"2030.06.01" 世界初のある事が日本にて行われた。 "最新型AIの総理大臣就任" 衝撃的ニュースから3か月後、"大学3年の三船ルイ"はやる事を終え、"幼馴染のユキ"と会って久しぶりに外食をしている時、『AI総理大臣は新たな経済対策を発表しました』という意味深な速報を目にする。 直後、"AIアンドロイドに人が食われて死ぬ"というありえない事件を目にした二人は、この新経済対策の"本当の恐怖"を知る事になる――。
View Moreこれに対して、人間側はどんな解答を用意すればいい? 何を提示すればこの状況を捲れる?
既に共生などという容易い言い訳では、どのAIも聞く耳は持たない上、アイツも納得はしない。なら、俺が出す答えは⋯⋯。今日受けるリモート講義はこれで終わり。展開されたARの画面を閉じ、玄関へと向かう。外に出ようとした瞬間、≪配達が完了しました≫とL.S.に簡易通知が走る。玄関ドアを開けた横、配達ドローンが仕事を終え、気持ちよさそうに飛ぼうとしている。置かれた箱の中に入っているのは、昨日買った服。
最近はほぼ全部の店でこうしてドローン配達をしてくれる。時間は24時間いつでも指定でき、少し多く払えば、買ったその日のうちにも届けてくれる。ほんと最近はいろんな場所でAI化が促進された。俺が知ってるのもほんの一部で、他にもいろんな場所でAI化されてるんだと思う。目の前で走ってる"コレ"だって、R.E.D.が総理に就く三ヵ月前は無かった。 そう思いながら、俺は止まっている"黒いコレ"に乗る。事前に指定した場所を送っているから、後は乗るだけって感じ。そんな無人自動運転タクシーに乗れるようになるのは、日本ではもう少し後になると思ったけど今では普通になっている、しかも格安。今までの運転手たちはどうなったのだろうか? 『ご利用ありがとうございました』という声がタクシー内から響く。料金も事前に支払っているため、降りる時もスムーズ。ちなみに、今や全部の車が無人自動運転化されている上に、事故もまだ聞いたことが無い。警察が暇になるほど事故は減少してるらしく、マンガやゲームで見てきた近未来化が異常に進んでる感がある。 秋葉原の大型複合施設M.I.O.に入ると、日曜だからか多くの人がいた。ネットではなく、リアルでしか手に入らない物を置いていたりと、店も手を尽くしてる。そして俺も、リアルでしか手に入らないモノがあるからここに来たんだけど。 今回発売された"UnRule"は初のL.S.専用ゲームで、XR技術を使った新感覚の非日常が東京でのみ楽しめると、あらゆる場所で告知されていた。まずは東京で様子を見て、規模を大きくしていくらしい。あれだけ告知はされてはいたが、映像は何も公開されておらず、まさかの日本政府開発とだけ知らされている。東京って物価も家賃も高いけど、その分こういった最新の事にすぐ触れられるのは利点だ。 なぜか知らないが、昨日はめっちゃ楽しみで興奮して寝られなかった。このゲームが叩かれまくるのか、それとも称賛されるのか、どっちにしても持っておくだけでなんか謎の価値はありそう。 10階のゲームコーナーへとさっそく行くと、そこには大量の人を捌いていく"現実離れした姿"がそこにはあった。近くに行って見てみると、人と相違無い対応をしており、中に誰か入っているんじゃないかとさえ思えてきた。これって本当にアンドロイドか⋯⋯? 疑問に思って凝視を続けていると、奥の方から赤い何かが近付いてきた。それは目の前で止まった途端、 『三船ルイ様ですね。お待ちしておりました』 突然お辞儀をされ、つい俺も「えっと⋯⋯? どうも」と言ってしまった。他のそれとは違う雰囲気を醸し出す、この赤い人型アンドロイド。周りを見ても、他に赤なんて一体も存在しない。 なんで俺だけこれが対応するんだ⋯⋯? ってか、一瞬で俺だと分かるのか!? 最近の認証システムって怖いな⋯⋯。『こちらにどうぞ』
そう言うと、赤いのは"事前予約当選者専用の部屋"へと案内し始めた。どうやら、事前予約者はこっちらしい。適当に歩きながら、横目にあっち側を見てみると、"一般販売専用の部屋"に並んでる多くの人から、なんだアイツと言わんばかりの目を向けられていた。 俺ってただ事前予約しただけの人間だよな⋯⋯。なんであんなに睨まれるんだ⋯⋯。 気になりながらも事前予約当選者専用の部屋へと入ると、俺と赤いの以外誰もおらず、奥に一つの赤い冷蔵庫のような大型装置がぽつりと置かれていた。 『三船ルイ様、ここにご所持のL.S.を外して置いて頂ければと思います』「あ、男子全員いる。おはよ」 男4人で朝食を取っていると、ユキを筆頭に女子たちが2階バイキングへと降りて来た。 ヒナとノノはまだ眠そうな顔をしている。「何食べてるの? それ」「ん、これは"赤毛和牛筋カレードーナッツ"」「え、めっちゃ美味しそう。私もそれ欲しいな」「んなら、これやるよ。来たら欲しがると思って、多めに取っといたから」「さっすがルイ。隣、座っていい?」「いいよ」 持っていったカレードーナッツ2個を半分ずつにし、4人でそれぞれシェアしているようだ。1個が結構大きいため、女子にはそれくらいの方がいいかもしれない。「ん~! こんな美味しいカレードーナッツ、食べた事無いわ!」「だろぉ!? これマジで最高だよなぁ!」「シンヤ君に言ってない」「は!? 朝からひどっ!?」 二人のやり取りに、アスタとカイが笑っている。 朝から騒がしいなこいつら。「シン君ってさ、新崎さんにそんな対応取られてるんだね」「んだよ、二人でそんな笑いやがって。ルイにはクソ甘々なくせに、俺にはいつもこうなんだよなぁ」「まぁ、ルイ君相手は仕方ないよ」「おいおい、あのアスタが諦めんのかぁ?」「だって、彼は"超宇宙人"だから、"蝶"だけに、ね」 ⋯⋯昨日の俺と同じ事言ってるぞ カレードーナッツを食べ終わった女子4人は、次のドーナツを取りに行った。ただニイナだけは、一瞬俺の方を向いてニヤりとした。 ⋯⋯あいつ、俺が逃げたから勝った気になってやがる バカラサバイバルで負けたのがよっぽど悔しかったらしい。 そんなに本気で勝負する必要あったか⋯⋯?「ニイナとなんかあった?」「いいや、バカラで遊んでただけ」「え、違法賭博?」「んなわけねぇだろ」「ルイ君がしてくれたら面白いんだけどなぁ」「お前弁護士やめろ」 俺とアスタの間に、シンヤが割り込んできた。「おい! 弁護士やめたら俺とAR部門プロやろうぜ! おめぇならすぐなれるからよぉ!」「それも面白そうだね」「そのプロを雇ってる"事務所の社長が俺"だろうが」「そうなんだよなぁ。このルイとかいう"一番終わってる野郎"がやってんだよ。こいつプロの大会で優勝しすぎて、今出禁扱いされてんだぜ」「ぷっ」 突然アスタが飲んでいた水を噴き出しそうになった。「きったねぇな、人の出禁で笑うんじゃねぇ」「アス
男湯から上がると、「あ、出てきました」「やっほー、ルイ兄」 いつの間にか、ニイナとノノもここに来ていた。女子4人でアイスを食べている。「ここのアイスドーナッツ、甘さ控えめでおいしいわ。男三人衆も食べる?」「せっかくだし、頂こうかな」「僕も貰います!」 ユキの誘いに、アスタとカイが釣られていく。「ルイは食べないの?」「さっき食べた分で腹いっぱいだわ」 俺は近くのマッサージチェアに座り、目を瞑ろうとすると、こそこそとノノが来た。「最後に会ったのって、10年前くらい? ルイ兄とユキ姉が小5で自分は小2、あの時は大きく見えたなぁ」「急に引っ越して行きやがって」「しょうがないじゃん~、急に離婚だのなんだのってさ、バカ親父に付いていく事になっちゃったもん」「すっげぇ嫌だよな、子供の時の離婚って。ある程度大きくなってくれば、それがなんでなのかは理解し始めるんだけど」「うん。その問題とユキ姉の口癖が重なってさ、反抗期の口の悪さヤバかった」「今は?」「⋯⋯また少し戻ってんだよね。ELに選ばれなくてさ、選ばれたヤツらは私たちを見下しているようで、クソ腹が立ってたから。だから自分がA.ELになれた時、やっと見返せるなってなった。まずは周りに舐められないようにしようって。でもそれ、ELのヤツらと同じような事しちゃってたんだなって、ユキ姉たちが来たおかげで気付けた」「ちゃんと気付けるなんて、大きくなったなぁ」「ん~、"胸の大きさ"はユキ姉といい勝負?」「"そこの大きさ"じゃねぇよ」「ちょっと揉んどく? 今ならバレないよ!」「ばーか、妹みたいなお前にそんな事できねぇよ」「(⋯⋯好きだったんだけどなぁ、ルイ兄の事)」「は!?」 あ、あいつ!? 耳元で囁いた後、ノノはあっちに行ってしまった。「もう1個食~べよ!」「それ、私が残してたのに!」「ユキ姉が遅いからだよ~!」 それからもノノは、ちらちらとジト目でこっちを見てきた。 昔のようにじゃれてきただけだと、自分に言い聞かせ、あえて視線をそらす。 こんな時は目を瞑ればいい、ノノは俺の慌てる素振りを見たいだけなんだ⋯⋯ しばらくして、金星ドーナッツ部屋へと戻って来た俺は、ベッドへと寝っ転がった。 やっと一人になれたぞ、人で玩具のように遊びやがって⋯⋯結局、ここが一番落ち着くな。
30階に着くと、そこには"金の宇宙?"が広がっていた。さっきの受付ロビーと雰囲気から全く違い、その壁には金のドーナッツが銀河を漂っている。 そんな訳分からない場所には、2種類のドアだけがあった。一人部屋と四人部屋、俺たちはこっち側だ。 ⋯⋯なぁ、これボス部屋じゃないよな⋯⋯? もう、そうにしか見えないぞこれ。 "金のウロボロスドーナッツ型のドア?"とでも言えばいいのだろうか、よく分からない謎のモノの前に俺たちは立っている。 横の女子二人は興奮冷めやらぬ状況。この後、本当にボス戦が始まったら、こいつらは一体どうなっちまうんだ。「⋯⋯それじゃ、開けるぞ」「うん!」「はい!」 期待した目で二人が見ている。 どんなのが待っているのか⋯⋯ゆっくり開けると⋯⋯ ― 黄白色のモコモコした壁、天井には大きな金星ドーナッツ風の埋め込み照明、さらに金星ドーナッツの模様がたくさん入った床やベッドや冷蔵庫等「サンプル通りね! いいじゃない!」「わ~い♪ 金星ドーナッツだぁ~!」 ユキとヒナはベッドへと突っ伏した。その勢いで、二人のピンク色のパンツが見えたのは黙っとこう。そんな短いスカート履いてるのに、そんな事する方が悪い。「そういやヒナって、肋骨4本ヒビいってたのに、元気なの凄いな」「あー、かなりの劇薬を飲みましてぇ」「劇薬?」「"3週間効く痛み止め"を飲んだんです。副作用に、効き目が切れた後に1週間寝てしまうらしいんですけど」「はぁ!? 1週間!?」 ヒナはその薬を取り出した。真っ黒の液体が半分飲んであり、中心に横線で"ココマデ"とある。「⋯⋯こいつを1回分飲んだのか」「はい」「そうするしか、あの時は方法が⋯⋯」 ユキがヒナの背中をさすりながら言う。 俺がいなかったせいで、ヒナがこんなのを飲むはめに⋯⋯ この副作用をどうにかする方法はもう無いのか? 効き目は凄いが、ヒナの身体に相当な負担を掛けているはず。 ⋯⋯くそ、調べても何もいい情報は無い 副作用の始まりが20日ほど先と考えて、それまでに全てを終わらせないといけないかもしれない。ヒナ無しでは相当キツいだろう上に、1週間見守り続けるのも容易ではない。 ⋯⋯そこまでが、俺たちが動ける最終リミットと考えるべきか「俺が不甲斐ないせいで⋯⋯ごめん。その副作用が始まる前に、全てを終
ラウンジから出て、第2ターミナル直結ホテルへ向かおうとした時だった。「こんなとこにいやがったっ! 何置いて行ってやがるっ!」 まさかのシンヤがいた。「あ、起きたのか」「あ、じゃねぇ! 声掛けろよ! 夜飯一緒に行く約束だったろ!?」「いや、めっちゃ気持ち良さそうにしてたから、邪魔したら悪いかなって」「なんでだよ!? ⋯⋯おい、もしかして、二人と飯食った帰りじゃねぇだろうな!?」「あ、うん」「あ、じゃねぇ!! 一人で食って来いってか!?」「悪かったって。あっちにある"スーパーファーストクラスラウンジ"ってとこ使ってみろよ。一人でも充分楽しいから。なぁ、ユキ? ヒナ?」 隣にいるユキとヒナが頷く。「なかなか入れないと思う、あんなところ。行っておいでよ」「シンヤさん! 是非行ってみてください!」 満足そうな顔で言う女子二人。「⋯⋯この輪の中に俺がいないっておかしいだろ!?」「まぁそう怒んな、明日行こうぜ明日。この休みの間の飯代は全部払ってやるから」 俺の言葉に、シンヤが大きく深呼吸した。「⋯⋯今日の分もか?」「今日の分も」「⋯⋯どれだけ高いモン食ってもか?」「いいよ。好きなだけ豪遊してこい」「⋯⋯後で文句言うんじゃねぇぞぉ?」 そう言い残し、少し笑顔に変わったシンヤは、"スーパーファーストクラスラウンジ"へと向かって行った。 あの顔、絶対とんでもない量食おうとしてるだろ、高いやつばかりで。まぁ全然いいんだけど、こうなるだろうと思ってたし。 さっき飯代と言ったが、金掛かるものは全部俺が出すつもりだ。こんな金持ってても使わないしな、200億も。 そもそも、頑張った皆のおかげで貯まったもの。皆で好きに使って欲しい。 そして俺たち三人はというと、改めて第2ターミナル直結の新しいホテルへと向かった。 1階の"あのドーナッツ模様のドア"の先だな。某有名ドーナッツ店が経営しているっていう、ちょっと楽しみになってきた。 そういや、アスタとカイはもうホテルで寝てるだろうか? 上に"珍しい温泉"あるらしいんだけど、一緒に行かないかな。「ねぇヒナ、今日泊まるとこ、"リアルドーナッツ温泉"っていうのがあるの知ってる?」 お、ユキも把握済みらしい。「え、なにそれ!?」「この後行くけど、行く?」「行く行く~!」 ヒナは調べながら
「なぁ、もうこのままでもいんじゃね?」「だな」 シンヤに返事すると、誰かの手が頭に触れた。目を開けると、俺の頭を撫でるユキが立っていた。隣に座るシンヤは、寝たまま"睡眠空旅"をまだ満喫している。「(⋯⋯何やってんだ)」「(そろそろご飯行きたいなーって)」 どんな呼びかけ方だよ、それ。他にも体験中の人がいるため、俺たちは小声で話す。ってか、今何時だ? ⋯⋯深夜の1時!? 時間を見ると、≪2030.09.27 AM 01:12≫になっていた。小一時間だけ体験してから飯に行こう思っていたら、ありえないくらい経っていた。 睡眠空旅、終わってんな⋯⋯やり始めたら時間が一瞬で溶けちまう。寝てるのに、空を飛んでる臨場感、いろんなゲームの先行体験、さらには周りを歩いてるだけでも様々な景色を楽しめる。 これが無料で出来るのはレベルが高すぎる、やる人が多い訳だ。 ⋯⋯シンヤはこのまま放っとこう「(んじゃ、行くか)」「(シンヤ君はいいの?)」「(腹減ったらくるだろ)」 バレないようにこっそり立ち、ユキと機内から出ようとすると、「(あ、ニイナとノノがいる。いつ来たんだろ)」「(なんちゅう顔して寝てんだ)」 二人が頭を合わせるようにしながら、口を開けて寝ていた。 もうただの仲良しじゃん。もちろん起こすような事はしない。 第2ターミナル内へと戻ってくると、こんな時間でもかなりの人が往来していた。 この流れを見るだけで、"現実の羽田空港"にいるんだと実感する。 ≪二蝶万物≫の非渋谷から帰って来たあの時、ユキは泣き続けていた。皆に心配されていたが、疲れが溜まってただけと適当にごまかしていた。 その理由は"俺だけ"しか知らない。あの"違う渋谷"で一緒にいた俺だけしか⋯⋯ 肉体的にも精神的にも休んだ方がいいと思い、明日明後日はここに泊まる予定にしている。二日くらい休んだっていいんだ、焦るのもよくない。「せっかくだし、一番いいラウンジ行ってみる?」 こんな澄ました顔で言ってきているが、さっきまで泣きじゃくってたんだよなぁ。腫れた目はもう引いてるっぽいが。 二人で国際線NJAスーパーファーストクラスラウンジへとやってきた。どうやらここは無料ではなく、"新経済対策後の累計収入額の多さ"に応じて、入れるかどうか決まっているらしい。そのように入口横に大きく書
※この話以降は【三船ルイの視点】となります 静かな風が辺りを包んだ。巨大な紫月がこの渋谷スカイを照らし始めると、あの時の事が蘇った。何も出来ず、こいつに殺された、あの時の事が。あんなに何も出来ない事は初めてだった。 自慢じゃないが、俺は一度も負けた事が無かった。ARやXRは、VRと違ってリアルの繊細な動きと判断が物を言う。ただ鍛えればいい、ただ慣れればいい、その時代は終わり、AIを使って常に最新の動きと対策を研究し、独自の動きへと、自分のAIへフィルターをかける必要がある。肌に合っていたのがこの環境だった。 こんな意味不明な経済対策が始まった時、その経験がこんなに活きるなんて、人生何があるか分からないと思った。でも、最期はこいつと会って、今までの経験全てを否定されたかのようだった。 遥か先を行った見た事無い動き、5年の歳月はあまりに大きさな差を生んでいた。 でも、今は違う。一度見たのは脳裏に焼き付いている。死んでから何もかも失って、何もかも捨てて、その代わりのものを持ってきた。 それは誰でもない、ユキたちのおかげ。だから、またここに立っていられる。 次はもう無い。今度こそ、どちらかがこの世から消える。『⋯⋯』 ヤツの両手に銃剣が握られた。このヘリポート上へと散る、0と∞、白と黒の時間粒子。"真の不死蝶"という存在が、辺りを震撼させる。 白空羽田空港の時のように、話してかけてくれそうにない。アドバイスもくれそうにない。俺を本気で殺すという意志だけが、そこには立っている。 ヤツの背中から七色蝶の羽根が広がると、ヤツは一瞬で俺へと迫って来た。お互いの銃剣が激しくぶつかった時、俺の銃剣から"新たな粒子"が舞う。 "前と違う異変"を察知したのか、ヤツが動きを変えようとする。その背には、薄っすらと浮かぶショウカさんが目を瞑り、ヤツを包んでいた。 ショウカさん、そこで見てるんだろ? 俺が代わりに持ってきた、この"全虚無限涅槃蝶の銃剣"で、あんたらを連れて帰るからな。「ルイ⋯⋯!!」 ユキの叫ぶ声が後方から伝う。「大丈夫だ。手に持ってる"それ"、任せたからな⋯⋯!」 ユキが持つ、あの"白黒カプセル"。それをどうするのか、全てユキに委ねている。 けど、そんな他の事を考える暇は今無い。目で認識出来ない攻防が続く中、死んで得た"コレ"が正しいのか
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