九条時也の気分は急降下した。
ダイニングテーブルへ向かいながら、彼は冷たく言った。「食事にしよう」
年末なので、食卓には料理が豊富に並べられ、使用人たちも忙しく立ち働いていた。高橋は二階へ上がり、水谷苑にガウンを着せて連れてきて、九条時也の隣に座らせた。そして、小声で彼女に言った。
「九条様のご機嫌を損ねないようにしてくださいね。わざわざ津帆様を連れて年越しにおいでになったのですから、せっかくの雰囲気を壊してはいけませんよ」
水谷苑は何もわかっていないようだった。
外は吹雪が強くなっていたが、長旅で疲れているはずの男は、落ち着いた様子で洋酒をグラスに注ぎ、ゆっくりと口に運んでいた。黒い瞳は、水谷苑が食事をする様子をずっと見つめていた。
水谷苑は少し偏食気味で、
前には小ぶりにカットされたスペアリブがあったけど、高橋が取り分けても一口も食べようとしないので、九条時也は箸でそれを彼女の唇に近づけ、「前は好きだっただろう?」と言った。
水谷苑は明らかに動揺した。
彼女だけでなく、九条時也までもが、一瞬、我に返った。
付き合っていた頃を思い出したのだ。あの時は彼女のために料理を作ったこともあった......彼女が一番好きだったのが、自分の作るスペアリブだった。
しかし今は、一口も食べようとしない。
九条時也が箸を戻そうとしたその時、水谷苑は口を開け、そのスペアリブを赤い唇で優しく含み、食べた......
その瞬間、彼の体は激しく反応した。
彼の中で、水谷苑への欲求はまだ消えていなかった。
今回、九条時也が根町へ来たのは、体の関係を持つためではなく、ただ純粋に九条津帆を水谷苑に会わせるためだった......
食後、少し休んでから、彼は裏庭にある露天風呂へ向かった。
この別荘を購入した決め手は、裏庭にある天然温泉だった。寒い日に温泉に浸かれば、体も温まる。石畳を歩いていると、時折、雪が舞い落ちてきた。
彼はそれを気にしなかった。
露天風呂の縁に着くと、腰に巻いていたタオルを外し、裸で湯舟に浸かった。
しかし、彼が湯舟に入った途端、華奢な人影が水面から現れた。黒い髪が細い肩に張り付き、まるで美しい水の妖精のようだった......
水谷苑は両手で胸を隠していた。
彼女は体は震わせながら、警戒心が露わにしていた。
九条時也もそれに気づかな