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Home / 恋愛 / 離婚カウントダウン、クズ夫の世話なんて誰がするか! / 第49話

第49話

Author: ちょうもも
史弥は拳を固く握りしめたまま、その大柄な身体は微動だにせず、眉間には冷淡な無表情が浮かんでいた。

「寒河江社長もご存じのはず。俺たちの関係上、お前は悠良に手を出すわけにはいかない」

「その台詞は、まず西垣の始末をつけてから言え。それと、お前の醜聞。自分でケリつけろ。俺が爺さんに報告に行く前にな」

白い煙と吐息が混じり合い、ゆらゆらと空へ昇っていく。

伶の眉間には、かすかに苛立ちの色が滲んでいた。

史弥は伶の性格をよく知っていた。

これ以上しつこく食い下がれば、何も得られないと分かっていた。

言うべきことはすべて言った。

そう判断して彼は踵を返した。

だが、伶の低い声が再び背後から響いた。

「俺はお前みたいなクズと違う。既婚者の女には手を出さない。これが俺の一線だ」

その言葉を聞いた瞬間、史弥の強張っていた肩が少し緩んだ。

伶があれだけはっきり言うということは、実際に何もしていない証拠だ。

車はすぐにアパートから走り去った。

伶は軽蔑の眼差しで視線を引き戻し、仰ぎ見るように二階の閉じたドアを見やった。

「もう出ていいよ」

悠良は扉を開け、青ざめた顔で立っていた。

ぎこちない足取りで階段を下りてくる。

伶はちらりと彼女を見て言った。

「全部聞いた?」

「うん」

悠良は機械的にうなずいた。

さっきまで元気そうだった彼女が、今では覇気がなくなっている。

伶はその変わりように、思わず苛立ちを覚えた。

「ずっと聞こえないままでいいのにな」

そんな罵声なんか、聞かなくて済む。

悠良はまさか史弥が自分から伶の元に出向いて、あの夜のことを問い詰めるとは思っていなかった。

そして、伶の言葉はどれも的を射ていて、胸の奥にズシリと刺さった。

史弥が急に来たのは、きっと広斗から何かを聞いたのだろう。

だが、なぜその広斗を問い詰めるより先に、伶を責めに来たのか。

薬を盛ったのは広斗であって、伶ではない。

もし薬を盛られたのが玉巳だったら、史弥は今みたいに軽く済ませただろうか?

......きっとそんなことはない。

悠良の口内には苦味が広がり、まるで崖から落ちたような強烈な虚脱感に襲われた。

それでも、もう以前のようにショックを受けることはなかった。

ただ、可笑しくなっただけだった。

史弥は、どこまでいっても自分の想像を下回
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