Mag-log in神殿育ちの平民Ωであるエマは、婚約者の第二王子から虐待を受けていた。そんなある日、エマは隣国の伯爵・ルシアンに出会う。 長い銀髪に紅い瞳を持つルシアンは、誰もが見惚れるほど美しい青年だった。 ルシアンの優しさに、次第に心惹かれていくエマ。そしてルシアンもまた、健気で可憐なエマに恋心を抱くようになる。 だがエマが第二王子の婚約者である以上、この関係は許されない……。 不憫で健気なΩと、隣国の伯爵αの禁断ラブストーリー!
view more暖かな陽気に包まれた部屋で、エマはウトウトしていた。 揺り椅子に体を預け、冷えないようにウールのブランケットが掛けられている。 (……あれ?) 慣れ親しんだ匂いに、瞼を上げた。 視線の先に、陽に透ける銀の髪がきらきら光っている。 「ぁ……ルシアンさま?」 「エマ。起きたのですか?」 すぐ隣のソファーに座っていたルシアンが、本から顔を上げて微笑みかける。 エマが昼寝をしている側で、読書をしていたようだ。 「起こして下さればよかったのに」 「貴方の眠りを邪魔するわけにはいきませんから」 ルシアンは本をテーブルにおくと、ソファーから立ち上がって、エマの傍らに膝をつく。 ずれ落ちてしまったブランケットを、胸のあたりまで引き上げてくれた。 「寒くないですか?」 「ありがとうございます。でも、そんなに過保護にしなくても大丈夫ですよ」 「夫の務めですから」 ルシアンは柔らかな笑みを浮かべて、エマの頭を撫でる。 甘やかされてるなぁと思うけど、嬉しかった。 「……さっき、夢を見てました」 「どんな夢ですか?」 エマが呟くと、ルシアンが興味深そうに尋ねてくる。 「このお屋敷に来た日の夢です。ミシェル様と大公様、それから使用人の方たちから歓迎してもらって」 そして、ルシアンの番として、初めて結ばれた日。 「僕、本当にルシアン様の妻になれたんだって、嬉しかったです」 エマが答えると、ルシアンが優しい瞳で見つめてくる。 頬を撫でる手のひらが温かくて、うっとりした。 「私も、エマが妻になってくれて嬉しかったですよ」 「はいっ」 「これからも、ずっと貴方の側にいますから」 「はい」 エマが頷くと、扉をノックする音がした。 返事をするより先に、ガチャッと扉が開き、ひょこっと小さな頭が現れる。 廊下から、ナタリナの「お嬢様!」と咎める声
エマの唇を指先でなぞり、安心させるように頭を撫でた。 「んっ」 「貴方を抱いているのは、私です」 「はい……っ」 「私は、貴方の愛するアルファです。分かりますね?」 「っ、はい、ルシアンさま」 ルシアンの優しい手つきに、うっとりする。 大好きな人の声を聞くだけで、不安が消えていく。 (ルシアン様……僕の、旦那様) いま、エマの躰を愛してくれるのは、ルシアンだ。 ここにはもう、エマを傷つける者はいない。 エマが過去に傷つくたび、ルシアンは温かくエマを包み込んで、心をそっと癒やしてくれた。 「可愛い、私のエマ」 愛おしそうに目を細めて、甘い眼差しを向ける。 エマの手を取り、指先にちゅっとキスをした。 「ぁっ、ルシアン様っ」 「エマ。自分で動くところを、見せてくれますか?」 上目遣いに問われて、エマはもじもじした。 「そ、そのっ……恥ずかしい、ですっ」 エマはフルフルと首を横に動かす。 けど、ルシアンは優しく言い聞かせた。 「エマ。貴方の乱れる姿は、たまらなく魅力的です」 「ぁ……ルシアン様っ」 「乱れるほど、私に溺れている証なのですから。言葉にならないほど幸せで、心が震えます」 「ッ、る、ルシアン様っ」 カァッと全身が熱くなり、胸がドキドキする。 そんなこと言われたら、イヤとは言えない。 「ほ、本当に……僕のこと、幻滅しませんか?」 「しませんよ。貴方の淫らな姿には、興奮すると思いますが」 「っ……!」 ルシアンがエマに失望することはなさそうだ。 むしろ、喜んでくれそうな気がして、それもまた恥ずかしい。 「んっ……ぁ、ルシアン様っ」 エマは蕾をきゅっと締めつける。 とたんに、ルシアンの雄が脈打って、その刺激に震えた。 「ぁぁんっ」 「エマッ」 「ぁ、ルシアン
「ひゃんっ、ぁぁっ、ァ……あぁぁぁぁッ!」 ビクンッと躰が跳ね、エマの精が弾けた。 同時に、甘い香りがいっそう強くなり、ルシアンに襲いかかる。 「ッ……エマ、」 「ぁんっ、ルシアン、さまっ……ぁぁっ、ぼくの、中に……っ」 エマが快楽の涙をこぼしながら、ルシアンを誘う。 欲に濡れた金の瞳は、ルシアンだけを映して、艶やかに微笑む。 「うッ……」 腰が激しく疼いて、一気に熱が滾った。 先走りがダラダラとあふれて、愛しいオメガを求めてそそり立つ。 「……エマッ!」 もう、理性で抑えるのは限界だった。 番のオメガを前にして、冷静にふるまうことなどできない。 「愛しい、エマ。貴方のここを、私で満たしてあげます」 エマの蕾を指でなぞると、嬉しそうにひくついた。 + + + エマはルシアンと番になってから初めて、閨を共にした。 ランダリエからデイモンド領のお屋敷に着くまで、十日も我慢していたので、実は心待ちにしていたのだ。 番になって、初めて迎えた夜だったからか、キスも愛撫も、前よりずっと気持ち良かった。 (ルシアン様の匂いっ……ぁぁ、きもちいいっ) ピリッとした刺激的で甘い、ルシアンのフェロモンが、エマの理性を溶かしていく。 発情期にも抱いてもらったのに、今夜はことさらルシアンが甘く感じる。 鼓膜を震わせる声も、肌を撫でる手のひらも、エマの性感帯を刺激して、あっという間に躰が蕩けてしまう。 「ぁっ、ッ、ぁぁっ!」 膝を抱えられ、正面から貫かれると、ルシアンの顔がよく見えて嬉しかった。 「ひぁぁんっ、ぁぁぅっ……ぁ、ァァッ」 ルシアンに揺すられるまま、嬌声を上げる。 「ぁん、あつぃぃっ……ァァッ、あぁんっ」 「ああ、エマッ……貴方の中が、熱くて、たまらないっ」 「んんぅっ……ルシアン
幼い頃に望んだ夢は、もう叶わない。 「ルシアン。エマ様はいずれ公爵夫人になります。貴方が、しっかり守ってあげるのですよ」 「分かっています」 ルシアンは大きく頷いた。 今のルシアンにとって一番大事なのは、両親ではなく、愛しい妻だ。 (エマ……私の、たった一人のオメガ) 心に想うだけで、幸せな気持ちになれる。 退出するミシェルを見送り、ルシアンは夫婦の寝室へ向かった。 夫婦用に整えられた寝室は、ルシアンとエマの私室の中程にある。 ルシアンが扉を開けると、甘やかな香りに包まれた。 「エマ。待たせてしまい、すみません」 「ルシアン様っ」 部屋の中央にある、天蓋付きの寝台に、エマがちょこんと腰掛けていた。 見慣れた法衣ではなく、刺繍の施された可愛い夜着を羽織り、頬は薄桃色に染まっている。 燭台の灯りに浮かび上がるエマは、可憐な薔薇のように美しかった。 エマの隣に座ると、腰を抱き寄せて、顔を近づける。 「エマ」 「んっ……ルシアン様。すごくいい香りがします」 「そうですか? 貴方の方が、芳しい香りがしますよ?」 唇にキスを落とすと、エマが嬉しそうに目を閉じる。 柔らかな唇の感触を楽しみ、舌を差し込んで口の中を舐める。 「ふぁっ、んぁっ……ぁぁっ」 エマの舌を絡め取り、味わうように歯茎や上顎を舐めた。 クチュクチュと水音が響き、エマが応えるように舌を動かす。 じゃれるように舌を絡め、エマの口を愛撫した。 「ぁぁんっ、ん……んんっ」 「エマっ、可愛いです」 「ぁっ、ルシアン様……」 エマがうっとりした顔でルシアンを見上げる。 金の瞳が甘く潤み、艶やかな髪がさらさらと揺れた。 「ようやく、貴方と愛し合えますね」 「んっ、はい……僕も、ルシアン様がほしかったですっ」
ティエリーは悪びれた様子もなく、テーブルを挟んだ向かい側の椅子に腰掛ける。 「報告書を読んでたのか?」 「ああ」 「それにしては、上の空だったようだが?」 ティエリーは笑いながら、ルシアンを見る。 テーブルに用意されていたグラスにワインを注ぎ、勝手に飲み始めた。 「で、その地味な袋は何だ?」 「野暮なことを聞くな」 ルシアンは素っ気なく答え、お守り袋を懐にしまいこむ。 「あの聖樹か
「ルシアン様は、遺跡に興味がおありですか?」 「ええ。アカデミーに在籍していた頃は、遺跡調査に参加したこともあります」 ルシアンの声が弾んでいるように聞こえて、エマは嬉しくなった。 (王都から離れた場所だけど、ルシアン様を案内できたらいいのに) もし、ルシアンと一緒に出かけられたら、どんなに楽しいだろう。 「今回の滞在では日程が厳しいですが……遺跡は、ぜひ見てみたいですね」 「はいっ! もし機会があれば、その時はご
カァッと頬を赤く染めて、エマは視線を逸らした。 「フフ。またいずれ、その機会があれば」 「っ! 本当ですか!」 バッと勢いよく振り返る。 ルシアンは驚いたように目を丸くした。 「ぁ……す、すみませんっ!」 エマは耳まで真っ赤にして、両手で顔を覆った。 (バカバカ! ただの社交辞令なのに!) 本気にするなんて、恥ずかしすぎる。 エマが羞恥に黙り込むと、ルシアンがクスクスと笑った。 「可愛いですね、
「ええ。良い香りですね。アールグレイですか?」 「はい。私の好きな紅茶なんです」 用意された紅茶は、最高級品の茶葉だ。 エマの立場では、客人をもてなすときにしか飲めない代物なので、味わって飲んだ。 一口サイズにカットされたサンドイッチやクッキーも、宮廷料理長が手がけたもので、エマがふだん口にするものとは比べものにならないほど美味しい。 料理長が作る料理は、国王や王太子が同席する会食でないと食べられないので、これも噛みしめるようにして食べる。
Rebyu