FAZER LOGIN妹にも親友にも裏切られたアラフィフ堺若菜は、死んだと思った瞬間に真っ白な空間に投げ出される。そこで出会った金髪碧眼の女神のような美女カイ。彼女は自分を異世界転生案内人だと言う。若菜は彼女に自分の人生を渡すことで、新しい人生を貰う。また、カイの元にはこだわりの強いビューティーアドバイザー前島カナや、結婚直前に裏切られた彩花が訪れていた。カイの元に訪れるのは死の淵を彷徨い、人生を詰んだ者たち。彼らが選択するのは自分の人生をそのまま生き抜くことか、または自分の人生を売り他人の人生の続きを生き抜くことか。訪れる人たちの人生と未練に向き合う程にカイの考えも変化していく。
Ver mais精神的におかしくなりそうだ。 他人の人生に関わるほど、他責体質の人が多くて突っ込みたくなる。 割と皆適当に生きてきて、勝手に不満を持っていた。(まあ、私も人のこと言えないか⋯⋯) 500年近くこの孤独な空間で過ごして思うのは、私の人生は詰んでいなかったということだ。 自分を愛してくれる両親も、友達もいて金を稼ぐ能力もあった。 貯金などなくなっても、また稼げば良い。 稼ぐ能力を付ける為に学生時代は真面目に勉学に取り組んでいた。 それなのに、男に弄ばれただけで自分の人生は詰んだと思い詰めてしまった。 男性経験が全くなかったから、初めての男に自分の全てを捧げてしまった。相手が自分をどう思っているかよりも、初めて味わう感情に酔っていた。(今の私ならもっとうまくやれるわ⋯⋯元の私に戻りたい) 深く願った瞬間私は戻れたのだろうか。 500年異世界転生案内人をやるという自殺者に課せられた刑罰を私は全うしたのかもしれない。 季節の感覚も、時間感覚もない空間で私はずっと後悔していた。 反省期間としては十分で、もう私を解放して欲しい。 今の私ならば、誰よりも時間や人⋯⋯何よりも自分の命を大切に生きて行くだろう。 私の人生は騙されて多くの借金を負い、男性不信に陥っても恵まれていたものだった。 今度生まれ変わったら、間違わない。 私は私を大切にしてくれる人と自分の命に感謝しながら生きていく。「500年経ちましたね」 その時、頭上から私の心を天にも昇らせる声がした。 どうやら刑期である500年が過ぎたらしい。 苦しい500年だった。 我儘なだけだと突っ込みたくなるような死人が、異世界に転生して来世を謳歌しているだけでイライラした。 私は確かに自ら命を断つという罪を犯した。 しかし、自殺した時の私の精神状態は異常だった。 そのような状態で犯してしまった罪は軽減されて然るべきなのではないだろうかと何度も思った。
私は異世界転生案内人『カイ』。今日も私の元に来客が来る。死んだ人間に私は選択肢を示す。異世界に転生できるなら、貴方は次はどんな人生を選びますか? 今日もお客様が来た。 澤村菜々子34歳。 私から見ればとても幸せな人。 私はあと100年くらいすれば、刑期の500年を終えるはずだ。 今まで何人の人の進路の案内をしただろう。 何人分の人生経験を積んだだろう。 早く私は私の人生が生きたい。 ここに来る人間は、横柄で贅沢な人間ばかり。 私ならもっと大切に自分の人生を生きる。 今度、生き返ったら人のために何かをするのもいいかもしれない。 ボランティア活動をしたりしたら、来世では良い選択肢を与えられる気がする。 男は浮気するものだと今の私にはわかっている。 男になど惑わされず自分の人生を生きていきたい。 1人で生きて行くだけのスキルを身につければ問題ない。 運よく美人に生まれてきたら男などあちらから跪いてくるだろう。 もう、2度と搾取される側にはならない。 今の私ならもっと上手くやれる。 早く刑期が終わってくれますように⋯⋯。 私は生きたい! 自分の人生を⋯⋯。 ♢♢♢ 何もかもに恵まれてきた私、澤村菜々子は常に刺激に飢えていたのかもしれない。 美貌も金も生まれながらに持っていた。 静かにしていれば、黄金のレールに乗った人生を生きられた。「菜々子お嬢様は、本当に勇気がないね。ドラッグストアが1番万引きしやすいんだって」 私は小学校5年生の時に、万引きをした。 それは、みんなの仲間だということの証明だった。 ポケットの中にそっと入れたリップスティックが仲間の証。 それで私は仲間と認識された。「私らって、ずっと将来的にもつるんでいるんだろうね」「菜々子様って、金持ちだし将来大物になりそう!」 小学生にして万引きを平気で
「女神様ではありません。私は異世界転生案内人カイです。あなたが選べる道3つをお示しします。1つ目は断罪直前の悪役令嬢であるリンド公爵令嬢、2つ目は貧しいけれど特殊能力持ちなので貴族界に入る平民レオナ、3つ目は世界を旅するユアンです。さあ、どれを選びますか?」「全部、モテなそうですね。選びません。どれもキモい人間の人生です」 私は目を瞑って自分の罪について考えた。 流されてしまった瞬間が確かにあった。 唯一愛したいと思っていた捨てた息子は自分を殺した。 ならば、私の存在には何の価値もない。「モテなければ、キモいですか? あなたがモテた瞬間がありましたか? 高校教師はあなたでなくても若い肉体を持っている女なら誰でも良い人間でした。あなたが結婚相手を条件で選んでいた通り、結婚相手も頭が悪くて扱いやすいあなたを顔だけで選んでましたよ」 カイはとても辛口に私が既に知っている事実を反芻する。私が誰よりも自分に対した価値がないと知っている。「価値はありましたよ⋯⋯少なくてもあなたの親御さんと、息子さんにとっては⋯⋯」 カイは私に苦い言葉を投げかけた「私は、私に価値があると信じた人間を捨て殺されたのですね。もう、何の未練もありません。無になりたいです。私は十分に生き恥を晒しました」 私が「生」への未練を持った瞬間、私は「無」になった。「カイ⋯⋯あなたは裁判官にでもなったつもりですか? あなたに権限は与えられています。しかし、あなたがするべき事は異世界転生を案内する事です」 頭の中でまた声がこだまする。 私は人を裁く裁判官になった気などない。 ただ、目の前に現れる人たちが新しい人生を望んでない。 私は未練を残して死んだが、意外にもそうではない人間が多く存在する。「人を裁いているつもりはありません。私は自分が罪人だと自覚しています。ただ、予想外に死を迎えた人間たちがいて⋯⋯案内人としての役割を自分なりに果たしているだけです⋯⋯」 頭の中にこだまする声に反発するように私は1人呟いた。 この孤独な時間
「仕事をちゃんとしてください⋯⋯転生させるのがあなたの役目です」 頭の中に声がこだまする。 聞いたことがないこの声は神様の声だろう。 私は杉崎美香を異世界に転生させず「無」に返した。容姿に恵まれ意地悪な彼女が私を中学時代に虐めた女に似ていたからだ。「ちゃんとやります⋯⋯すみません。人は力を持つとダメですね⋯⋯」少しの権力を持たせてやると、その人間の本質が分かると聞いたことがある。私は死んだ人間の行先を決められる権力を持ち、それを自分の思うがままに使い始めていた。「あなたに異世界カイは務まらないのかもしれません。このまま無に返しましょうか?」 頭に響き渡る声に震え上がる程の恐怖を感じた。 「無」になりたいと願った事もあったのに、ここで死んだ人間に関わるたびに「生」に執着したくなる。 みっともなくても、生きて何かしたいという感情が湧き起こってくる。 刑期は500年なのに、まだ数日しか経っていない事実に絶望する。「ちゃんと、やりますから⋯⋯どのような方でも自ら神より与えられた命を捨てた私よりは尊い存在だと認識してます」 「無」になるのが怖くて絞り出すように言った言葉と共に、頭の中にこだまする謎の声が消えた。 私は異世界転生案内人『カイ』。今日も私の元に来客が来る。死んだ人間に私は選択肢を示す。異世界に転生できるなら、貴方は次はどんな人生を選びますか? 今日もお客様が来た。 高野茉子29歳。 私から見ればとても幸せな人。 顔が良いだけの男。 体育祭で活躍するだけ足が速くて活躍するだけの男。 口が上手いだけの浮気性の男。 笑顔が可愛いだけの頭の軽い年下。そんな多くのどうしようもない男たちに振り回されて来た人生だった。でも、やっと辿り着いた私の幸せ。「汝 宮坂俊哉は、この高野茉子を妻とし、病める時も、健やかな時も、貧しい時も、豊かな時も、喜びあっても、悲しみあっても、死が2人を分
「杉崎さん⋯⋯突然殺されて不本意かもしれませんが、あなたも悪いですよ。加害者を非難できないくらい、あなたも見た目でしか人を判断できない最低な人です」 目の前の女神のようなカイは私を非難してくる。 「だって、私は美しいもの。15年の時を経て不細工になった佐々木太郎と一緒にしないで!」「み、見た目は美しいかもしれないけれど、性格がブスです。絶対に誰からも選ばれませんいよ」 美人、ブス問答をすることに何の意味もあるのだろう。 目の前の金髪碧眼のこの世のものとは思えない美しいカイは、まるでブスの代弁者のようなセリフを
私は異世界転生案内人『カイ』。今日も私の元に来客が来る。死んだ人間に私は選択肢を示す。異世界に転生できるなら、貴方は次はどんな人生を選びますか? 今日、初めてのお客様が来た。 櫻涼太17歳。 若くて、実家も金持ちで、頭も良いしルックスも良い。 周囲から愛されているのに、彼は皆が常に自分に夢中でないと我慢できないらしい。 それが例え男でも⋯⋯。 彼は、私から見ればとても幸せな人。 中高一貫校の男子校の姫ポジだった櫻涼太は悩んでいた。 最近、みんな大学受験に備えて塾に
私は異世界転生案内人『カイ』をしている。 もう、この役について300年以上になるだろう。 中間ゲートは回ったはずだが、先はまだまだ長い。 途方もなく長く、精神を疲弊する時間。 私を淡々としていると人は評するが、淡々としているフリをしているだけだ。 常に来訪者の言葉に感情が動かされ、怒りや悲しみで支配されそうになる。 全ての負の感情は自分の愚かな選択に対する絶望の感情だ。 私は自殺した女だ。 誰も褒めてくれなかった私を褒めてくれた男にハマった。 マッチングア
私は異世界転生案内人『カイ』。今日も私の元に来客が来る。死んだ人間に私は選択肢を示す。異世界に転生できるなら、貴方は次はどんな人生を選びますか? 今日もお客様が来た。 持田佳代子32歳。 私から見ればとても幸せな人。「佳代子、久しぶりー! 変わらないねー」 今日は18年ぶりに大学の同級生に呼び出されて、お茶をしている。 真理は私の大学時代の親友で卒業してすぐに結婚した。 それ以来、彼女の夫が転勤族ということもあり音信不通だった。「本当に大変だよ。転勤がさ