だが今はもう、嫌いなものを無理に食べる理由なんて、どこにもない。
「昔、私がどうして食べたか、あんたには分からないの?」
静華は深く息を吸った。
「あの頃は、あんたが施してくれたものが、私にとって何よりも大切だったから。
昔、あんたが仕方なく買ってくれた指輪も、サイズが合わなくても外すのが惜しくて、指輪の内側に何かを詰めてでも、ずっと指にはめていた。でも、今は……」
静華は震える息を吸い込み、言葉を続けなかったが、胤道は頭を殴られたような衝撃を受け、答えを悟った。
静華がもう自分を愛していないからだ。
だから、自分が買ったものを、彼女はもう宝物のように大切に扱うことはない。まるで床に落ちてクリームの塊と化した菓子のように、無理に食べる必要などないのだ。
胸に鋭い痛みが走り、胤道は息苦しさを覚えた。
なぜこれほど不快で、腹立たしいのか、自分でも分からなかった。ただ、自分と静華の間に、埋められない深い溝ができてしまったことだけははっきりと感じていた。
それがたまらなく不快で、胤道は眉をきつく寄せた。
「森、あの時も、俺はお前に何かを強制したことはない。
今もそうだ。今日の菓子だって、お前が食べたくないなら、無理強いはしない。何も無理に自分を抑える必要はない」
「ええ、あんたは一度も私に何かを強制したことはないわ」
静華は口を閉ざした。
「私の一方的な思い込みだった。だから、愚かだった自分を責めるしかない。あんたは何も悪くないもの」
胤道の顔色が一変した。
「森、いつまでそんな嫌味な言い方をするつもりだ?」
静華は、自分の言葉がきつく、棘があることは認めていた。だがそれは、胤道に対してではなく、自分自身への怒りだった。
もしあの時、もっと人を見る目があって、自分と胤道が住む世界が違うのだと深く理解していれば、今頃は、少なくとも自由な普通の人間でいられたはずなのに。
「嫌味じゃないわ。ただ事実を言っているだけ」
静華は目を伏せ、疲れた表情を見せた。
「少し疲れたから、休むわ」
静華が背を向けて二、三歩歩いたところで、胤道が突然その手首を掴んだ。
「まだ何も食べてないだろう?また胃の調子が良くなったとでも思ってるのか?」
「お腹は空いてないわ」
確かに静華は空腹を感じていなかった。起きたばかりな上に、先ほどの肉でんぶとクリー