Chapter: 第203話 北殿の部屋「シーシの髪飾りも可愛いね。それはルビーなのかな?」 「はい! あの店、サファイアだけじゃなくて、いろんな宝石がありましたよ!」 「エマ様がお選びになった髪留めも、スゥからミナに渡してありますわ~」 「ミナ、すっごく喜んでましたよ~!」 「良かった。ミナと仲良くなれたかな?」 「はいっ! とっても可愛い子です~」 「あたし達と同じで、エマ様のことが大好きなのですわ~!」 シーシとスースは、にっこり笑う。 三人が仲良くなれたと分かり、エマも嬉しくなった。 「貴女達、おしゃべりはそこまで」 ナタリナが注意するように声を掛けた。 「エマ様の食事が冷めてしまうわ」 「そうでした!」 「エマ様、すぐ準備しますね!」 「そんなに急がなくても、大丈夫だよ」 エマは首を振って答える。 (僕が見せてって言っちゃったから。二人のせいじゃないのに) けど、シーシもスースも、まるで気にしていないようで、手際よく脚つきの木製トレイを置き、その上に器を並べていく。 その間に、ナタリナがエマに小さな木箱を渡してくれた。 「エマ様。こちらは、エマ様の物ですわ」 「僕の?」 受け取った木箱を開けると、中には小さいルビーのペンダントが入っていた。 「あっ! これ、あの店で買ったやつだよね?」 エマはパッと顔を輝かせて、ペンダントを手のひらに乗せる。爪留めのシンプルな形だが、澄んだ輝きを放つルビーに惹かれたのだ。 (ルシアンの瞳みたいに綺麗だから……よすがにしようと思っていたけど) エマは、そっとルシアンを振り向いた。 エマの焦がれた赤い瞳が、優しく微笑んでくれる。 「可愛いペンダントですね。どこで買ったのですか?」 「あ、えと……アズレーヌの街で、朝市に行ったときに見つけたんです。シーシとスースの髪飾りと同じお店です」 「そ
Last Updated: 2026-05-06
Chapter: 第202話 メイドの髪飾り 思い出の中では、サファイアベリーが多かったけど、ここではルシアンがメルベランを用意してくれていた。 「わあ! いいんですか?」 「もちろんです。どうぞ」 「ありがとうございます」 エマはニコニコしながら、メルベランを食べて、薬の苦味を忘れる。 エマの馬車旅の記憶は、食事と湯浴みだけで、それ以外は眠っているか、ウトウトしながらエマを抱っこするルシアンの鼓動を聞いていた。 そうしているうちに、いつの間にか王都に到着していたようだ。 エマが目覚めると、フカフカの大きなベッドで眠っていた。 「あれ? 馬車じゃない?」 見慣れない天蓋を不思議に思いながら起き上がると、そこが客間であることが分かった。白を基調にした客間は広々としていて、壁には淡い金の縁取りが施され、高級そうな調度品が飾られている。 「ここは……」 「エマ、起きたのですか?」 「あ、ルシアン様っ」 近くのソファーに座っていたルシアンが、パッと立ち上がり、エマの元に寄った。 ベッド横の椅子に腰掛けて、エマの顔を覗きこむ。 ルシアンは、上質なシャツにズボンを履いただけの装いで、ベストもジャケットも着ていない。室内着のようだが、ルシアンが身につけると、華やかに見えた。 「気分はどうですか? 痛むところはありませんか?」 「えと……大丈夫です」 エマは自分の体を見下ろした。身に馴染んだ法衣姿で、ここはもう王宮なのだろうと推測する。 「もう、王都に着いたのですか?」 「ええ。体調が戻ったようで安心しました。アズレーヌでは、貧血を起こして倒れたと聞き、驚きましたから」 「あっ……僕、貧血で……?」 「慣れない旅で、疲れていたようだと医師から伺いました。私もちょうど任務が終わったところだったので、王宮まで送っていくことにしたのですよ」 ルシアンの説明に、エマは頬を染めた。 道中は、なぜルシアンが一緒にいて
Last Updated: 2026-05-05
Chapter: 第201話 馬車の中「んぁぁっ、ァァ……ぃゃっ」 「そこはダメですよ」 エマが手を伸ばして、蕾から伸びた紐を掴もうとしている。 その手を押さえて、優しく咎めた。 「抜いてはいけません」 「ゃっ……んっ、イク……イきたいっ」 「ここを弄らなくても、イかせてあげますから」 ルシアンはエマの昂ぶりに手を添えて、ゆっくりと扱いた。 「ひゃぁぁんっ!」 「ほら、もうイったでしょう?」 「あぁっ! ぁんっ、もっと……ぁぁぁっ」 エマは背をのけぞらせて、ビクビクと震える。 その淫らな姿に理性を揺さぶられ、ルシアンは奥歯を噛みしめた。 (くッ……ダメだッ、エマをここで抱くわけにはいかないっ!) エマはまだ、ルシアンのものではない。 王族との婚約破棄が叶っても、エマの所有権はランダリエ王家にある。 (エマは、必ず私がもらい受けるッ! だからこそ、手を出す訳にはいかないッ) ルシアンは鋼の理性で耐え、エマを清めることに集中した。 エマのフェロモンに負けてしまわぬよう、静香石を抜かずに終わらせるつもりだ。 「ぁんっ、……ぁぁっ!」 「ほら、ここが好きでしたよね?」 「ひゃんっ、ぁ、っ、そこぉ……んぁぁっ」 布で乳首を優しく擦る。 塗られた媚薬がどこまで浸透しているか分からないが、できるだけ洗い落とすつもりだ。 「こんなに勃って……気持ちいいでしょう?」 「ぁっ、きもち、ぃっ、んぁっ、……はぁんっ」 乳首を指先でこねると、エマがイヤイヤと首を振る。 けれど、乳首はピンと尖り、エマは腰を揺らして自らの昂ぶりを扱いた。 「ァァッ……んぁっ、ぁぁ」 「エマ。可愛いですよ」 エマの手に重ねて、昂ぶりを扱く。 悪戯をするように、静香石を指で押すと、ビクンッと躰が跳ねた。 「ひゃぁっ……ぁぁんっ、ぁ
Last Updated: 2026-05-04
Chapter: 第200話 洗い流す「実は、先ほど報告があったのですが、ワイール伯爵の館に、王太子の補佐官が訪れたそうです」 「補佐官が? まだ伝令は出していないのだろう?」 「はい。第二王子がワイール領に潜伏しているのではないかと、調査に来られたそうです」 「王太子の補佐官ならば、この上ない適任だ。しかし、本物の補佐官かどうか確認しなければならない」 「それでしたら、聖樹様のメイドか護衛騎士に面通しをすれば問題ないかと。補佐官殿は、三日前まで聖樹様の公務に同行していたと仰っていました」 「そうだったのか。ならば、メイドの一人に頼もう。ニコラは、ここの護衛をしてもらわねばならぬ」 「かしこまりました。王太子殿下と、補佐官殿に文をしたためます」 「お前に任せる。確認は不要だ」 「御意」 ノエルは頭を下げると、すぐさま一階の書斎へ向かう。 本来なら、ルシアンが中身をあらためた後に使者を出すが、今はそんな余裕がなかった。 両腕に抱えたエマから、ほのかに甘い香りが漂ってくる。鎮静剤を飲ませ、エマも半分意識を失っているが、火照った躰はそのままだ。 「伯爵様。準備が整いました!」 「ああ。シーシ、お前には使いを頼みたい。詳細はノエルに聞いてくれ」 「はいっ」 「さあ、エマ様、伯爵様。こちらへ」 スースがルシアンたちを脱衣所に案内する。 簡易な長椅子があり、ルシアンは外套に包んだままのエマを、そっと横たわらせた。 「お手伝いいたします」 「エマには触れるな。私が介抱する」 「はい」 ルシアンはスースの手を借りて、腰から剣を外し、ブーツを脱いだ。ジャケットとベストを脱いだ。 着替えをしている間に、シーシがトレイに杯を載せて運んできた。 「伯爵様。ノエル殿から、こちらを召し上がるようにと言伝がありました」 「ああ、そうだったな。助かった」 ルシアンは礼を言って、杯の中身を飲み干す。
Last Updated: 2026-05-03
Chapter: 第199話 箝口令 ポニーテールにした髪を揺らして、エマを心配そうに見つめた。 「エマ様はご無事ですか!?」 「外傷はないが、良い状態とは言えぬ」 「っ……伯爵様、どうぞこちらへ!」 シーシは悲しげに眼を細め、感情を振り切るように、ルシアンを案内した。 すぐ近くに馬車が停まっており、御者席にはニコラが座っていた。 「伯爵様っ、早く!」 シーシに急かされ、馬車に乗り込む。 ニコラはすぐに馬車を走らせ、シーシはルシアンと反対側の席に座り、バスケットから水差しを取り出した。 「ナタリナ様から指示がございました。エマ様に、お水とお薬を」 「頼む」 「はい」 ルシアンはエマを抱きかかえたまま、膝の上に乗せる。エマの顔が見えるように外套をずらすと、シーシが水差しからゆっくりと水を飲ませた。 「んっ……ぁっ……っ」 喉が渇いていたのか、抵抗なく飲み始める。 シーシが用意したのはオメガ用の鎮静剤だった。以前にルシアンが分け与えたもので、粉薬だったはずだが、小瓶に入っている。 事前に水に溶かしてきたと言い、ナタリナの手際の良さに感心した。 ゆっくりエマに飲ませると、ようやく一息吐いた。 「エマの休める場所は見つかったのか?」 「はい。同じ宿を取れたので、そこに向かっています。エマ様も、同じ宿なら安心されるでしょう」 「そうだな」 「スースとノエル殿が、部屋を整えています。お食事も用意しているはずです」 「食事は後にしよう。まずは、湯浴みが先だ」 「かしこまりました。そのように手配します」 シーシは心得たと頷く。 「それから、エマについてだが……今回の誘拐については、箝口令を敷く。エマ本人にも伏せておくように」 「エマ様にも?」 「ああ。エマに何を聞かれても、疲れて眠っていたのだと答えろ。良いな?」 「はい。ですが、エマ様は納得されるでし
Last Updated: 2026-05-02
Chapter: 第198話 大義名分「勘違いしているようだが、貴様は王族ではない。配慮など一切無用。言葉が話せるならそれで十分……パトリック、猿ぐつわを」 「はっ」 パトリックは急いで、ドレイクに猿ぐつわを噛ませた。 脇腹と太ももにナイフが刺さったまま、ドレイクは言葉を封じられて、床に転がる。 それを見下ろしながら、ナタリナは楽しげに笑った。 「貴様は、意気地のないクズと違って、自死を選ぶことも厭わない。そう簡単に逃れられると思うな」 ナタリナは再び、サイドソードを抜いた。 照明にキラッと反射する剣先に、ドレイクが青ざめる。後ずさろうとするが、ナタリナはサイドソードを構えると、そのままドレイクの肩に突き刺した。 「ぐわぁぁぁーーッ!」 剣は肩を貫き、血がじわじわと滲む。 ドレイクは縛られたまま身をよじり、悲鳴を上げた。 だが、ナタリナは容赦しなかった。 サイドソードを突き刺したまま、グリグリと剣を回す。 「アアアッ! あぐぅぅっ……くっ……ぐぅぅ!」 ドレイクは激痛に身をよじった。猿ぐつわを噛まされ、痛みに涙を流しながらも、殺意のこもった眼でナタリナを睨みつける。 「まあ、威勢がいいこと」 「ぐぅッ……!」 ドレイクは額に脂汗を浮かべて、荒い息を吐き出した。 激痛に苦しむドレイクに、ナタリナはフフッと笑う。 太ももに刺さったナイフの柄を握ると、こちらも、わざと力を入れて奥へ押し込んだ。 「ぐわぁぁぁッ! あがぁっ……ぁ、ががぁぁ!」 ドレイクが激しくのたうち、涙を流しながら首を振る。 止めてくれと叫ぶことも許されず、激しく痙攣するだけだ。 「これしきの痛み、エマ様が味わった地獄には到底及ばない……尊き御方を傷つけた、当然の報い。己の犯した罪をよく理解して、悔い改めなさい」 「ああああっ! ぁぐぅぅッ……ぁ、はぁっ」 痛みにのたうつドレイクに、ナタリナはまだ容赦
Last Updated: 2026-05-01