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雛瀬智美
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雛瀬智美の小説

極上Dr.の甘美な誘惑―罪深き深愛の果て-

極上Dr.の甘美な誘惑―罪深き深愛の果て-

TL現代強いヒロインCEO・社長・御曹司年の差仲直り
甘く狂おしく罪深く。年上男性×年下少女のちょっと危険な駆け引き。 お互いの気持ちに気づかないまま、求め合う二人の濃厚なラブストーリー。 ☆3つの作品は描写が濃厚です(R18)。未成年の「喫煙」「飲酒」などの表現あり。 第一話冒頭↓ その瞬間、はっと目が合った。栗色の大きな瞳が瞬きをしていた。  足をがくんとつまづかせバランスを崩す体が、スローモーション  のようにゆっくりと流れている。
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Chapter: 第8話「透明な雫」
 夢を見ていた。 心の奥底で願っていた。 平凡で飽きてしまいそうな日常から、 連れ出してくれる誰かに出会うこと。 その人にズタズタに引き裂かれ、ボロボロになるまで 何もかも壊されること。 退屈していたの。 痺れるくらいの刺激を欲するほどに。 愚かしい夢なんだと自分でも気づいてた。 それでも私はあの日常から脱出したかったんだ。 戻れない場所で、変わりたかった。 地味で目立たない自分から。 今までの自分とは別の自分になりたかったの。 自分ひとりで動き出せば、誰も傷つけやしなかったのかもしれない。それでも……。 本当に偶然の出会いだったのかな? 都合の良い思い込みかもしれないけれど、 私は用意された出会いだったように感じている。 はっと目が合った瞬間、足を滑らせて、 気付いた時には彼の腕の中で。 あの夜、抱かれて何かを失くし、新しい物を手に入れた。 永遠にも似た長い時間に思えたあの夜に……。「……青」 せいは別の読み方をすると「あお」。 その名の通り水のように青くて深くて、掴めない。 瞳の色も神秘的なブルーだと、いつかの夜明けに知った。 彼は偽りの色を外し、真実の色で私を見ていた。 いつか、教えて欲しいなと願う。 彼の海を私は泳ぎきることができない。 何度飛沫をあげて溺れても、なお、彷徨い続けている。 好きになるのに理由はいらなくて、 嫌いになる理由も浮かばなかった。 欲しい物をくれないかわりに、あなたはどこまでも優しい。 ねえ会いたい。 声を聞きたい。 またひとつに溶けあいたい。一瞬の交わりだとしても。 待つことだけが私の意思表示。 今日もあなたを想って自分を飾る。 薄い赤のマニキュアと、 爪先にペディキュアを塗り、彼に愛される女になる。 少しでも彼に近づきたいからもっと大人の女になりたい。 昔から「かわいい」なんて言われるより、 爪の形を「綺麗」と言われた方が嬉しかった。 だから自分でも自慢できるくらい 綺麗な爪を持ちたくて、磨いた。 かわいいも嬉しいけれど、素直に喜べなかったわ。 こんな私のどこが? といつも思ってたから。 ずっと長い間、暗くて内向的で、自信なかった 本当はただ自分を全て出してなくて抑えていただけだったのだけど……。 まだあなたに見せてい
最終更新日: 2026-11-05
Chapter: 第7話「Real Time Lovers」
 シーツに残る温もりに微笑んだ。 朝まで共に過ごせたことを改めて実感する。誘われて旅行に来てよかった。 嬉しすぎて、じんわりと心に温かい気持ちが広がる。 温もりを確かめたくて頬を寄せると 力強い腕がそこにはあった。 こうして抱きしめられていると安心する。 いつもはベッドから離れて衣服を身につける青をぼんやりと見ているだけだった。「沙矢」 名を呼ばれる。「……どうしたの?」 恐る恐る聞く。 一緒に帰るのだと分かっていても置いて行かれそうな恐怖がある。一度ホテルの部屋に放って置かれたのはトラウマだった。「カーテンを開けてくれないか?」 昨夜は彼が閉めたカーテンを今度は私が開ける……。「ええ」 するりとシーツを肌に巻きつけると寝台から立ち上がる。 カーテンを開けると朝焼けに照らされた海が見えた。 眩しくて、目を細めて景色を眺める。 彼を振り返ると、サイドテーブルに置かれたシガーケースから 煙草を取り出しているようだ。 私と視線を交わし、煙草に火をつける。 この姿を見るのは別れの瞬間と決まっていた。 眠ったフリをして薄い瞼であなたの仕草を見つめていたの。 今日はそうではない。 共に朝を迎え、一緒にいるということを実感している。 彼は煙草を口にくわえ、シーツを巻つけて立ち上がる。 昨日から二人で泊まっているホテルの部屋は。 互いの部屋にいるよりも、二人きりに感じる。 ここには誰もいないから。 私達を邪魔する人なんて誰一人として……。 他には誰もいないと知っはているけれど、 彼がどこを見つめているのは分からないままだ。 隣に立つ彼にもたれかかると、抱きすくめられた。 もうすぐで、この時は終る。帰ったらまた一人に戻る。 儚い泡沫の夢は、あっという間に消えてなくなるのだ。 時間を止めて共にいられたら。 悲しみを抑え、願いをかけるように彼の手を握る。 心のどこかでは危険な恋とわかっていた。 手を引かれ甘い罠の中に引きずり込まれ、 這いずりだす事もかなわないけれど。 痛む胸は、治まることを知らず、 行き場のない想いを持て余し、これからどこへゆけばいい? 彷徨った先には何があるの。 瞳の奥が熱くなる。(泣いては駄目。折角の二人の旅行なのよ) 言い聞かせても、涙は溢れ出す。   彼に抱きしめられ
最終更新日: 2026-11-04
Chapter: 第6話「遠き海へ」
 初めての一泊二日の二人の旅行。 彼と一緒というだけで心が躍り、ときめく。 私たちは少しずつ変り始めてる。 いつも朝になれば切ない別れが来る。 穏やかにそばを離れられたことなんて一度もなかった。 一泊二日とはいえ時間を気にせず一日中一緒にいられることは、とても幸せだ。 心はまだ届かなくても私はまだ彼に見切りをつけられてはいない。 普段は言ってくれなくてもベッドにいる時は愛してると言ってくれる。 赤い花をたくさん咲かせてくれる。 私は青と会うまで、何も知らなかった。 結婚するまで誰かと体の関係を持つことはないと思ってた。 周囲の友達にも固いとか古風とかよく言われたほどだ。 助手席から運転している彼の横顔を見つめ、微笑む。 海も夜景もたくさん見たい。 想い出は消えることなく胸に残る。 首にかけたネックレスをぎゅっと握り締めた。 彼がくれたプレゼントが力をくれる。 車はトンネルを抜け、海が見え始める。 窓を開け、無邪気に身を乗り出した。「きれい」 ルームミラーに映る彼は、笑っている。「ホテルに荷物置いたらすぐに海を見に行こうか」 涼しげな声音が頬を撫でる。 こんな瞬間がとてもかけがえなくて愛しい。 そう感じていた。 海鳥達の鳴き声。 車はスピードを上げて、真っ直ぐ進んでゆく。 彼の器用なハンドルさばきにもみとれてしまう。 車をバックさせる時の真剣な眼差しも何もかも好きだった。 洗練された身のこなしと、女性扱いの上手さ。 何もかもできすぎている男性。 一ミリの隙も見せなくて、こちらに何かを気取らせるようなミスは 犯さない。計算なのかもしれない。 何も悟らせない彼は常に完璧だった。 聞かれたら答えてはくれるが、彼から教えてくれることは無い。 悲しみで押しつぶされそうになる胸を手のひらで押さえ景色を眺めた。 何て美しいのか。 海の青はとても心をくすぐる景色だ。 その時、車が停まった。 目の前には大きなホテル。 こんな立派な所に止まるのは初めてだった。 ガチャリ。 彼が、車を降りて助手席の扉を開ける。「ありがとう」 トランクから二人分の荷物を降ろすと、「いこうか」 彼の後ろをついて歩き、ホテルに入っていく。 立派な高級ホテルだが、個人経営で従業員の数が 少な目のホテル。俺は宿泊先を選
最終更新日: 2026-11-04
Chapter: 番外編「始まりの日」(第一話ヒロイン視点)
 彼女は帰ろうかと思った矢先、階段で足を踏み外した。 普段はしないようなことをするなんてよほど 疲れていたんだと結論づけたかったのだけれど、 そこで終わることはできなかった。 彼女を助けようと階段を上ってきた青年も巻き込んで 共に堕ちたのだ。 どこまでも。 この出会いが永遠となることをまだこの時二人は、知らなかったのだけれど、 非現実的な出会いはまさしく運命だった。 彼女が忘れ物を取りに来なければ彼と出会うことはなかったのだから。  どうやら痛みは無いようだ。 身じろぎしても起き上がれないのは強い力で 抱え込まれているからだと動転した意識の中でやっと気づく。 起き上がろうと体を動かせばまた腕の力が強くなったようだ。 体が強張る。 きっとこの腕の持ち主が助けてくれたんだ。 広い腕の中は気が狂いそうなくらい温かくて。「ごめんなさい……」 自分の不注意で巻き込んでしまったことが申し訳なかった。「支えてもらってありがとうございます。お怪我ありませんか? 」「ううっ」 聞こえた呻き声にびくっとした。 どこか痛いのだろうか。どうしよう。「胸が痛い」「う……本当にごめんなさい」 頭を動かして彼の方を見つめる。 きっと今泣き出しそうな顔してる。 悪いのは私で彼は助けてくれたのに。「君こそ大丈夫か?」 いい人だ。 ふっと微笑を浮かべてこちらを安心させてくれようとしてる。 起き上がれないまま、背中から腕が回ってきて抱きしめられる。 決して強引ではない柔らかい仕草。 公衆の面前で地面に横たわったまま抱きしめられてるなんて。 今更ながら恥ずかしい。「ええ。もう大丈夫です」 彼の腕を剥がし立ち上がろうとした時強く抱きすくめられた。 再び彼に寄りかかった状態になる。「えっ……」「送っていこうか? 」「……バスで帰りますから」 高鳴る鼓動。 間近に見た彼の顔が信じられないくらい綺麗だったから驚いて、 一瞬これが現実ではないような錯覚を起こす。「気にしなくていい」「……じゃあ」「私の家でお茶でも飲んでいきますか? 」「ええ」 私はその時、彼の口の端が上がったことに気づかなかった。 駐車場まで二人で歩く。 高い背を時折見上げては、息を吐いた。 無言で誘導する人は私の手をぎゅっと握っていた。 指先
最終更新日: 2026-11-04
Chapter: 第5話「強がり」
 受話器越しに聞こえてきた声音に、ぞくりと身を震わせた。 息を飲みこんで、呼吸を整える。 彼が漏らした呟きを頭の中で繰り返す。『……来週まで待てない。今すぐ会いたい』 平静を保つのに必死になった。 切羽詰まった声音が、心の琴線を掻きたてる。『沙矢…… ? 』 どうやら、思案する時間が長かったようだ。 怪訝そうに聞き返す声に、『私も会いたい……』 どうにか告げた。涙声になっているのは気づかれたかな。『今から、迎えに行く』 ぷつり、途切れた電話。 ツー、ツーという音だけが響いている。 呆然と立ち尽くしていた。 あんな風に求められるなんて、これが現実かどうか分からなくなる。 この部屋で、抱かれてから、まだ日は経ってはいない。 再会してから、未来も見えないまま関係を重ねていた。 さっさと着替えることにした。 シフォン生地の白いワンピースをクローゼットから取り出し、鏡の前で体にあてる。 こんな私が白い服を着るなんてと苦笑する。 青への純潔を守っている証。何色にも染まらない意思表示だった。スカートの部分にフリルがついていて可愛らしい服だ。 この間見せたら気に入ってくれたので、これにしようと思った。 ハンドバッグを手に、そわそわと部屋を歩き始めた。 約束は破らないと思うが、二人の関係のせいで、完全に信じきることはできなかった。 チャイムの音がし、慌てて開けると彼がいた。 どこか疲れた表情をしているが、衣服の乱れなどは何一つない。 すっきりとダークグレーのスーツを着こなし、同系色のネクタイをしめている。 童顔というわけではなく、年相応に大人びているのだが、 歳の差を意識させない人だと、今更ながら気づく。 会社にいる彼と同じ年齢くらいの男性と比べても、若々しい。独特の雰囲気を醸し出していた。「……どうかしたのか。行くぞ」 手を差し出され、掴むと引っ張られるように外へ出た。 慌てて鍵をかけると、青の側に立つ。 掴まれた手首に少し力がこもっていた。 それでも歩幅は合わせてくれていて、ゆっくりと隣りを歩くことができた。 横顔はとても切なくて、見ていると胸がしめつけられる。 車に乗り込んで、一息つくと、青が唐突に話しかけてきた。「……今日は、あまり気づかってやれないかもしれない」 どういう意味か分かってしまい、
最終更新日: 2026-11-04
Chapter: 第四話「本能」
 不安、焦燥、ひたすら愛しいという気持ち。 全部が彼の為のもの。 藤城青、年上の美丈夫。 不条理な関係しか二人の間には存在しなくても、私は自分の気持ちを捨てるつもりはない。 言葉にして伝えることは、できないけれど。 二人で出掛ける機会がまたあるなんて夢のようだ。 忙しい彼は私なんかのために時間を割いてくれている。 これから、二人で紅茶の専門店に行く予定なのだ。「……青」 名を呟くと切なさで胸が苦くなる。 誕生日でもないのに贈ってくれたプレゼント。 青のマンションの部屋で、思い出がまたひとつ紡がれた。 中央に三連のピンクベージュ色のパールがついたネックレスは 洗練された大人の女性がつけるものだ。 嬉しくて心が跳ね躍った。 今日は鎖骨がのぞくブラウスを着て、ネックレスをつけている。 ドアのノックの音が微かに聞こえ、ぱたぱたと走っていく。「……迎えに来てくれてありがとう」 恐る恐る見上げたら、指が伸びてきた。 髪に触れられて、どきどきと心臓が暴れ始めた。「ネックレスつけてくれているんだな」「うん……私にはもったいないくらいだけど」 あなたがくれたものだから。 最後の言葉は胸にしまい、はにかんだ。「そんなことない。今日の服装にも似合っている」 つくりものめいた無表情に淡々とした言葉。 瞳がやさしく細められたのは気のせいだろうか。「行こう」 差し出された手に、手を重ね、後ろに続いた。 駐車場につくと、先に彼が車に乗り込み中から助手席のドアを開けてくれた。 喜々として微笑んだ私は、 隣りに座る彼が緩く眼を伏せたのを見て表情を変えた。 シートベルトをつけたのを確認すると、ゆっくりと車が動き出した。 車窓から流れる風景を眺め、沈黙の時間をやり過ごした。 一人ではしゃいで、興醒めさせてしまったら嫌だ。 あの日から一週間後の休日に会えたことは、何にも代えがたい僥倖。 それを台無しにしたくはない。スムーズに駐車スペースに止まった車に、もう着いてしまったのかと愕然とする。 バッグを握りしめていると、外からドアが開けられた。 彼が先を歩き、ついていく。 隣を歩いたって誰に見とがめられるわけではないのに自然と背中を見るのを選んでいた。 広くて逞しい背中。長身痩躯でスタイルも抜群だと思う。 薄茶色の髪は日が当た
最終更新日: 2026-11-03
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