LOGIN遊び人男が女に刺殺されて転生したのは吸血鬼の王女。城に住み臣下がいて美少年に愛され幸せに見えたが...国の経済状況はひっ迫していた。何とかするにはある国との関係回復が必須。その国には三人の王子がいる。どれも一筋縄ではいかないイケメン王子様!絶世の美少女となった主人公が遊び人だった前世を活かし彼らを虜にして国を救う!? 男女逆転(TS)転生!ロマンスコメディ・ゴシックファンタジーが幕を開ける!
View Moreこの物語を始めるにあたり、始めにいささかの説明を必要とせざるを得ないことがある。
それは主人公となるヒロインについてだ。
なぜなら、彼女には三つのややこしい事情が存在するからである。
ひとつは転生者であること。
ひとつは転生前の記憶と人格をそのまま保持していること。
ひとつは吸血鬼であること。
まずは、上記のことを踏まえた上で彼女のことを見ていただければと、お伝えしたい。
それともうひとつ。
彼女について、あらかじめご了承願いたいことがある。それは、彼女の転生前については多くを語りたくないということだ。
理由は簡単だ。転生前の彼女...否、彼は、最大限言葉を選んで言えば、バカのつく遊び人だったからである。
彼の特徴は二つ。
長所→女にモテること。
短所→女グセが悪いこと。
さて、ここで簡単な算数の問題を考えてみよう。
例えば「+10」と「ー10」があった場合に、それらを「かける(×)」とどうなるか?
「ー100」だ。
すなわち、それが彼である。そして大きくなった彼のマイナスは、いつしか彼の身に降りかかることになった。
いや、こんな格好つけた表現、コイツにはいらない。彼は持ち前の女グセの悪さが災いし、数えきれないほど遊びまくった挙句に痴情の縺れで刺殺され、まだ若くしてその人生を終えたのである。
どうだろう。おわかりいただけたであろうか。ヒロインの転生前について語りたくなかった理由が。
叩けば埃が出まくりなのだ。
そんなヤツが、何の因果か異世界の吸血姫に転生してしまったというのだから、この世はまことに奇妙というもの。
いずれにしても......。
新たな人生を歩んでいく彼女がどうなるのか。
前世を反省して悔い改めるのか。前世を省みずバカを続けるのか。それはまだ誰にもわからない。
そんな彼女を、あたたかい目で見守るも、冷たい目で突き放すも、皆様の自由です。
しかし、願わくば皆様が、彼女の行く末に、どうか一喜一憂し賜らんことを。
「リザさま。おはようございます」起きるなり若くて美しい侍女がやさしく声をかけてきた。「おはよう。マデリーン」リザレリスが応えると、マデリーンは満面の笑みを浮かべた。「本日も朝からリザさまはとってもお可愛くていらっしゃいます」「マデリーンのほうこそ朝から美人だな」元遊び人らしくリザレリスも調子良く返した。するとマデリーンの顔がトロけるようにほころぶ。「そ、そんな、リザさまからそのようなお言葉をいただけるなんて」気をよくしたリザレリスは、マデリーンの頬にそっと手を触れる。「こんな綺麗な侍女がいてくれて、俺...わたしは幸せだぜ」「はあ!」マデリーンは膝から崩れ落ちた。「まったく朝から何をやっているんですか」後ろからルイーズが呆れながらやってきた。
【25】夜、皆が帰っていった後。リザレリスが自室に戻っていってから、居間でエミルはルイーズに訊ねた。言うまでもなくマデリーンについてのことだ。確かに彼女は、まるで人が変わったようにリザレリスへ従順になった。しかし彼女がリザレリスを傷つけたことは事実。それなのに侍女として彼女を迎え入れたのはどういうことなのか。「もちろん無条件に受け入れたのではありません。マデリーン・ラッチェンは、私の課した試験に合格したので採用しました」これがルイーズの回答だった。そして彼女はこうも付け加えた。「マデリーン・ラッチェンは、何もかも正直に話してくれましたよ。その上で彼女はリザレリス王女殿下の侍女になりたいと申しました。そんな彼女に対し、私は通常よりも遥かに厳しく試験と審査を行いました。しかし彼女は合格しました。ハッキリ言いましょう。彼女は優秀です。今後、彼女は必ず役立ってくれると私は判断しました」その説明は、エミルを納得させるに余りあるものだった。ルイーズという人間のことをエミルはよく知っている。彼女の課す試験と審査というものが、どれだけ厳しいのかを知っていた。エミルにとって彼女は、真の信頼に足る人物だった。彼は彼女を尊敬もしていた。「ルイーズさんがそう言うなら、そういうことなのでしょう」エミルが納得して見せると、ルイーズは口元を緩めた。
こうしてすっかり楽しい雰囲気となった彼らへ、サプライズが起こったのは夕食の時だった。食卓に着いた彼らのもとへ、ルイーズの指示に従い侍女が料理を運んでくる。最初は誰も気にしなかったが、ふと皆の視線が彼女に貼りついて固まった。ルイーズが満を持してといった具合に、咳払いをひとつする。「彼女は、本日から新しく侍女として入って参りました。マデリーン・ラッチェンです」侍女姿となったマデリーンは、リザレリスたちに顔を向け、挨拶する。「改めまして、本日よりリザレリス王女殿下の侍女としてこちらに勤めさせていただきます、マデリーン・ラッチェンです。どうぞよろしくお願いいたします」部屋に沈黙が訪れる。誰にも理解が追いつかない。皆が口を半開きにする中、フェリックスが吹き出した。「これは参ったな。さすがに僕にも予想外だったよ」笑い声を上げるフェリックスに、マデリーンが体を向ける。「フェリックス様の温情ある措置があったからこそ、今の私があります。本当にありがとうございました」彼女の謝意に対しフェリックスが会釈した時、ようやくリザレリスたちも一斉に声を上げた。「えええー!?」
放課後、肩を落として校舎から出てくるリザリレスを待っていたのは、レイナードとフェリックスだった。このタイミングでこのふたりが待っていたということは、理由はひとつだろう。「リザも聞いていると思うけど」とフェリックスは前置きして、リザレリスの反応を窺ってきた。リザリレスは無言で頷く。それを確認すると、彼は申し訳なさそうな顔を浮かべた。「彼女が自分自身で決めたことだから、これ以上は僕にもどうにもできない」そんなフェリックスに、レイナードは言う。「いや、兄貴は最大限のことをやってくれた。俺なんか最初からなんもできてねえ」レイナードは悔しさに唇を噛んだ。空気が重くなっている彼らを、周囲の生徒たちは不思議そうに眺めていた。いったい王子ふたりが一年生と何を話しているんだろう、という目で。マズイと思ったエミルとクララが視線を交わし合う。「早く参りましょう!」エミルとクララに促され、リザレリスたちは歩き出した。一行が乗り込んだ馬車がリザリレスの屋敷に到着すると、クララが遠慮がちに口をひらく。「ほ、本当に、私までよろしいんですか?」「当たり前じゃん。こんな日だからこそ今日はみんなで楽しみたいんだよ。クララもいてくんなきゃ困る」
どうしようとリザレリスがしばらく迷っていると、彼らの背後から誰かが近づいてきて声を上げた。「そこにいるの、兄貴だよな」リザレリスとフェリックスは同時に振り向いた。次の瞬間、フェリックスよりも先にリザレリスが声を発した。「お、おまえは!」
【4】リザレリス王女とウィーンクルム王子の結婚の話題は、まるで既成事実かのように国中へ広がっていってしまった。ドリーブはマスコミにも強いパイプを持っている。彼の息のかかった新聞記者たちが動いたに違いない。「このような事態になり、大変申し
広々とした玉座の間は、にわかにザワついてくる。重臣たちの表情は二通りに割れていた。微笑を浮かべるドリーブ派と、険しい顔をするディリアス派(伝統派)に。昨夜の会議においても、伝統を重んじるディリアス派は王女の政略結婚には極めて慎重だった。一方でドリーブ派は、使える手段は何でも使うべきという姿勢だった。両派とも、対立するのは今に始まったことではない。もはや国王の権力が衰退してしまったこの国では、力のある閣僚同士の争いの勝者が、国家運営を決定付けていた。「もう解散だ!」たまりかねたディリアスが手を挙げて閉会宣言を告げた。閣僚とはいえ、今のディリアスは国王代理。客観的にも実質的にもドリーブよ
そんな時だった。「なんだ?」と隣のディリアスが何かに反応した。何かと思いリザレリスは視線を彷徨わせる。すると、玉座に向かって三人の重臣が歩み出てくるのが目に入った。「いったいどうした、ドリーブ卿」ディリアスが声をかけてもそれには応えず、三人の重臣たちは王女の面前まで来て跪いた。ディリアスは怪訝な表情を浮かべる。「ドリーブ卿、なんのマネだ」「ディリアス公。私は王女殿下の、そして我が国の未来のために、こうしております」三人の真ん中にいる、ドリーブという名の中年男が口をひらいた。この小太りの侯爵は〔ブラッドヘルム〕の外務大臣を務める重臣で、狸のような狡猾な面構えが印象的だ。ディリアスよ