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Novels by Mr.Z

フォールン・イノベーション -2030-

フォールン・イノベーション -2030-

"2030.06.01" 世界初のある事が日本にて行われた。 "最新型AIの総理大臣就任" 衝撃的ニュースから3か月後、"大学3年の三船ルイ"はやる事を終え、"幼馴染のユキ"と会って久しぶりに外食をしている時、『AI総理大臣は新たな経済対策を発表しました』という意味深な速報を目にする。 直後、"AIアンドロイドに人が食われて死ぬ"というありえない事件を目にした二人は、この新経済対策の"本当の恐怖"を知る事になる――。
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Chapter: 101. 密会
「あ、男子全員いる。おはよ」 男4人で朝食を取っていると、ユキを筆頭に女子たちが2階バイキングへと降りて来た。 ヒナとノノはまだ眠そうな顔をしている。「何食べてるの? それ」「ん、これは"赤毛和牛筋カレードーナッツ"」「え、めっちゃ美味しそう。私もそれ欲しいな」「んなら、これやるよ。来たら欲しがると思って、多めに取っといたから」「さっすがルイ。隣、座っていい?」「いいよ」 持っていったカレードーナッツ2個を半分ずつにし、4人でそれぞれシェアしているようだ。1個が結構大きいため、女子にはそれくらいの方がいいかもしれない。「ん~! こんな美味しいカレードーナッツ、食べた事無いわ!」「だろぉ!? これマジで最高だよなぁ!」「シンヤ君に言ってない」「は!? 朝からひどっ!?」 二人のやり取りに、アスタとカイが笑っている。 朝から騒がしいなこいつら。「シン君ってさ、新崎さんにそんな対応取られてるんだね」「んだよ、二人でそんな笑いやがって。ルイにはクソ甘々なくせに、俺にはいつもこうなんだよなぁ」「まぁ、ルイ君相手は仕方ないよ」「おいおい、あのアスタが諦めんのかぁ?」「だって、彼は"超宇宙人"だから、"蝶"だけに、ね」 ⋯⋯昨日の俺と同じ事言ってるぞ カレードーナッツを食べ終わった女子4人は、次のドーナツを取りに行った。ただニイナだけは、一瞬俺の方を向いてニヤりとした。 ⋯⋯あいつ、俺が逃げたから勝った気になってやがる バカラサバイバルで負けたのがよっぽど悔しかったらしい。 そんなに本気で勝負する必要あったか⋯⋯?「ニイナとなんかあった?」「いいや、バカラで遊んでただけ」「え、違法賭博?」「んなわけねぇだろ」「ルイ君がしてくれたら面白いんだけどなぁ」「お前弁護士やめろ」  俺とアスタの間に、シンヤが割り込んできた。「おい! 弁護士やめたら俺とAR部門プロやろうぜ! おめぇならすぐなれるからよぉ!」「それも面白そうだね」「そのプロを雇ってる"事務所の社長が俺"だろうが」「そうなんだよなぁ。このルイとかいう"一番終わってる野郎"がやってんだよ。こいつプロの大会で優勝しすぎて、今出禁扱いされてんだぜ」「ぷっ」 突然アスタが飲んでいた水を噴き出しそうになった。「きったねぇな、人の出禁で笑うんじゃねぇ」「アス
Last Updated: 2025-08-07
Chapter: 100. 紅囲
 男湯から上がると、「あ、出てきました」「やっほー、ルイ兄」 いつの間にか、ニイナとノノもここに来ていた。女子4人でアイスを食べている。「ここのアイスドーナッツ、甘さ控えめでおいしいわ。男三人衆も食べる?」「せっかくだし、頂こうかな」「僕も貰います!」 ユキの誘いに、アスタとカイが釣られていく。「ルイは食べないの?」「さっき食べた分で腹いっぱいだわ」 俺は近くのマッサージチェアに座り、目を瞑ろうとすると、こそこそとノノが来た。「最後に会ったのって、10年前くらい? ルイ兄とユキ姉が小5で自分は小2、あの時は大きく見えたなぁ」「急に引っ越して行きやがって」「しょうがないじゃん~、急に離婚だのなんだのってさ、バカ親父に付いていく事になっちゃったもん」「すっげぇ嫌だよな、子供の時の離婚って。ある程度大きくなってくれば、それがなんでなのかは理解し始めるんだけど」「うん。その問題とユキ姉の口癖が重なってさ、反抗期の口の悪さヤバかった」「今は?」「⋯⋯また少し戻ってんだよね。ELに選ばれなくてさ、選ばれたヤツらは私たちを見下しているようで、クソ腹が立ってたから。だから自分がA.ELになれた時、やっと見返せるなってなった。まずは周りに舐められないようにしようって。でもそれ、ELのヤツらと同じような事しちゃってたんだなって、ユキ姉たちが来たおかげで気付けた」「ちゃんと気付けるなんて、大きくなったなぁ」「ん~、"胸の大きさ"はユキ姉といい勝負?」「"そこの大きさ"じゃねぇよ」「ちょっと揉んどく? 今ならバレないよ!」「ばーか、妹みたいなお前にそんな事できねぇよ」「(⋯⋯好きだったんだけどなぁ、ルイ兄の事)」「は!?」 あ、あいつ!? 耳元で囁いた後、ノノはあっちに行ってしまった。「もう1個食~べよ!」「それ、私が残してたのに!」「ユキ姉が遅いからだよ~!」 それからもノノは、ちらちらとジト目でこっちを見てきた。 昔のようにじゃれてきただけだと、自分に言い聞かせ、あえて視線をそらす。 こんな時は目を瞑ればいい、ノノは俺の慌てる素振りを見たいだけなんだ⋯⋯ しばらくして、金星ドーナッツ部屋へと戻って来た俺は、ベッドへと寝っ転がった。 やっと一人になれたぞ、人で玩具のように遊びやがって⋯⋯結局、ここが一番落ち着くな。 
Last Updated: 2025-07-26
Chapter: 99. 混浴
 30階に着くと、そこには"金の宇宙?"が広がっていた。さっきの受付ロビーと雰囲気から全く違い、その壁には金のドーナッツが銀河を漂っている。 そんな訳分からない場所には、2種類のドアだけがあった。一人部屋と四人部屋、俺たちはこっち側だ。 ⋯⋯なぁ、これボス部屋じゃないよな⋯⋯? もう、そうにしか見えないぞこれ。 "金のウロボロスドーナッツ型のドア?"とでも言えばいいのだろうか、よく分からない謎のモノの前に俺たちは立っている。 横の女子二人は興奮冷めやらぬ状況。この後、本当にボス戦が始まったら、こいつらは一体どうなっちまうんだ。「⋯⋯それじゃ、開けるぞ」「うん!」「はい!」 期待した目で二人が見ている。 どんなのが待っているのか⋯⋯ゆっくり開けると⋯⋯ ― 黄白色のモコモコした壁、天井には大きな金星ドーナッツ風の埋め込み照明、さらに金星ドーナッツの模様がたくさん入った床やベッドや冷蔵庫等「サンプル通りね! いいじゃない!」「わ~い♪ 金星ドーナッツだぁ~!」 ユキとヒナはベッドへと突っ伏した。その勢いで、二人のピンク色のパンツが見えたのは黙っとこう。そんな短いスカート履いてるのに、そんな事する方が悪い。「そういやヒナって、肋骨4本ヒビいってたのに、元気なの凄いな」「あー、かなりの劇薬を飲みましてぇ」「劇薬?」「"3週間効く痛み止め"を飲んだんです。副作用に、効き目が切れた後に1週間寝てしまうらしいんですけど」「はぁ!? 1週間!?」 ヒナはその薬を取り出した。真っ黒の液体が半分飲んであり、中心に横線で"ココマデ"とある。「⋯⋯こいつを1回分飲んだのか」「はい」「そうするしか、あの時は方法が⋯⋯」 ユキがヒナの背中をさすりながら言う。 俺がいなかったせいで、ヒナがこんなのを飲むはめに⋯⋯ この副作用をどうにかする方法はもう無いのか? 効き目は凄いが、ヒナの身体に相当な負担を掛けているはず。 ⋯⋯くそ、調べても何もいい情報は無い 副作用の始まりが20日ほど先と考えて、それまでに全てを終わらせないといけないかもしれない。ヒナ無しでは相当キツいだろう上に、1週間見守り続けるのも容易ではない。 ⋯⋯そこまでが、俺たちが動ける最終リミットと考えるべきか「俺が不甲斐ないせいで⋯⋯ごめん。その副作用が始まる前に、全てを終
Last Updated: 2025-07-21
Chapter: 98. 金星
 ラウンジから出て、第2ターミナル直結ホテルへ向かおうとした時だった。「こんなとこにいやがったっ! 何置いて行ってやがるっ!」 まさかのシンヤがいた。「あ、起きたのか」「あ、じゃねぇ! 声掛けろよ! 夜飯一緒に行く約束だったろ!?」「いや、めっちゃ気持ち良さそうにしてたから、邪魔したら悪いかなって」「なんでだよ!? ⋯⋯おい、もしかして、二人と飯食った帰りじゃねぇだろうな!?」「あ、うん」「あ、じゃねぇ!! 一人で食って来いってか!?」「悪かったって。あっちにある"スーパーファーストクラスラウンジ"ってとこ使ってみろよ。一人でも充分楽しいから。なぁ、ユキ? ヒナ?」 隣にいるユキとヒナが頷く。「なかなか入れないと思う、あんなところ。行っておいでよ」「シンヤさん! 是非行ってみてください!」 満足そうな顔で言う女子二人。「⋯⋯この輪の中に俺がいないっておかしいだろ!?」「まぁそう怒んな、明日行こうぜ明日。この休みの間の飯代は全部払ってやるから」 俺の言葉に、シンヤが大きく深呼吸した。「⋯⋯今日の分もか?」「今日の分も」「⋯⋯どれだけ高いモン食ってもか?」「いいよ。好きなだけ豪遊してこい」「⋯⋯後で文句言うんじゃねぇぞぉ?」 そう言い残し、少し笑顔に変わったシンヤは、"スーパーファーストクラスラウンジ"へと向かって行った。 あの顔、絶対とんでもない量食おうとしてるだろ、高いやつばかりで。まぁ全然いいんだけど、こうなるだろうと思ってたし。 さっき飯代と言ったが、金掛かるものは全部俺が出すつもりだ。こんな金持ってても使わないしな、200億も。 そもそも、頑張った皆のおかげで貯まったもの。皆で好きに使って欲しい。 そして俺たち三人はというと、改めて第2ターミナル直結の新しいホテルへと向かった。 1階の"あのドーナッツ模様のドア"の先だな。某有名ドーナッツ店が経営しているっていう、ちょっと楽しみになってきた。 そういや、アスタとカイはもうホテルで寝てるだろうか? 上に"珍しい温泉"あるらしいんだけど、一緒に行かないかな。「ねぇヒナ、今日泊まるとこ、"リアルドーナッツ温泉"っていうのがあるの知ってる?」 お、ユキも把握済みらしい。「え、なにそれ!?」「この後行くけど、行く?」「行く行く~!」 ヒナは調べながら
Last Updated: 2025-07-20
Chapter: 97. 三人
「なぁ、もうこのままでもいんじゃね?」「だな」 シンヤに返事すると、誰かの手が頭に触れた。目を開けると、俺の頭を撫でるユキが立っていた。隣に座るシンヤは、寝たまま"睡眠空旅"をまだ満喫している。「(⋯⋯何やってんだ)」「(そろそろご飯行きたいなーって)」 どんな呼びかけ方だよ、それ。他にも体験中の人がいるため、俺たちは小声で話す。ってか、今何時だ? ⋯⋯深夜の1時!? 時間を見ると、≪2030.09.27 AM 01:12≫になっていた。小一時間だけ体験してから飯に行こう思っていたら、ありえないくらい経っていた。 睡眠空旅、終わってんな⋯⋯やり始めたら時間が一瞬で溶けちまう。寝てるのに、空を飛んでる臨場感、いろんなゲームの先行体験、さらには周りを歩いてるだけでも様々な景色を楽しめる。 これが無料で出来るのはレベルが高すぎる、やる人が多い訳だ。 ⋯⋯シンヤはこのまま放っとこう「(んじゃ、行くか)」「(シンヤ君はいいの?)」「(腹減ったらくるだろ)」 バレないようにこっそり立ち、ユキと機内から出ようとすると、「(あ、ニイナとノノがいる。いつ来たんだろ)」「(なんちゅう顔して寝てんだ)」 二人が頭を合わせるようにしながら、口を開けて寝ていた。 もうただの仲良しじゃん。もちろん起こすような事はしない。 第2ターミナル内へと戻ってくると、こんな時間でもかなりの人が往来していた。 この流れを見るだけで、"現実の羽田空港"にいるんだと実感する。 ≪二蝶万物≫の非渋谷から帰って来たあの時、ユキは泣き続けていた。皆に心配されていたが、疲れが溜まってただけと適当にごまかしていた。 その理由は"俺だけ"しか知らない。あの"違う渋谷"で一緒にいた俺だけしか⋯⋯ 肉体的にも精神的にも休んだ方がいいと思い、明日明後日はここに泊まる予定にしている。二日くらい休んだっていいんだ、焦るのもよくない。「せっかくだし、一番いいラウンジ行ってみる?」 こんな澄ました顔で言ってきているが、さっきまで泣きじゃくってたんだよなぁ。腫れた目はもう引いてるっぽいが。 二人で国際線NJAスーパーファーストクラスラウンジへとやってきた。どうやらここは無料ではなく、"新経済対策後の累計収入額の多さ"に応じて、入れるかどうか決まっているらしい。そのように入口横に大きく書
Last Updated: 2025-07-19
Chapter: 96. 十二
 ※この話以降は【三船ルイの視点】となります 静かな風が辺りを包んだ。巨大な紫月がこの渋谷スカイを照らし始めると、あの時の事が蘇った。何も出来ず、こいつに殺された、あの時の事が。あんなに何も出来ない事は初めてだった。 自慢じゃないが、俺は一度も負けた事が無かった。ARやXRは、VRと違ってリアルの繊細な動きと判断が物を言う。ただ鍛えればいい、ただ慣れればいい、その時代は終わり、AIを使って常に最新の動きと対策を研究し、独自の動きへと、自分のAIへフィルターをかける必要がある。肌に合っていたのがこの環境だった。 こんな意味不明な経済対策が始まった時、その経験がこんなに活きるなんて、人生何があるか分からないと思った。でも、最期はこいつと会って、今までの経験全てを否定されたかのようだった。 遥か先を行った見た事無い動き、5年の歳月はあまりに大きさな差を生んでいた。 でも、今は違う。一度見たのは脳裏に焼き付いている。死んでから何もかも失って、何もかも捨てて、その代わりのものを持ってきた。 それは誰でもない、ユキたちのおかげ。だから、またここに立っていられる。 次はもう無い。今度こそ、どちらかがこの世から消える。『⋯⋯』 ヤツの両手に銃剣が握られた。このヘリポート上へと散る、0と∞、白と黒の時間粒子。"真の不死蝶"という存在が、辺りを震撼させる。 白空羽田空港の時のように、話してかけてくれそうにない。アドバイスもくれそうにない。俺を本気で殺すという意志だけが、そこには立っている。 ヤツの背中から七色蝶の羽根が広がると、ヤツは一瞬で俺へと迫って来た。お互いの銃剣が激しくぶつかった時、俺の銃剣から"新たな粒子"が舞う。 "前と違う異変"を察知したのか、ヤツが動きを変えようとする。その背には、薄っすらと浮かぶショウカさんが目を瞑り、ヤツを包んでいた。 ショウカさん、そこで見てるんだろ? 俺が代わりに持ってきた、この"全虚無限涅槃蝶の銃剣"で、あんたらを連れて帰るからな。「ルイ⋯⋯!!」 ユキの叫ぶ声が後方から伝う。「大丈夫だ。手に持ってる"それ"、任せたからな⋯⋯!」 ユキが持つ、あの"白黒カプセル"。それをどうするのか、全てユキに委ねている。 けど、そんな他の事を考える暇は今無い。目で認識出来ない攻防が続く中、死んで得た"コレ"が正しいのか
Last Updated: 2025-07-15
異常のダイバーシティ

異常のダイバーシティ

― 2030年、AI総理が誕生して激変した大阪  受験が迫る高3のザイは、最近梅田に出来たばかりの新大阪大学へとオープンキャンパスに来ていた。    解剖医兼外科医の一人娘スアと、大学構内を見て回っている途中、ある人物がいるのを見かける。  それは、先日ここに来ていたとされる同級生二人と、数日前に突然行方不明になったという、大阪府知事の日岡知事だった。  後を付けてみると、【ProtoNeLT ONLY】と書かれた謎の場所へ入って行き、自分たちもこっそり入ってみる事にする。  そこには、謎の人型最新AIの"ProtoNeLT"が多数設置されており、さっき見かけた3人も含まれていた。  翌日、その違和感から全てが始まる⋯⋯
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Chapter: 99. 警告≪Warning/Sentence≫
 各々の足元から、"見た事無い不思議なカード"が浮かび上がり、薄暗い室内に不気味な輝きを乱反射させる。 「なぁ、これを取って出たら始まっちまうんだよな?」  言いながら、ケンが俺たちの顔を伺うと―― 「まぁ、24時間ありゃどうにかなるだろッ!」  そして、真っ先に"CDK専用DKO入室カード"を手に取った。 「⋯⋯やる事はこれまでと変わらないはずさ。またこの黒いパンフレットの霧が晴れて示された場所へ、向かうだけだよ」  謎に説得力のあるアマが、次にカードを握る。  ただ、アマの言った"霧が晴れて示された場所"は、未だ出てきてはいない。 「それもそうか。どうせ帰る選択肢はねぇんだし、行きましょうよ、エンナ嬢ッ!」 「え、えぇ、そうね」  ケンの言葉に乗せられ、今度はエンナ先輩が取ると、合わせるようにしてモアとスアもカードを拾う。  残ったのは、俺とウサネッコだけだった。 「なんでお前らは取らないんだよ?」  上半身を器用に動かし、準備万端の様子のケンが、俺とウサネッコへと一言放つ。  別に、俺は特段理由があるわけではなかった。  ただ、なぜかじっとしているウサネッコに、違和感があったからだ。  そんなウサネッコが、妙な感じで呟いた。 「⋯⋯ちょっと待つウニャ。これに書かれている"CDK専用DKO入室"が"何のことで何処なのか"、今調査中なんだウニャ」  ずっと調べてくれていたらしい。  でも、そんなにすぐ出てこない場所って事か? 「んなもんしなくたっていいだろ。どうせこっから出りゃ、このパンフレットに出てくんだからよ。ザイも早く取って行くぞ」  ⋯⋯そうだよな、またいつもみたいに出てくるよな  ケンに急かされるがままに、取ろうとした瞬間だった。  突然、カード上に変な一文が浮かんだのだ。 【このカードを持ったまま退室すると、あなただけ死ぬ可能性が100%です。それでもよろしいですか?】   な、なんだよこれ⋯⋯?  え、これってみんな表示されたのか?  一旦顔を上げると、それぞれが嘘のように平然とした顔をしている。  適当に脅されているだけで気にしすぎか⋯⋯? 「う~ん。これだけ探しても分からないなんて、今回ばかりは、ケン選手に従ってやるしかないウニャねぇ」 「嫌々やるみたいな態度取ってんじゃねえぞ、AIだろ
Last Updated: 2026-08-20
Chapter: 98. 屋城≪CastleTop≫
 広いエレベーター内に短い静寂が訪れ、ふとスアの方から口を開く。 「ごめんね、私のせいで遅くなっちゃって」  申し訳なさそうな彼女だったが、誰だって目の前で知り合いが死に逝く様を見せられれば、あんな風になるに決まってる。  むしろ変なのは俺だ。  今までのせいで慣れてしまっているのか、もう人間じゃなくなっているのか、その感覚すらあるのか怪しい。 「みんな待ってるかな、私たちのこと」 「だとしても、ウサネッコがウニャウニャ言って時間稼いでるよ」 「ふっ、なぁにそれ」  ついさっきまで泣いてたスアが笑いだす。  もう悲観することは無さそうな感じだ。 「にしても、"この道頓堀城の中が実はこんな場所がだった"なんて、気付ける訳ないよね。ゲームみたいに突然入れ替わって現れたし」 「こうなる前に、エンナ先輩とモアとウサネッコとさ、スアは入って行ったけど、元々の中はどんな感じだったんだ?」  俺が聞くと、彼女は考える素振りをし、ちょっと言いにくそうにしながらこう言った。 「簡単に言っちゃうと、エロい感じ?」  あぁ、やっぱそういう雰囲気。  当初見た通り、外観のラブホテル仕様のコンセプトを、中でも保っているのかもしれない。  人間はそういった見た目の方が興奮しやすい、とAIも結論を出したって事なのだろう。  そういえば、スアはさっきまで9Kに操られていた訳だが、この感じだとその間の記憶はなさそうに見える。  目覚めたらいきなりドア外へと、戻って来ていたって感じなんだろうか?  スアが分かりそうな部分のみ聞いてみると、次のように話してくれた。 「なんか急に頭がぼーっとしてさ、気付いたらザイたちがいる入り口に戻ってた。で、横見たらいきなりリンカが⋯⋯」  どうやら俺の想像通りらしい。  考える余裕も無く、急に大井さんのアレだもんな⋯⋯。  久しぶりに再会したのに、話したのはたった1分も無く、救う方法すら無かった。  でも違う場所から期待してくれている、コウキも。  エレベーターが着く頃、夜の道頓堀を360度一望出来る一室が広がり、"小さな赤のミサイル新幹線?と青のミサイル新幹線?"が上部で旋回し続けているようだった。  【道頓堀唯一の屋城駅(おくじょうえき)】と書かれた立体看板式駅名標のようなのもある。  これが"道頓堀立体看板新
Last Updated: 2026-08-13
Chapter: 97. 敵討≪RetaliatioN≫
「ねぇザイ、なんでリンカはこうなったの⋯⋯?」  正直に言うべきなんだろうか。  曖昧にしても仕方ないと思った俺は、"9Kの持つかいじゅうで撃たれた"と話した。 「あそこにある"人骨"って、そういうこと⋯⋯?」 「⋯⋯スアの思ってる通り、9Kも大井さんのを撃たれた結果があれだ」 「なんでアイツがここに入って来たの? アイツのせいでリンカは⋯⋯アイツさえ来なかったら⋯⋯まだ話し合いで解決できたかもしれないのに」  俺だって知りたい、9Kが急に来た理由を。  想像でしかないが、アイツも何かで知って狙いに来たのかもしれない、ここに置いてある"否定理由の一つ"を。  結局は、アイツも集めている一人だった、と思うしかない。  そもそもの話、9Kについてはまだ知らない事が多すぎる。  ウサネッコと契約成立時に教えて貰った内容だけでは、どうも説明付かない事ばかり。  まず、あの"マントを羽織った銃"には、以下の能力があった事になる。 ・謎の泡立つ液体を放出して殺させて"回避延長"  ・別で"赤と青の軌跡を放つ弾丸"を装填可能  ・スアとモアとエンナ先輩を"操れる能力?"  ・大井さんの身体を"毎秒凹ませるほどの継続スクラップ能力?" こんなに多種多様なのを持っていたって事なのか?  その前に、"9K"という名前にも違和感がある。  この"9K"という文字並びに意味があるとするなら、あの"マント羽織る銃"にちなんで付けた可能性だってあるかもしれない。  "K"が英単語の頭文字だとして、多いとか変化とか、その辺の意味から取ってそうでもある。  一つ思い浮かんだのは"kaleidoscope"だ。  "kaleidoscope"は万華鏡という意味もあるが、"常に変わるとか複雑なパターン"とかの意味も含んでいる。  もしそうだとするなら、"9 Kaleidoscope"と仮定すると、本当は"能力が9個あった"という事実に繋がる。  だからなのか、アイツがあれほど行動的でありつつ、容易に自身で作った宗教団体を見捨てたのは⋯⋯。  実は、"9個の隠し能力があるかいじゅう"だったからこそ、他に無い自信を持てたと言う訳だろう。  まだ確信を得るには早いが、納得できるレベルにはなっていると思われる。  思考の世界から一瞬で戻り、今一度スアの話へ返
Last Updated: 2026-08-07
Chapter: 96. 級友≪ClassMate≫
「ん、あれ」  呟いたスアがゆっくり目を開く。  続くように、エンナ先輩とモアが目を覚ましていった。 「おぉ!? 3人起きたウニャか!?」  一番に驚きながらも、無事を確認するようにうろうろするウサネッコ。  けど、なんでこのタイミングで女子3人は元に戻れた⋯⋯?  ⋯⋯まさか、9Kが何か細工をしていたってことなのか? 「ね、私のせいじゃないって分かったでしょ、キーくん」  考える暇も無く、ふと呟いた大井さんの一言で現実に戻される。  即座に振り向き、彼女へと海銃を構え直したが、様子が先程と打って変わっていた。 「そんな事しなくても、ほら、"いきなり来た変なヤツ"のせいで、こんなんなっちゃったんだけど」  そう言いながら、今度は大井さんの身体がおかしくなっていった。  "ガシャン"という軋む音と共に、なんと身体が凹みだしたのだ。  まるで"見えない機械の手で所々握りつぶされている"かのような、彼女の節々が毎秒ずつ凹まされていく。 「リンカッ!!」  少しずつ潰されていく彼女へと、真っ先にスアが駆け寄ろうとすると―― 「来るなッ! スア、あんたは"こっち側"じゃないでしょ?」 「いまさら何言ってるのッ!? このままじゃ死んじゃうんだよッ!!?」 「見れば分かるってそんなの。ほんと、病院の娘ってお人好しでウザい。ね、キーくん」  皮肉そうにしながらも、どこか最期の優しさを感じるような大井さんの表情。  俺の妄想でしかないけど、きっと心の底から俺たちを憎んでいる訳では無かったはずだ。 「ねぇッ!! どうすればいいの!? 私じゃどうしようも⋯⋯誰か止める方法無いのッ!!? 止めてあげてよッ!!!」  俺たちは首を横に振るしかできない、ウサネッコまでも。  大井さんは、女子3人を"ProtoNeLTと性交させようと加担した一人"な上、コウキと同様で相応の事を仕出かしてきただろう。  同情はしない、それでも⋯⋯。  でも⋯⋯ッ!! 「なんで⋯⋯なんでなんだよ!!! 大井さんも!! コウキも⋯⋯ッ!! 勝手に訳分けんねぇ事するだけして⋯⋯人生から逃げんじゃねぇよッ!!」  やるせない思いを吐き出し、もはや八つ当たりのように大井さんへとぶつける。  もう自分が何言ったかもよく分かってない。  ただ思っただけ、それだけしかない
Last Updated: 2026-08-06
Chapter: 95. 板挟≪Stuck≫
 大井さんの銃に対し、コウキと対峙した時のような衝撃が走る。  またあの通天閣前の時のように、殺り合わなければならないのだろうか、と考えていた時。  不意に、自分の背中に"冷たい何か"がかけられたのを感じたのだ。 「さぁ、これで彼らを殺していいですよ。"あなたがProtoNeLTである"と言うのであれば」  突如として背後からする声に、俺は鳥肌が立った。  この声の正体は、間違いなく"アイツ"だったからだ。 「な、なんでここに9Kがいるウニャか!?」  ウサネッコの反応そのままだった、俺の脳内も。  いつの間にコイツが城内に入って来て⋯⋯。  目の前の大井さんは、顔をしかめ始めた。 「⋯⋯なにこの赤青カボチャ野郎。知らないあんたに指示される覚えないんだけど」  俺とアマとケン、その3人を板挟みにしながら、大井さんと9Kの会話が始まった。  なんとも異様すぎる状況で、余計にこの場から動けそうにない。  一歩たりとも動けば、大井さんか9Kにいつ撃たれるか分からないからだ。  俺だけだったらどうにかなる可能性はあるが、ケンとアマはおおそらく無事では済まないだろう。 「指示などではありません。あなたがしようとしている事、そのままをすれば良いと助言しているだけに過ぎません」  俺の真後ろにいる9Kからは、大井さんに怯える雰囲気を一つも感じず、まるでここにいるのが当たり前かのような喋り様。  見えなくたって分かる、大阪駅地下であれだけ追い詰めたはずだったのに、それでもやられて逃げられたのだから。 「助言だのなんだの、あんたみたいなのに急に言われるのが嫌なんだけど? さっさと出て行ってくれる?」  徐々に大井さんがキレていくのが見て取れる。  これ以上刺激しないでくれと、俺たちは願うしか出来ない。  それかあわよくば、女子3人が元に戻り、9Kをどうにかしてくれたらいいのだが、現実はそうはなってくれない。 「それは受け入れられません。この真ん中の彼が"未だにこっち側"と判定されるのかどうか、ここで見たいのですから」  9Kの言葉に、大井さんは首を傾げる。 「⋯⋯はぁ? 何意味分かんない事言ってんの?」 「なんでもありません、こっちの話なので。ですよね、喜志可ザイ君」  笑みを含むような口調の9Kに、俺の全身から冷や汗が垂れる。
Last Updated: 2026-08-04
Chapter: 94. 大井≪Rinka/Ooi≫
 俺は黄金展望台の正面にぶっ倒れ込んだ。もう何も考えたく無いほどに、頭がショートしている。  タイムリミットはというと、【00:01.54】となったままで止まっている。  さっき書いた解答によって、どうにか"正解ライン"に入ったことで、顔認証と指紋認証が完了した。  失敗ラインと正解ラインがあり、失敗ラインへと針が振り切っていれば、全てが終わっていた。  完璧な解答が何かは分からないままに、自分の出した答えに自信を持つしかなかったというわけだ。  金髪ビリケンの真横には新しく、【イーリス・マザー構想は実は成功していて21年間その成功体は隠れて生き続けている】と、先程の俺の解答が深く刻まれている。  言わずもがな、これが真実かどうか定かではない。  とにかく"前提を全て壊した答え"だろうと思ったのだ、あれだけ周到に"あの実験"を用意している様子からして。  もし、ヤツらAI側がイーリスマザー構想を失敗だったと思い込んでいるなら、あんな公な場所で秘密裏に実験なんてリスクを取らず、どこかの隔離施設でこそこそと成功に近付ける実験をするはずだ。  だって、これまでずっと教科書には、"イーリス・マザー構想は失敗の跡だけが残っていた"って書かれてきたのだから。  先入観で失敗だったんだと擦り込まれている、俺たち世代全員。 「さて、これで3人はやっと⋯⋯」  考えるのをやめ、呟きながらゆっくり立ち上がり、通天閣5Fから新世界の夜景を見つめる。  その少し後、なんとアマからいきなり通話が掛かってきた。  どうやら、解答時だけネットが使えないようになっていただけで、もう使えるようになっているみたいだ。 「ザイ君、間に合ったみたいだね」 「いろいろあったが、何とかな。3人はもちろん帰ってきてるよな?」 「それが、中から出て来たのはいいんだけど⋯⋯」  アマの言葉の羽切が悪く、何故かいい答えが返ってきそうな雰囲気を感じない。  と思っていると、瞬く間にこいつはこんな事を口にした。 「⋯⋯落ち着いて聞いて欲しい。今、僕とケン君は銃を突き付けられている。⋯⋯白神楽さんたちに」 「⋯⋯は⋯⋯?」  すると、突如として大井さんに通話が切り替わった。 「はい終了、キーくんとの話し合いはここまで」 「ちょ、おい、どういうことだ!? 約束した事はちゃんとや
Last Updated: 2026-02-05
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