看護師が困っていると、ちょうど佳奈が歩いてくるのが見えた。
すぐに彼女の方を向いて声をかけた。「藤崎弁護士、ちょっと見てください!このお婆様がどうしても清司さんを連れて帰るって言い張ってるんです」
佳奈の表情は変わらず、冷ややかな目で藤崎お婆さんを見つめた。
「父は心臓の大手術を二度も受けたけど、一度も見舞いに来なかったよね。手術から回復したばかりの時に、あなたは他人と結託して父を刺激して、命を落としかけた。
彼が昏睡状態の二年間、藤崎家の人は誰一人として見舞いに来なかった。
今になって、死にかけてると見て来たか?私があなたの目的を知らないとでも思ってるの?」
その言葉を聞いて、藤崎お婆さんは怒りに満ちて罵った。
「佳奈、あんたと清司は血の繋がりなんかないでしょ?財産は本来、私みたいな母親に帰属するものよ。あんたなんかに一銭も渡す気はないわ」
佳奈は冷たく笑った。
「やっぱり財産目当てだったのね。忘れないで、私は弁護士よ。裁判で勝てる自信でもあるの?」
「ただの養女のくせに……もし私が清司の実の娘を見つけたって言ったら、あんたはどれだけ財産をもらえると思ってるの?
佳奈、はっきり言っておくわ。清司の実の娘はもう見つけたの。財産なんて一銭も渡さないし、葬儀で喪主を務める資格もない。だって実の娘じゃないんだから」
その言葉を聞いて、佳奈の顔色が一変した。
「その人はどこにいるの?連れてきて。もし本当に父の実の娘なら、私は争わない。でも、もし偽物だったら、必ず訴えるから」
藤崎お婆さんは指を差して言った。
「調子に乗らないで。慶吾がもうその子を迎えに行ってるわよ。見てなさい、清司の葬儀は藤崎家で取り仕切るの。あんたにそんな権利はないわ」
そう言い残し、杖を突きながら怒りを露わにして去っていった。
佳奈はその背中を見つめながら、拳をぎゅっと握りしめた。
もし本当にその娘を見つけて、父の葬儀まで奪われたら、自分はどうすればいいのか……
そんな思いに囚われて立ち尽くしていたとき、不意に幼い声が聞こえてきた。
「おばちゃん」
その声を聞いた瞬間、佳奈の顔に少しだけ光が差した。
声の方を振り向くと、橘お爺さんと橘お婆さんが佑くんを連れてやって来た。
その姿を見て、佳奈はすぐに駆け寄った。
「お爺ちゃん、お婆ちゃん」
橘お婆さんは心配