透子の大学時代の動画を見返すと、あの輝かしい才能に溢れた女性に心を奪われ、もし美月がいなかったら、自分と透子は自然な形で恋に落ちていたのではないかと考えてしまう。
それに、昨夜遅く透子の部屋で眠り、彼女が使っていたマットレスの残り香を嗅ぎながら、頭の中は透子のことでいっぱいだった……
シャワーを終え、蓮司が浴室から出てくると、ひんやりとした空気が彼の頭を完全に冷静にさせた。そして、ある結論に達したようだった――
好きかどうかは別として、透子が自分の視界から消え、自分のコントロールから外れることは望んでいない、と。
ベッドのそばに置かれた、くしゃくしゃになった離婚協議書が目に入り、蓮司はそれを手に取り、破り捨てようとした。
しかし、破る直前、本文の部分に透かし文字や何かの事例分析のようなものが印刷されているのに気づいた。
……
これはひどいダウンロードミスだ。オフィスであれを印刷した時は怒りで頭に血が上っていて、余計な部分を消去せずにそのまま印刷してしまったのだ。
だが、ちょうどいい。破る必要はない。これを取っておいて「目には目を」で仕返ししてやろう。
透子が偽の離婚協議書で自分をからかうというなら、こっちは彼女のものよりさらに本物らしいものを用意してやる。
それで彼女が怖気づくか、次にまた同じようなことをする勇気があるか、見てやろう。
そこまで考えると、蓮司の口元には、仕返しをする快感を伴った笑みが浮かんだ。
おそらく、お爺様のところにある協議書が偽物だと完全に理解したからだろう。
自分と透子は離婚しない。透子はただ怒って家出しただけで、いずれ戻ってくる、と。
その夜、蓮司は久しぶりによく眠れた。
翌朝早く。
新井のお爺さんは起床後、運動をしながら執事から昨夜の出来事を聞いていた。
「夜中の十一時だか十二時だかに電話をかけてきただと?あやつは寝ないのか?」
新井のお爺さんは不機嫌そうに言った。
「若旦那様は最初ひどく焦っていらっしゃったご様子で、何か旦那様にお願いしたいことがおありのようでしたが、結局何も仰らず、かえって若奥様の話になり、家出をされたと……」
執事が言った。
「何日も経ってからようやく人がいなくなったことに気づいたと?死体だって、とっくに腐って臭くなるだろう」
新井のお爺さんは顔をしかめて言った。
さらに