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根上真気
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Novels by 根上真気

転生吸血姫

転生吸血姫

遊び人男が女に刺殺されて転生したのは吸血鬼の王女。城に住み臣下がいて美少年に愛され幸せに見えたが...国の経済状況はひっ迫していた。何とかするにはある国との関係回復が必須。その国には三人の王子がいる。どれも一筋縄ではいかないイケメン王子様!絶世の美少女となった主人公が遊び人だった前世を活かし彼らを虜にして国を救う!? 男女逆転(TS)転生!ロマンスコメディ・ゴシックファンタジーが幕を開ける!
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Chapter: おまけ
「リザさま。おはようございます」起きるなり若くて美しい侍女がやさしく声をかけてきた。「おはよう。マデリーン」リザレリスが応えると、マデリーンは満面の笑みを浮かべた。「本日も朝からリザさまはとってもお可愛くていらっしゃいます」「マデリーンのほうこそ朝から美人だな」元遊び人らしくリザレリスも調子良く返した。するとマデリーンの顔がトロけるようにほころぶ。「そ、そんな、リザさまからそのようなお言葉をいただけるなんて」気をよくしたリザレリスは、マデリーンの頬にそっと手を触れる。「こんな綺麗な侍女がいてくれて、俺...わたしは幸せだぜ」「はあ!」マデリーンは膝から崩れ落ちた。「まったく朝から何をやっているんですか」後ろからルイーズが呆れながらやってきた。
Last Updated: 2025-07-07
Chapter: ep101 エミルとルイーズ
【25】夜、皆が帰っていった後。リザレリスが自室に戻っていってから、居間でエミルはルイーズに訊ねた。言うまでもなくマデリーンについてのことだ。確かに彼女は、まるで人が変わったようにリザレリスへ従順になった。しかし彼女がリザレリスを傷つけたことは事実。それなのに侍女として彼女を迎え入れたのはどういうことなのか。「もちろん無条件に受け入れたのではありません。マデリーン・ラッチェンは、私の課した試験に合格したので採用しました」これがルイーズの回答だった。そして彼女はこうも付け加えた。「マデリーン・ラッチェンは、何もかも正直に話してくれましたよ。その上で彼女はリザレリス王女殿下の侍女になりたいと申しました。そんな彼女に対し、私は通常よりも遥かに厳しく試験と審査を行いました。しかし彼女は合格しました。ハッキリ言いましょう。彼女は優秀です。今後、彼女は必ず役立ってくれると私は判断しました」その説明は、エミルを納得させるに余りあるものだった。ルイーズという人間のことをエミルはよく知っている。彼女の課す試験と審査というものが、どれだけ厳しいのかを知っていた。エミルにとって彼女は、真の信頼に足る人物だった。彼は彼女を尊敬もしていた。「ルイーズさんがそう言うなら、そういうことなのでしょう」エミルが納得して見せると、ルイーズは口元を緩めた。
Last Updated: 2025-07-06
Chapter: ep100 サプライズ
こうしてすっかり楽しい雰囲気となった彼らへ、サプライズが起こったのは夕食の時だった。食卓に着いた彼らのもとへ、ルイーズの指示に従い侍女が料理を運んでくる。最初は誰も気にしなかったが、ふと皆の視線が彼女に貼りついて固まった。ルイーズが満を持してといった具合に、咳払いをひとつする。「彼女は、本日から新しく侍女として入って参りました。マデリーン・ラッチェンです」侍女姿となったマデリーンは、リザレリスたちに顔を向け、挨拶する。「改めまして、本日よりリザレリス王女殿下の侍女としてこちらに勤めさせていただきます、マデリーン・ラッチェンです。どうぞよろしくお願いいたします」部屋に沈黙が訪れる。誰にも理解が追いつかない。皆が口を半開きにする中、フェリックスが吹き出した。「これは参ったな。さすがに僕にも予想外だったよ」笑い声を上げるフェリックスに、マデリーンが体を向ける。「フェリックス様の温情ある措置があったからこそ、今の私があります。本当にありがとうございました」彼女の謝意に対しフェリックスが会釈した時、ようやくリザレリスたちも一斉に声を上げた。「えええー!?」
Last Updated: 2025-07-05
Chapter: ep99 王女のおかげ
放課後、肩を落として校舎から出てくるリザリレスを待っていたのは、レイナードとフェリックスだった。このタイミングでこのふたりが待っていたということは、理由はひとつだろう。「リザも聞いていると思うけど」とフェリックスは前置きして、リザレリスの反応を窺ってきた。リザリレスは無言で頷く。それを確認すると、彼は申し訳なさそうな顔を浮かべた。「彼女が自分自身で決めたことだから、これ以上は僕にもどうにもできない」そんなフェリックスに、レイナードは言う。「いや、兄貴は最大限のことをやってくれた。俺なんか最初からなんもできてねえ」レイナードは悔しさに唇を噛んだ。空気が重くなっている彼らを、周囲の生徒たちは不思議そうに眺めていた。いったい王子ふたりが一年生と何を話しているんだろう、という目で。マズイと思ったエミルとクララが視線を交わし合う。「早く参りましょう!」エミルとクララに促され、リザレリスたちは歩き出した。一行が乗り込んだ馬車がリザリレスの屋敷に到着すると、クララが遠慮がちに口をひらく。「ほ、本当に、私までよろしいんですか?」「当たり前じゃん。こんな日だからこそ今日はみんなで楽しみたいんだよ。クララもいてくんなきゃ困る」
Last Updated: 2025-07-04
Chapter: ep98 決めたこと
人気のない校舎の裏庭までやって来ると、マデリーンが立ち止まり、こちらへ振り向いた。彼女は周囲を見まわしてから、クララへ顔を向ける。「巻き込んでしまって、本当にごめんなさい」自分への謝罪にびっくりしたクララは、慌てて手を横に振った。「わ、私は、むしろ加害者側で」「違う。貴女も私の被害者よ。それに貴女がいなければ本当に取り返しのつかないことになっていたかもしれない」「そ、そんな、私は」「ごめんなさい。そして、ブラッドヘルム王女様を救ってくれてありがとう」「わ、私は、できることをやっただけです」クララは複雑な胸中で恐縮するが、マデリーンの様子には安堵していた。それからマデリーンは、改まってリザリレスの方へ向く。「ブラッドヘルムさん。いえ、リザレリス王女殿下」「は、はい」やけに畏まった様子にリザリレスはやや戸惑うが、このあとさらに困惑させられる。マデリーンが跪いてきたのだ。「この度は、多大なご迷惑を
Last Updated: 2025-07-03
Chapter: ep97 焦燥の悪役令嬢
【24】シルヴィアンナと取り巻きは、教室で呆気に取られていた。あの日の翌日以降、リザリレスが何も気にしていないからだ。怒るでもなければ怖がるでもなし。文句すら言ってこない。ただ何事もなかったように、教室でも外でも普通に明るく楽しく過ごしている。「どういうことなんでしょう......」取り巻きが言うと、シルヴィアンナはふんと鼻を鳴らす。「それよりもラッチェン先輩の停学処分が気になるわ。あの人、いったい何をやったの?」「さあ。あのあと私たちはそのまま帰ってしまいましたから......」「そういう約束だったからそれは仕方ないわ。ただ、あの人の停学処分の理由がわからないと、何となくわたくしたちも大人しくせざるをえないじゃない」マデリーン・ラッチェン停学については、一年生の間でも噂が広がっていた。何せマデリーンは第二王子の恋人だった女。その彼女が停学処分となったのだから、何かと勘ぐられ、囁かれてしまうのは仕方がないことだろう。ただし噂はどれも憶測レベルで、信憑性に欠けるものだった。 「し、シルヴィア様の、おっしゃるとおりです」おずおずと取り巻きは答えた。そうとしか答えようがなかった。シルヴィアンナは苛立ちを滲ませる。
Last Updated: 2025-07-02
婚約してから始まる恋~炎の魔女と氷の公爵様

婚約してから始まる恋~炎の魔女と氷の公爵様

運悪く親友の修羅場に巻き込まれて刺殺されてしまったコハクは異世界の魔女に転生する。転生後、彼女はある目的のために〔魔女の里〕へとやってきた若き公爵・クローと出会う。魔女の力を目撃したクローは、病気の弟を救うために彼女を連れ帰りたいと言う。それから二人はやむを得ず婚約を交わし〔魔女の里〕を後にする。やがてコハクの心は、黒髪の貴公子(クロー)の蒼い瞳に惹き寄せられていく。そして病の美少年(クローの弟)にも出会い、コハクの恋と運命は大きく揺れ動いていくことになるのだった。
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Chapter: ep21 転生三日目
  【6】この世界に転生してから三日。ようやくコハクも新たな人生に慣れ始めていた。「これが今のボク......」部屋でひとり、姿見鏡の前に立ち、ポーズを取ってみる。前世のような女装ではなく本物の女の子。年齢不詳だが、見目麗しき銀髪美少女。「こうやって冷静になって、改めて見てみると......」鏡に映る自分自身と向かい合いながら、異世界の女の子に転生したという事実を改めて噛み締める。最初は戸惑ったお手洗いやお風呂も、意外なほどにすぐ慣れた。服装に関しては最初からほとんど問題なかった。前世での女装経験やコスプレ経験が役立ったのだろう。「気持ちの部分も、すっかり女の子になったのかな......?」現時点では判断しかねる。こればっかりは焦ってもしょうがない。それよりも、これからの人生に想いを馳せる。「せっかくこうやって生まれ変わったんだ。しっかり生きていきたいし、楽しんでもいきたいな」よしっ、とコハクは胸の前で両の拳を握る。「それには、もっとこの世界のことを知りたいな。魔法のことも......」まだ〔マギアヘルム〕以外には行ったことがない。そのマギアヘルムですら一部しか知らない。したがって、この世界のほとんどが未知だった。ナイジェルとアンから教えてもらったことを総合すると、前の世界で言うところの十八世紀か十九世紀ぐらいの西洋的な世界のようだが、はたして……。「ここは田舎だと言っていたから〔テルストリア〕の都市部に行けば、また全然違うんだろうな。ここものどかで悪くないけど、都会にも行ってみたいなぁ......」テレビや電話などはそもそも存在しない。だが上下水道や電灯といった基本的なインフラは田舎でも整備されていた。中には魔力を動力とするものまであった。残念ながら外見も効力も使用方法も前世のそれ(電化製品や設備)とほぼ変わらず、コハクを驚かせるには足らなかったが。しかし、都会に行けば田舎にはない『魔導車』『魔導列車』といった代物もあるらしい。そう。つまりこの世界では『魔法文明』とでも言うべきモノが様々に存在するのだ。「あの人について行けば......いや、でもアンたちと離れるのは寂しいなぁ」ベッドに腰かけて置き時計を見る。針は午後四時を差していた。今日のコハクはアンと一緒に付近を少々散歩しただけ。ほとんどを家の中で過ごしている。もっと正確に言えば、
Last Updated: 2026-02-24
Chapter: ep20 それぞれの想い
しばらくの間、クロー・グレイシャは〔マギアヘルム〕に滞在することとなった。彼の滞在期間は結論がいつ出るか次第になる。強引に婚約話が進んでいってしまいそうな所をアンとナイジェルが食い止め、そのような形となったのだ。「しかし、ずいぶんと大胆な公爵様だよな」自分の屋敷へ戻るなり、ナイジェルは疑問に満ちた顔をする。彼には未だにクロー・グレイシャの行動意図が測りかねていた。本当に弟を救いたいがためだけなのだろうか。「領主さまは......」アンも言う。「婚約期間と結婚の時期、将来の政治上および経済上の利益等についても条件を出されていたけれど、あの様子ならグレイシャ様は承諾されるでしょうね」「それだけ弟さんを救いたいということなんでしょうね。弟思いの優しいお兄さんなんだなぁ」コハクは何の気なく言ったが、アンの眼がギロリとこちらへ向く。「そんなのん気なことをおっしゃっている場合ではありませんよ。これはコハクお嬢さまの人生に関わる大きな問題なのですから」「わ、わかってますよ」「私から言わせてもらえば、自分の弟を救うためならば一人の女の人生など|厭《いと》わないと言っているようなものです」「そ、そこまで言わなくても......」「悪い人間ではないかもしれません。良い人間かもしれません。しかし私は認めません。弟さまのこととは別に、彼がコハクお嬢さまのことを本気で想っていらっしゃるならばまだしも、あれでは納得できません」「アンさん......」「領主さまにとっては政略結婚。公爵さまにとっては弟を救うため。利害は一致している。しかし私は......コハクお嬢さまの女としての未来が、目的を達成するための手段として利用されることに耐えられないのです。コハクお嬢さまが、まるで道具のように扱われることが、私はどうしても許せないのです」 アンの激昂ぶりに、コハクよりもナイジェルが驚いていた。「俺の縁談話の時は、そこまで怒ってくれたかな?]「それとこれとはまた別なの」「そういうことにしておくよ」「それにこれはナイジェルも領主さまもわかっていることでしょうけど」「なんだ?」「今のコハクお嬢さまは魔力と魔法が安定していない」アンは怪訝な表情を浮かべる。「なので仮にコハクお嬢さまのお力で公爵様の弟さまを救えるとしても、すぐにというわけにはいかないでしょう?」「それに
Last Updated: 2026-02-23
Chapter: ep19 事情
「そういうことだったのか......」ナイジェルが腕を組んで宙を見つめた。ひと通りの説明を聞き、事情はよく理解した。だが彼の表情は曇っていた。「しかし......」とアンが切り出す。「すでにご存知のように、貴方の弟様のご病気は、現代の医療はもちろんのこと魔法による治療でも治らないと結論づけられております」「その通り」領主が重ねる。「いくら我々〔マギアヘルム〕の魔法使いでもどうすることもできません。自らの魔力により自らの身体を蝕み、やがては免れざる死に至らしめる〔魔力硬化症〕は、紛れもなく不治の病。グレイシャ様自身も魔法の使い手ならば百も承知でしょう」「それでも私は彼女に賭けてみたい」クロー・グレイシャの決心は揺るがない。それこそこのような反応をされることなど百も承知だったのだろう。「ボクで良ければ、助けてあげたいけど......」コハクはクローの凛々しく端麗な顔を見つめる。弟の病を治すため、その手段を探すため、はるばるこの地までやって来た若き公爵の顔を......。「コハクお嬢さまをお連れすることは私が許しません」不意に鋭い声が上がった。皆の視線が彼女へ集まる。アンだ。「もちろんタダでとは言わない。結果如何に関わらず、グレイシャ家の当主として最大限の対価を支払わせていただく」クローも譲らない。アンは立ち上がってコハクに近づき肩を寄せる。この子を守るのは私だと言わんばかりに。「貴方の弟様が助からなかった時、きっとコハクお嬢さまは深く傷ついてしまいます。確かに貴方はコハクお嬢さまとこの町を救ってくださいました。貴方には恩があります。それでも、わざわざ悲しみの待つ可能性がある場所へ、コハクお嬢さまを行かせるわけには参りません」「申し訳ありません」と断ってからナイジェルも言った。「私も同意見です」クロー・グレイシャは、コハクを守ろうとする二人と対立する形となった。そのやり取りを見守っていた領主は、おもむろに口をひらく。「グレイシャ様。貴方は恩人ですが、それでもやはり他人です。救っていただいた御礼に、コハクお嬢さまを他人である貴方とともに行かせることなど到底承服いたしかねます。貴方が他人であるかぎり」もっともな台詞だったが、どこか含みがあるようにも聞こえた。そこをクローは見逃さなかった。「では......私と彼女が、他人でなくなるとすれば、ど
Last Updated: 2026-02-22
Chapter: ep18 望み
「今、なんと?」領主が思わず訊き返した。「ですから私の望みは、そちらの彼女を連れ帰ることです」クロー・グレイシャは迷いなく言い放った。その声には覚悟の響きすらある。「ぼ、ぼぼぼボクを、連れ帰るぅ!?」コハクは跳び上がるように立ち上がった。この人は出し抜けに何を言っているんだ!?「それはどういう意味ですか?」アンが眼光鋭く割って入った。保護者の目であり、女の眼だ。「グレイシャ様」領主の声のトーンが低くなる。「コハクお嬢さまは特別な方です。貴方にどのような意図があるにせよ、コハクお嬢さまをお連れするということは、相応の意味が生じます」部屋内が沈黙に包まれる。当のコハクは急転直下の急展開についていけず何かを言うに言えない。「二つ、確認してもよろしいですか?」クローが口をひらいた。領主が頷くと、彼は言葉を続ける。「特別な方。相応の意味。これらが示す具体的な内容をお教えいただきたい」「コハクお嬢さまは、深焔の魔女の血を引く魔女の末裔です。それと同時に〔マギアヘルム〕の初代領主のご令嬢でもあらせられる。ここまで言えば、相応の意味は自ずとわかりましょう?」あえてひけらかすように領主は事実を突きつけた。彼を試しているのか......ナイジェルとアンはそう汲み取ったが、領主の真意は少し違った。「グレイシャ様」領主が続ける。「貴方がコハクお嬢さまに関心を寄せる理由......それはつまり、貴方の言った『大きな可能性』という言葉が意味するところと推察しますが、正直にお答えいただけますか?」領主の指摘は的を射ていたようだ。クローは観念したように吐息をつくと、事情を語り始めた。
Last Updated: 2026-02-21
Chapter: ep17 若き公爵
  【5】「改めまして私が領主のバーバラです。この度は〔マギアヘルム〕の危機を救ってくださり誠に感謝いたします」バーバラは領主邸の応接室に男を招くと、改めて深謝した。部屋には領主と男以外にナイジェルとアンとコハクも同席していた。「たまたま旅をしていたところであのような状況に出くわし、自分の為すべきことをしたまでです」男は淡々と答えた。領主と向かい合って座る男を、コハクは側面の席から見つめる。蒼玉のように深く青い瞳が印象的な黒髪の美男子。それがコハクの第一印象だった。スラリとした体はスタイルも良く、身なりはきちんとしていて、どこかの貴族にも見える。「〔マギアヘルム〕に旅、ですか」領主は男をまじまじと見る。恩人とも言える相手に対し些か失礼に思えるが、領主として相手を見極めようとしているのだろう。「魔法について調べるために国内を回っていました」男は微塵も動じることなく粛々と説明する。「その中で、ここ〔マギアヘルム〕へも足が向かったのは自然な流れでした」「確かに、その通りですね。貴方自身も相当な魔法使いと見えますし......」領主は熟練鑑定士の目つきで男を見つめ続けていたが、横からナイジェルとアンが物言いたげな視線を領主に送った。わかったわかった
Last Updated: 2026-02-20
Chapter: ep16 英雄
アンに手を取られながらゆっくりと慎重に地上に戻ったコハクは、極度の緊張から解放されて大きく息を吐き出す。やっぱり自分は魔女なんだと、今さらながら改めて驚愕した。「あのワイバーンを、ボクが......」自分の掌を見つめて静止する。が、ふと周囲に気づいて視線を上げた。「なんと、恐ろしき魔女さま……!」町の人々が、コハクに視線を向けられたと同時に地面に跪いて頭を垂れた。コハクは悟る。これは崇敬とは違う。恐怖だ。彼らはすくみ、その体は震えていた。「ご、ごめんなさい……」コハクは思わず声を詰まらせて謝った。ひどく悲しい気分だった。「ちょっと、コハクお嬢さまは……!」とアンが町の人々へ詰め寄ろうとした時だった。「大丈夫か?」離れたところからコハクへ向かって声が飛んできた。コハクが振り向くと、視線の先には蒼い瞳の黒髪の美男子が立っていた。「だ、大丈夫です!」一生懸命に声を出してコハクは返した。それに対して彼はこれといった反応は見せない。ただ歩き出しながらこう言った。「ワイバーンから町を救った英雄は、早々に休んでいるといい」そうして彼は再び消火活動に向かっていった。コハクは、彼の身体から感じた心地良い冷気を思い出す。彼がいなければどんな悲惨な結果をもたらしてしまったかわからない。町も、人も、自分も。そうです。だから、ボクの英雄は貴方です......。町の人々は顔を上げると、皆一様に複雑な表情を浮かべていた。
Last Updated: 2026-02-19
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