ログイン甘く狂おしく罪深く。年上男性×年下少女のちょっと危険な駆け引き。 お互いの気持ちに気づかないまま、求め合う二人の濃厚なラブストーリー。 ☆3つの作品は描写が濃厚です(R18)。未成年の「喫煙」「飲酒」などの表現あり。 第一話冒頭↓ その瞬間、はっと目が合った。栗色の大きな瞳が瞬きをしていた。 足をがくんとつまづかせバランスを崩す体が、スローモーション のようにゆっくりと流れている。
もっと見るシーツに残る温もりに微笑んだ。 朝まで共に過ごせたことを改めて実感する。誘われて旅行に来てよかった。 嬉しすぎて、じんわりと心に温かい気持ちが広がる。 温もりを確かめたくて頬を寄せると 力強い腕がそこにはあった。 こうして抱きしめられていると安心する。 いつもはベッドから離れて衣服を身につける青をぼんやりと見ているだけだった。「沙矢」 名を呼ばれる。「……どうしたの?」 恐る恐る聞く。 一緒に帰るのだと分かっていても置いて行かれそうな恐怖がある。一度ホテルの部屋に放って置かれたのはトラウマだった。「カーテンを開けてくれないか?」 昨夜は彼が閉めたカーテンを今度は私が開ける……。「ええ」 するりとシーツを肌に巻きつけると寝台から立ち上がる。 カーテンを開けると朝焼けに照らされた海が見えた。 眩しくて、目を細めて景色を眺める。 彼を振り返ると、サイドテーブルに置かれたシガーケースから 煙草を取り出しているようだ。 私と視線を交わし、煙草に火をつける。 この姿を見るのは別れの瞬間と決まっていた。 眠ったフリをして薄い瞼であなたの仕草を見つめていたの。 今日はそうではない。 共に朝を迎え、一緒にいるということを実感している。 彼は煙草を口にくわえ、シーツを巻つけて立ち上がる。 昨日から二人で泊まっているホテルの部屋は。 互いの部屋にいるよりも、二人きりに感じる。 ここには誰もいないから。 私達を邪魔する人なんて誰一人として……。 他には誰もいないと知っはているけれど、 彼がどこを見つめているのは分からないままだ。 隣に立つ彼にもたれかかると、抱きすくめられた。 もうすぐで、この時は終る。帰ったらまた一人に戻る。 儚い泡沫の夢は、あっという間に消えてなくなるのだ。 時間を止めて共にいられたら。 悲しみを抑え、願いをかけるように彼の手を握る。 心のどこかでは危険な恋とわかっていた。 手を引かれ甘い罠の中に引きずり込まれ、 這いずりだす事もかなわないけれど。 痛む胸は、治まることを知らず、 行き場のない想いを持て余し、これからどこへゆけばいい? 彷徨った先には何があるの。 瞳の奥が熱くなる。(泣いては駄目。折角の二人の旅行なのよ) 言い聞かせても、涙は溢れ出す。 彼に抱きしめられ
初めての一泊二日の二人の旅行。 彼と一緒というだけで心が躍り、ときめく。 私たちは少しずつ変り始めてる。 いつも朝になれば切ない別れが来る。 穏やかにそばを離れられたことなんて一度もなかった。 一泊二日とはいえ時間を気にせず一日中一緒にいられることは、とても幸せだ。 心はまだ届かなくても私はまだ彼に見切りをつけられてはいない。 普段は言ってくれなくてもベッドにいる時は愛してると言ってくれる。 赤い花をたくさん咲かせてくれる。 私は青と会うまで、何も知らなかった。 結婚するまで誰かと体の関係を持つことはないと思ってた。 周囲の友達にも固いとか古風とかよく言われたほどだ。 助手席から運転している彼の横顔を見つめ、微笑む。 海も夜景もたくさん見たい。 想い出は消えることなく胸に残る。 首にかけたネックレスをぎゅっと握り締めた。 彼がくれたプレゼントが力をくれる。 車はトンネルを抜け、海が見え始める。 窓を開け、無邪気に身を乗り出した。「きれい」 ルームミラーに映る彼は、笑っている。「ホテルに荷物置いたらすぐに海を見に行こうか」 涼しげな声音が頬を撫でる。 こんな瞬間がとてもかけがえなくて愛しい。 そう感じていた。 海鳥達の鳴き声。 車はスピードを上げて、真っ直ぐ進んでゆく。 彼の器用なハンドルさばきにもみとれてしまう。 車をバックさせる時の真剣な眼差しも何もかも好きだった。 洗練された身のこなしと、女性扱いの上手さ。 何もかもできすぎている男性。 一ミリの隙も見せなくて、こちらに何かを気取らせるようなミスは 犯さない。計算なのかもしれない。 何も悟らせない彼は常に完璧だった。 聞かれたら答えてはくれるが、彼から教えてくれることは無い。 悲しみで押しつぶされそうになる胸を手のひらで押さえ景色を眺めた。 何て美しいのか。 海の青はとても心をくすぐる景色だ。 その時、車が停まった。 目の前には大きなホテル。 こんな立派な所に止まるのは初めてだった。 ガチャリ。 彼が、車を降りて助手席の扉を開ける。「ありがとう」 トランクから二人分の荷物を降ろすと、「いこうか」 彼の後ろをついて歩き、ホテルに入っていく。 立派な高級ホテルだが、個人経営で従業員の数が 少な目のホテル。俺は宿泊先を選
彼女は帰ろうかと思った矢先、階段で足を踏み外した。 普段はしないようなことをするなんてよほど 疲れていたんだと結論づけたかったのだけれど、 そこで終わることはできなかった。 彼女を助けようと階段を上ってきた青年も巻き込んで 共に堕ちたのだ。 どこまでも。 この出会いが永遠となることをまだこの時二人は、知らなかったのだけれど、 非現実的な出会いはまさしく運命だった。 彼女が忘れ物を取りに来なければ彼と出会うことはなかったのだから。 どうやら痛みは無いようだ。 身じろぎしても起き上がれないのは強い力で 抱え込まれているからだと動転した意識の中でやっと気づく。 起き上がろうと体を動かせばまた腕の力が強くなったようだ。 体が強張る。 きっとこの腕の持ち主が助けてくれたんだ。 広い腕の中は気が狂いそうなくらい温かくて。「ごめんなさい……」 自分の不注意で巻き込んでしまったことが申し訳なかった。「支えてもらってありがとうございます。お怪我ありませんか? 」「ううっ」 聞こえた呻き声にびくっとした。 どこか痛いのだろうか。どうしよう。「胸が痛い」「う……本当にごめんなさい」 頭を動かして彼の方を見つめる。 きっと今泣き出しそうな顔してる。 悪いのは私で彼は助けてくれたのに。「君こそ大丈夫か?」 いい人だ。 ふっと微笑を浮かべてこちらを安心させてくれようとしてる。 起き上がれないまま、背中から腕が回ってきて抱きしめられる。 決して強引ではない柔らかい仕草。 公衆の面前で地面に横たわったまま抱きしめられてるなんて。 今更ながら恥ずかしい。「ええ。もう大丈夫です」 彼の腕を剥がし立ち上がろうとした時強く抱きすくめられた。 再び彼に寄りかかった状態になる。「えっ……」「送っていこうか? 」「……バスで帰りますから」 高鳴る鼓動。 間近に見た彼の顔が信じられないくらい綺麗だったから驚いて、 一瞬これが現実ではないような錯覚を起こす。「気にしなくていい」「……じゃあ」「私の家でお茶でも飲んでいきますか? 」「ええ」 私はその時、彼の口の端が上がったことに気づかなかった。 駐車場まで二人で歩く。 高い背を時折見上げては、息を吐いた。 無言で誘導する人は私の手をぎゅっと握っていた。 指先
受話器越しに聞こえてきた声音に、ぞくりと身を震わせた。 息を飲みこんで、呼吸を整える。 彼が漏らした呟きを頭の中で繰り返す。『……来週まで待てない。今すぐ会いたい』 平静を保つのに必死になった。 切羽詰まった声音が、心の琴線を掻きたてる。『沙矢…… ? 』 どうやら、思案する時間が長かったようだ。 怪訝そうに聞き返す声に、『私も会いたい……』 どうにか告げた。涙声になっているのは気づかれたかな。『今から、迎えに行く』 ぷつり、途切れた電話。 ツー、ツーという音だけが響いている。 呆然と立ち尽くしていた。 あんな風に求められるなんて、これが現実かどうか分からなくなる。 この部屋で、抱かれてから、まだ日は経ってはいない。 再会してから、未来も見えないまま関係を重ねていた。 さっさと着替えることにした。 シフォン生地の白いワンピースをクローゼットから取り出し、鏡の前で体にあてる。 こんな私が白い服を着るなんてと苦笑する。 青への純潔を守っている証。何色にも染まらない意思表示だった。スカートの部分にフリルがついていて可愛らしい服だ。 この間見せたら気に入ってくれたので、これにしようと思った。 ハンドバッグを手に、そわそわと部屋を歩き始めた。 約束は破らないと思うが、二人の関係のせいで、完全に信じきることはできなかった。 チャイムの音がし、慌てて開けると彼がいた。 どこか疲れた表情をしているが、衣服の乱れなどは何一つない。 すっきりとダークグレーのスーツを着こなし、同系色のネクタイをしめている。 童顔というわけではなく、年相応に大人びているのだが、 歳の差を意識させない人だと、今更ながら気づく。 会社にいる彼と同じ年齢くらいの男性と比べても、若々しい。独特の雰囲気を醸し出していた。「……どうかしたのか。行くぞ」 手を差し出され、掴むと引っ張られるように外へ出た。 慌てて鍵をかけると、青の側に立つ。 掴まれた手首に少し力がこもっていた。 それでも歩幅は合わせてくれていて、ゆっくりと隣りを歩くことができた。 横顔はとても切なくて、見ていると胸がしめつけられる。 車に乗り込んで、一息つくと、青が唐突に話しかけてきた。「……今日は、あまり気づかってやれないかもしれない」 どういう意味か分かってしまい、