しています。ただ、予想外に死を迎えた人間たちがいて⋯⋯案内人としての役割を自分なりに果たしているだけです⋯⋯」
頭の中にこだまする声に反発するように私は1人呟いた。
この孤独な時間