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Home / 恋愛 / 社長夫人はずっと離婚を考えていた / 第248話

第248話

Author: 雲間探
彼女はまだ正式に離婚していない。

だが、今の二人の関係からすれば。

あんな言い方はないよ。

玲奈は辰也をエレベーターまで見送った後、足早に階段を上がっていった。

彼女の背中を見送りながら、辰也はしばらくしてようやく視線を戻し、隣にいた自社の中核エンジニアの中井一平(なかい いっぺい)に言った。「ちょっと頼みがあるんだ」

「どうぞ、何でも」

「友人が自然言語処理を本格的に学びたがっていて、今、優秀な先生を探してるんだけど……」

話を聞き終えた一平は、これまでの関係性もあり、断る理由などなかった。

ただ……

彼は少し間を置いて言った。「この分野は得意ですけど、正直なところ、長墨ソフトの湊さんと、今回何度かご一緒した青木さんには敵わないと思ってます。島村さんが本気で友人を助けたいなら、青木さんか湊さんに頼んだ方がいい成果が出るはずです」

一平の言葉を聞いて、辰也はやや驚いた。

彼は大学で金融を学んでいた。

AIの専門知識はない。

だが、一平はその道の専門家だ。

一平は国内で自然言語処理の分野において、トップとまではいかずとも名の通った人物。

だからこそ、智昭もわざわざ藤田総研や藤田グループの技術者ではなく、彼に頼んだのだ。

これまで一平が玲奈を褒めていたことは知っていた。

だが、まさか玲奈がここまで優秀とは思っていなかった。

礼二が何度も皆の前で玲奈を高く評価していたのを思い出し、仕事を通じて玲奈の実力は確かにあると思っていたが、礼二の玲奈に対する私情や誇張もあるのではと、内心では疑っていた。

でも今は……

「島村さん?」

辰也は我に返り、言った。「湊さんと玲奈さんは、その友人と個人的な因縁がある。頼むには向いてないんだ」

「なるほど……」

一平はそれ以上は何も言わなかった。

夜、辰也と一平が個室に着いたときには、優里がすでに来ていた。

一平を見た優里は、とても礼儀正しく接した。

軽く挨拶を交わしたあと、優里はすぐに専門的な話題で一平に質問を始めた。

辰也は黙って横で聞いていた。あまり話に加わることなく、どこか上の空だった。

優里が一息ついたところで辰也に視線を向け、「退屈じゃない?」と笑った。

辰也は我に返って「大丈夫だよ」と答えた。そして「気にせず話してて」と言葉を添えた。

優里は再び笑って、遠慮なく一平との
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