Chapter: 第6話 敵と手を組む時「…え?」「お前はまだキースターになりたてのひよっこだ。だから先頭の訓練や裏の世界のことについて教えてやるって言ってんだ。」「どうしてそこまでしてくれるの?」「単純にお前のことが気に入ったからだ。お前には最強のキースターになる素質がある。」「…お兄さん、ただの売人って訳じゃないよね。一体何者?」僕がそう聞くと、男は仮面を外した。見覚えのある顔に僕は驚いた。「…ロズス・ディーザス⁉」「やっぱ俺のことも知ってたか!そう、俺はディーザス家三男、キー販売担当のロズスだ。」「…どうしてディーザス家の人がこんな所に⁉」「ここんとこキースターになりに来る奴にパッとしない奴が多くてな、だから俺が直接見定めているのさ。そしたらお前が来たって訳だ。」今思うととんでもないこと口走っていた気がする。 この国の裏のトップの一人を殺す発言しちゃったよね… そんなことを考えていた為、ロズスの話に今一つ付いていけなかった。「まっ、そういう訳だからお前はこれからディーザス家の一員だ。」「ま、待ってよ!まだ返事してないし、急に僕がいなくなったら家族がどう思うか…」「あぁ、それなら心配させたらいい。突然子がいなくなって涙で歪む親の顔、最高だろ?後はお前次第だ。」自慢ではないが、僕は前世で家出をしたことがある。 その時に母が酷く泣き崩れているのを見たことがある為、ロズスの言葉に一瞬胸がチクッとしたが、それでも決断できたのは、実の親ではないからか、まだこの世界を現実ではなく、漫画の世界だと思っているからなのか…「分かった、これからよろしく、ロズス。」「おぅ、よろしくな、カイル。」僕たちが交わした握手は、どこかで見たことある名シーンのような熱いものでは決してない。しかし、この日は僕にとって大きな転換期となった。「ようし、ついてこいカイル。お前をディーザス家の屋敷に連れてってやる。」
Last Updated: 2025-11-07
Chapter: 第5話 いざ、裏世界へディーザス家とは、キーを製造し売りさばくこの国一の商人一家だ。 目的はキーの力による世界征服で、「不死身の騎士」の敵組織でもある。「なっ!お前正気か⁉」「正気だよ。僕はキースターになる為にこの世界に生まれたんだ。」「…ディーザス家の場所は知らない。だがキーを売っている場所なら知っている。」「それはどこ?」「この場所に行ってみろ。」キースターは騎士の姿に戻り、懐から一枚の紙をくれた。 紙には地図らしきものが描かれている。「ありがとう、もう帰っていいよ。」「とんでもない目にあった。こんなことならお前たちを助けなきゃよかった。」そう言うと騎士はトボトボと去っていった。その日の夜、僕は家を抜け出し、地図に描かれた場所に行った。 そこは街灯が一つもない路地で、少し気味が悪かった。 すると仮面を付けた屈強な男性が近づいてきた。「ここに何の用だ?子供が来る場所じゃねぇぞ。」「あなたは…ディーザス家の関係者?」「…どこでその名を知った?」「やっぱりそうなんだ。僕、キースターになりたいんだけど。」「馬鹿なことを言うな。おまえのような子供がなれるわけないだろ。そもそも金は持ってるのか?」「持ってない。でもあなたを殺して奪い去れば問題ない。法の効かないこの世界はそういうものでしょ?」「面白いことを言うな、出来ると思っているのか?」「もちろん、僕の歩みを止める者は誰であろうと倒してやる。」「……気に入った。今回は金を取らないでやるよ。ただし、下手なことに使ったら許さねぇからな。」「ありがとう。」「そんじゃ、まずはキースターにならねぇとな。」そう言うと男は少し大きめの箱を取り出した。 箱の中にはキーがたくさん並んでいる。「どれでも一つ、適当にとってみろ。」’適当に’と言っているが、そんなことは出来ない。原則として、一人の人間が使用できるキーは一つまでだ。それ以上使うとキーが暴走して最悪死ぬ。(つまりこれが人生の分かれ道、どれを選ぶ…?)’ホーク‘ ’ウェーブ‘ ’ダークネス’他にも使い方次第でライトとも戦えそうなものはある。悩んでいると一つのキーが気になり、手に取った。「ほぅ、エクスプロージョンか、中々いいのをとったじゃねぇか。」エクスプロージョン――爆発のキーを手にした僕は早速キーを心臓に差し込んだ。ちなみに余談だが、差し
Last Updated: 2025-11-06
Chapter: 第4話 戦闘!キースター「キースター?あぁ、さっきの奴なら今から仲間と倒しに行くところだよ。」「違いますよ。あなたの正体を聞いているんです。」「俺がキースター?面白いことを言うね。」騎士はあくまでもシラを切るらしい。「では質問を変えます。何故あなたはあんなに都合のいいタイミングで一人で森にいたんですか?」そう、これが引っかかっていたことだ。僕たちは本来昨日森に行くはずだったのに、僕のミスで今日行くことになった。それなのに昨日起こるはずだったことと全く同じことが今日起こった。 ラノベでしばしば目にする’世界の強制力’があるとするなら話は別だが、そうでないのならさすがに不自然だ。「それは~…たまたまだよ。日課のパトロールをしてたら君たちが襲われていたんだ。」「へぇ~騎士の皆さんは普段人が通らない森の中まで毎日来るのですか~」「そんな知りたがりの君にいいことを教えてあげよう。世の中知らない方がいいこともあるってな!」騎士は懐からキーを取り出し、心臓に突き刺した。ガチャリそう音が鳴ると騎士の姿が変わり始め、あっという間にキースターへと変化した。次の瞬間、僕はキースターになぐられて、2m程飛ばされた。「グハハハ!俺は昇格して人を従えたいんだ。その為に全財産を払ってキーを手に入れた。だが手に入れたのは人形を作ることしかできない役立たず。だから森に入ってきたガキ共を自作自演で助けて評価をあげてんだよ!」(なるほど…あいつのキーは”ドール”だったのか)「だがバレたからには仕方ない。お前を殺してやる…!」キースターは僕の周りを10体程の人形で囲み、槍のようなものを持たせ、人形たちは一斉に僕を突き刺してきた。僕は咄嗟にジャンプしてかわし、人形のうちの一体をパンチした。 すると人形はボロボロと崩れた。(よし、少なくともこの人形たちとはやり合える。)こうして僕は人形たちの攻撃をかわしつつ、人形たちを倒していった。 しかし、一対一ならよかったが、相手は複数体、その上キーの力で無限に人形を生み出される。そうなると僕の方が段々追い詰められていった。「ハッハッハ!ガキにしては随分粘ったようだが、これで終わりだ!|人形の宴《ドールパーティー》!」キースターはこれまでよりも更に多くの人形を生み出し、総攻撃を仕掛けた。(このままじゃ何もできないまま終わる…それだけは回避しなけれ
Last Updated: 2025-10-31
Chapter: 第3話 邂逅燃えるような紅い髪に凛とした目、僕が知っている姿より幼いが、間違いなくライトだ。「急にどうしたの?」「いやそれはこっちのセリフだろ⁉」心なしか少しイラついているように見える。「…何だっけ?」転生して僕の記憶とカイルとしての記憶が混同しているせいか、何の話か1ミリも思い出せない。「今日は前から決めてた森の中に探検に行く日だろ!それなのに全然来ないから心配したんだぞ!」「あっ!」しまった、今日はその日だったのか。原作でもライトの幼少期について、多くは語られていない。 しかし、数少ないエピソードの一つに森の探検というものがある。ライトとカイルが森に探検に行ったとき、突然キースターに襲われて、殺されかけるが、たまたま近くを通りかかった一人の騎士に助けられ、騎士になりたいという夢が強くなった重要な話だ。(原作崩壊しないように騎士を目指していたのに、ストーリーを忘れるなんて…これじゃあ本末転倒だ。)「あ~あ、一日中無駄にしちゃったよ。」「ごめん…じゃあ明日!明日一緒に行こうよ。」「う~ん…いいよ、今度は絶対に忘れるなよ。」「分かってるよ。」「じゃあ、また明日な!」「うん。」よし、ぼくも準備をしないと…翌日、僕とライトは国の中心から少し離れた森にやってきた。 森の中は昼でも薄暗く、キースターが犯罪するにはうってつけの場所だった。(一日ズレたとは言え、キースターが襲ってこないとは限らないよな…)そうして二人で森の奥へと進んでゆくと、小さな小屋を見つけた。(確かこの変だったな、油断は禁物だ。)「おい、何だあれ!」案の定ライトは小屋に興味を示し、小屋の中に入ろうとした。「待って!確認もせず中に入るのは…」その瞬間、上空から何か大きなものが落ちてきた。(来たか…!)「うわっ!な、何だ⁉」「ゔぁぁぁぁぁ…」それは2m程の巨体を持つキースターだった。(こいつのキーは何だ?)考えている内に、気が付くとキースターの拳がライトに当たる寸前だった。(もう間に合わない…!)その時だった。カキン!例の騎士が現れ、剣で拳を受け止めた。「大丈夫か!ここは危険だ、早く逃げろ!」そうして二人で逃げ出し、後から騎士も合流した。 こうして僕たちは助かったのだが、(なんか引っかかるな…)うまく言えないが違和感を感じる。その正体を考
Last Updated: 2025-10-31
Chapter: 第2話 トレーニングと転生ボーナス!?強くなるためにはどの世界でもトレーニングが必要だ。 公式の設定にも、強い肉体ほどキーの性能が上がると書かれていた。「母さん、ランニングに行ってくるよ。」「急にどうしたの?何か企んでいるんじゃないかしら?」間違ってはいないが秘密だ。「この前ライトが騎士になりたいって言ってて、僕もなりたいって思ったんだ。だから特訓をするんだ!」絶対に何か言われると思ったので、予め言い訳を考えておいた。「そうなの?でも騎士になるには毎日トレーニングをしないといけないのよ。」「わかった~!」「フフ、きっとすぐに飽きるわ。」「そんなことないよ!絶対騎士になってみせるから、いってきま~す。」そうして、僕は家を飛び出した。トレーニングの目的は主に三つだ。一つ目はさっきも言ったように、強いキースターになる為二つ目は人との関りを強くする為 「不死身の騎士」の舞台でもあるこの国―—アキュアンは水の国として知られているらしい。前世でいうヴェネツィアのようなものだ。キースターの被害を除けば穏やかな所で、僕の知る限り表立って悪さをするような人はいない。まぁ裏はしらないけど…そんな街だからこそ、人とたくさん関わって信頼を築き、自分がキースターだと悟られないようにするのが目的だ。三つめは親に言ったように騎士になる為だ これは原作でカイルが騎士だったからで、僕が転生したことによる影響でライトとクレアが出会わなくなるといけないので、最低でも参謀を目指さないといけない。今日は初めてだからこの住宅街を一周程度と考えていたのだが…「おかしい…全然疲れない…!」前世でも体を動かすような趣味のなかった僕が8歳の体で狭くはない住宅街を走ったのに、息一つ切れなかった。 試しに2週、3週と走ってみたが、まだ余裕がある。「これが噂に聞く’転生ボーナス’ってやつ?」ということで、僕はこの国で一番大きな図書館にやってきた。 参謀になるには知識も必要な為、兵法や地理を学ぶ目的で元々来る予定だったのだが…「分かる…分かるぞ!」進〇ゼミもビックリな理解力につい興奮してしまった。 兵法の基礎やアキュアン周辺の地理、アキュアンの歴史について学ぶうちに、夜になってしまっていた。前世を含めてもこんなに集中したのは初めてだ。(やっぱり自頭がいいのかな?)こんな生活を一か月続けたある日、いつも
Last Updated: 2025-10-31
Chapter: 第1話 状況整理一度状況を整理しよう。僕はトラックにはねられて死に、転生した。 そして今いる世界は、漫画『不死身の騎士』という作品の中だと思われる。この作品は、新人騎士で主人公のライトが、街を脅かす怪物「キースター」から街の平和を守る、所謂ヒーローものだ。特筆すべき点はタイトルにもあるように、ライトが死なないこと。 たとえどんなにボロボロになったとしても、絶対に死なないのだ。 原因は彼が持っている”フェニックス”のキーの影響によるものらしい。前提として、この作品の怪物であるキースターは異世界からの侵略者などではない。悪い心を持った街の人々が、不思議な鍵を使って変化し、悪事を働かせている。そして使う鍵によって、様々な能力を使うことができる。例えば’ボルケーノ’(火山)のキーを使うと、マグマを自由に操ったり、火炎弾を放ったりすることができ、’ドルフィン’のキーを使うと、水中での行動が得意になる。ライトはある日、パトロール中にキースターに襲われ、死にかけた際、”フレイ”と名乗る謎のフェニックスに助けられ、フェニックスのキーをもらった。 ちなみにだが、フェニックスの騎士なんてどこのハ〇ポタ?などとは言ってはいけないのだ。 このキーを特殊な腕輪に差し込むことで、正義のヒーロー「ナイフェン」に変身することができる。その力で、日夜キースターたちと戦いを繰り広げるというのが、主な内容だ。僕が転生したのはカイルというライトの幼馴染で、ライトと同じ騎士団の参謀だ。 登場頻度は少なかったが、出るとその優れた頭脳でライトを助ける陰の人気キャラだ。だが、僕がカイルになってしまった以上、彼との絆は断たれてしまった。 何故なら僕は、キースターになりたいからだ。僕が死ぬ直前に読んだ「不死身の騎士」の最新話、それはカイルと僕の推し―—クレアとの戦いの場面だった。クレアは”ナイフ”のキーを使うキースターで、その能力で気に入った相手をズタボロにし、絶望と恐怖で歪んだ顔を見るのが大好きな作中屈指のサイコキャラだ。 しかし、整った顔とメイド服、長い黒髪というビジュで、密かに人気もあった。 僕は彼女の仲間になり、彼女と共に悪の道を進みたい。 それが僕のこの世界での進む道だ。ライトとクレアが出会うのはライトが18歳の頃、ライトとカイルは同い年設定で、今僕が8歳のはずだから、10年の猶
Last Updated: 2025-10-31