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Home / 恋愛 / 離婚カウントダウン、クズ夫の世話なんて誰がするか! / 第52話

第52話

Author: ちょうもも
伶はまぶた一つ動かさず、まるで広斗の存在など眼中にない。

そんな伶の無反応に、広斗は怒りにまかせてハンドルを思い切り叩きつけた。

「......お前、やるな。どこまで余裕ぶっていられるか!」

広斗はさらにアクセルを踏み込み、命知らずに伶の車を追いかけた。

その表情を見て、悠良は思わず身震いする。

「......あの人、命が惜しくないの?」

すでに広斗の車体はバランスを崩し始めていた。

どれだけ高性能な車でも、限界を超えたスピードでは制御が効かなくなる。

だが、伶の黒く澄んだ瞳には微塵の動揺もなかった。

ちらりと広斗の方に目を向けただけで、まるで全て計算ずくのようだった。

「もう少しだ」

その「もう少し」という言葉の意味はわからなかったが、悠良は直感的に、伶がただの意地でこんな危険なカーチェイスをしているとは思えなかった。

広斗のような短気で無鉄砲な人間ならともかく、伶のように冷静沈着で頭の切れる男が、無駄な賭けに出るはずがない。

と思った矢先、前方で車線が分かれ始めた。

悠良には、それが何の意味を持つのかまだわからなかったが、このままじゃ広斗もブレーキを踏む気配すらなく、むしろどんどんスピードを上げていた。

そんな中、伶がぽつりと言った。

「しっかり掴まれ」

彼の声に、悠良は無意識に手をぎゅっと握りしめ、緊張で思わず口を開く。

「何するつもり?」

「すぐわかる」

次の瞬間、伶は急にブレーキを軽く踏んで減速。

だがまだスピードは十分に早い。

そして。

広斗の車が並んだタイミングを狙って、いきなり左にハンドルを大きく切った。

広斗が反応する暇もなく、伶の車のフロントが斜めになった広斗の車にぶつかり、そのままガードレールへ押しつけた。

「うわっ、クソッ!」

広斗は慌ててブレーキを踏んだが、もう遅かった。

伶は素早くギアを戻し、スムーズに車線へ戻り、そのままアクセルを踏み込み、まるで何事もなかったかのように走り去った。

広斗の目の前に残ったのは、伶の車のテールランプだけだった。

やがて車はスピードを落とし、ハイウェイを降りたところで路肩に停まった。

悠良はすぐさまシートベルトを外し、車外へ飛び出してその場で吐いた。

緊張しすぎて吐かなかったのが奇跡で、少しでもタイミングがズレていれば、確実に伶の車の中で吐いていた
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