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53歳おっさんテケナー
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Novels by 53歳おっさんテケナー

『RE:LAY ―幽霊となった伝説のモデルが妹をプロデュースする話―』

『RE:LAY ―幽霊となった伝説のモデルが妹をプロデュースする話―』

伝説と呼ばれた元トップモデル・歌原レイラは、不審な死を遂げてから一ヶ月後、幽霊としてこの世に戻ってきた。 彼女が目にしたのは、両親の愛を受けられず、孤独の中で生きてきた妹・歌原彩の姿だった。 かつて二人は誓っていた。 ――いつか、姉妹で同じランウェイを歩こうと。 その約束を胸に、夢を諦めず努力を続ける妹の姿を前に、レイラは決意する。 何者でもない中年男・与那嶺良太に引き寄せられ、幽霊としてこの世に留まった彼女は、妹を再び表舞台へ導くことを選んだ。 だが、幽霊であるレイラは、直接この世界に触れることができない。 良太の助けを借りながら、妹をモデルの道へと導いていく。 後悔、喪失、そして再生。 過去と向き合いながら、人はもう一度、人生をやり直せるのか。 これは、死んだ姉が託した想いが、残された者たちの未来を動かしていく物語。
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Chapter: 第73話《新人の目》
1.待たせない布 Atelier SAKUMA・午後。 机の上に。 何枚もの布が。 並んでいる。 厚い布。 薄い布。 硬い布。 柔らかい布。 奏は。 一枚ずつ。 持ち上げる。 揺らす。 離す。 布が落ちる速さを。 見ている。 良太 「何してるの?」 奏 「探してます。」 「何を?」 一拍。 「彩さんを。」 「待たせない布。」 佐久間が。 奏を見る。 奏は。 今の仮縫いに使われている布を持つ。 「外側の布が。」 「彩さんの足より。」 「少し遅れてます。」 佐久間 「静けさを出すためです。」 奏 「はい。」 「外側は。」 「変えなくていいと思います。」 別の薄い布を取る。 「変えるのは。」 「内側だけです。」 次に。 少し張りのある布を重ねる。 「こっちと。」 「重ねたら。」 佐久間が。 二枚を受け取る。 揺らす。 内側は早く動き。 外側は。 わずかに遅れて落ちる。 佐久間 「……面白い。」 七瀬 「根拠は?」 奏の手が。 止まる。 「見たら。」 「そう思ったので。」 七瀬 「それは根拠じゃない。」 一拍。 「歩幅が変わっても?」 「ターンでも?」 「本番の生地でも?」 「同じになるの?」 奏は。 答えられない。 「たぶん。」 「試してみないと。」 七瀬 「本番で。」 「たぶんは使えない。」 空気が。 少し硬くなる。 良太 「言い方。」 七瀬 「普通です。」 奏は。 布を見つめたまま。 手放さない。 七瀬 「説明できないなら。」 「説明できるまで考えて。」 一拍。 「新人だからって。」 「本番は待ってくれない。」 厳しい。 けれど。 拒絶ではない。 良太が。 机へ近づく。 「仮縫いに。」 「付けられる?」 奏 「え?」 「試したら。」 「分かることがあるんじゃない?」 七瀬 「失敗したら?」 良太 「仮縫いですよね。」 一拍。 「試すために。」 「あるんじゃないですか。」 佐久間は。 奏を見る。 「どのくらい必要ですか。」 奏は。 仮縫いを見る。 「二十分ください。」 佐久間 「分かりました。」 ―――――――――― 2.好きで見てきたもの
Last Updated: 2026-08-03
Chapter: 第72話《ちゃんと歩ける服》
1.Atelier SAKUMA・続き 「だから。」 一拍。 「ちゃんと歩ける服にしてほしいです。」 白い仮縫いの中で。 彩が。 佐久間を見ている。 佐久間は。 すぐには答えなかった。 首元。 肩。 腰。 裾。 自分が引いた線。 彩だけを見て。 描いたはずの服。 けれど。 その中で。 彩は。 苦しそうに立っている。 佐久間 「……分かりました。」 一拍。 「直します。」 彩 「全部ですか?」 佐久間は。 首を横に振る。 「好きだと言ってくれたところは。」 「残します。」 一拍。 「歩けないところだけ。」 「全部。」 「見つけます。」 彩は。 小さく頷く。 「お願いします。」 その声は。 服を作ってもらう人ではなく。 一緒に作る人の声だった。 ―――――――――― 2.見ていたもの 佐久間は。 彩へ椅子を勧める。 「座ってみてください。」 彩が。 腰を下ろす。 その瞬間。 背中が。 不自然に伸びる。 七瀬 「苦しい?」 彩 「少し。」 佐久間 「どこが?」 彩は。 腰を指す。 「後ろへ。」 「引っ張られる感じがします。」 奏が。 背後へ回る。 「布が。」 「上に引かれてます。」 七瀬は。 彩の顔を見る。 「顎も上がってる。」 佐久間 「顎?」 七瀬 「苦しいから。」 「身体が逃げてる。」 佐久間は。 彩を見る。 さっきまで。 七瀬は。 首元を下げろと言った。 佐久間は。 形を守ろうとした。 けれど。 どちらも。 彩が苦しいかは。 聞いていなかった。 七瀬 「私。」 一拍。 「顔しか見てなかった。」 佐久間も。 仮縫いを見る。 「僕は。」 「服しか見ていなかった。」 奏が。 裾の近くへしゃがむ。 布へ触れる前に。 佐久間を見る。 「触ってもいいですか?」 佐久間は。 一瞬だけ止まり。 頷く。 「お願いします。」 奏は。 裾を持ち上げる。 「私は。」 一拍。 「動きしか見てませんでした。」 良太 「全員。」 「彩を見てたんじゃないの?」 誰も。 答えない。 レイラが。 小さく言う。 「見てたわ。」 一拍。 「自分が見たいところだけ。」 ――――
Last Updated: 2026-07-31
Chapter: 第71話《正しい人たち》
1.Atelier SAKUMA・続き 静寂。 白い仮縫いの中で。 彩が立っている。 その正面。 佐久間。 少し離れた場所に。 七瀬。 二人の視線は。 互いではなく。 彩へ向いている。 それでも。 見ているものは。 違っていた。 佐久間 「これは。」 一拍。 「僕が作った服です。」 七瀬 「歌原彩が着た時点で。」 一拍。 「あなた一人の服じゃありません。」 空気が。 また。 硬くなる。 良太は。 二人を見る。 次に。 彩を見る。 彩は。 何も言わない。 言えない。 自分のために作られた服。 自分の顔を守ろうとする人。 どちらかを選べば。 もう一方を。 否定するような気がした。 良太 「七瀬さん。」 七瀬 「何ですか。」 良太は。 一度。 息を整える。 「触る前に。」 「佐久間さんへ。」 「確認してください。」 七瀬 「確認したら。」 「変えてくれるんですか?」 佐久間 「必要なら。」 七瀬が。 佐久間を見る。 「必要です。」 佐久間 「僕は。」 「まだ。」 「必要だと思っていません。」 七瀬 「だから。」 「私が説明してるんです。」 佐久間 「説明は聞きました。」 「その上で。」 「今は変えません。」 七瀬の眉が。 少し動く。 良太 「七瀬さん。」 一拍。 「前に。」 「約束しましたよね。」 七瀬は。 良太を見る。 良太 「ヘアメイクは。」 「七瀬さんへ任せる。」 「でも。」 「他の担当へ。」 「勝手に口を出さない。」 七瀬 「勝手には出してません。」 良太 「出してます。」 即答だった。 七瀬が。 少し止まる。 良太 「佐久間さんが。」 「触らないでと言ったのに。」 「触ろうとした。」 「それは。」 「ルール違反です。」 七瀬は。 彩を見る。 首元。 顎。 目元。 そして。 良太へ戻る。 「じゃあ。」 一拍。 「間違ってると思っても。」 「黙ってろってことですか?」 良太 「違います。」 七瀬 「同じでしょう。」 良太 「違います。」 今度は。 少し強く。 良太は言った。 七瀬が。 良太を見る。 良太 「意見を言うなとは。」 「言
Last Updated: 2026-07-29
Chapter: 第70話《最初の仮縫い》
ナレーション 服は。 布を縫い合わせただけでは。 完成しない。 着る人がいて。 歩いて。 呼吸して。 初めて。 服になる。 けれど。 一人のために作られた服だからこそ。 作る人間は。 自分が一番。 その人を見ていると思ってしまう。 ―――――――――― 1.Atelier SAKUMA・午後 静かな工房。 ミシンの音が。 一定の間隔で響いている。 机の上。 糸。 針。 型紙。 裁断された布。 その中央。 白い服が置かれている。 まだ。 完成品ではない。 本番で使う生地でもない。 色もない。 装飾もない。 形だけを確かめるために作られた。 仮縫い。 佐久間圭介は。 服を持ち上げる。 正面。 横。 背中。 縫い目を確認する。 肩の位置。 袖の付け根。 腰から裾へ落ちる線。 何度も。 何度も。 見直す。 「……悪くない。」 小さく。 呟く。 悪くない。 むしろ。 思っていた以上だった。 最初のデザイン画。 展示会の夜。 歌原彩だけを思い浮かべて描いた。 あの一枚。 そこにあった線が。 ようやく。 服の形になった。 けれど。 佐久間は。 すぐに首を横へ振る。 「まだだ。」 まだ。 歌原彩は。 着ていない。 その時。 インターホンが鳴る。 佐久間は。 服をトルソーへ掛ける。 一度。 大きく息を吐く。 そして。 扉へ向かった。 ―――――――――― 2.集まる人たち 扉が開く。 良太。 彩。 その後ろに。 七瀬。 奏。 もちろん。 良太の隣には。 誰にも見えないレイラもいる。 佐久間は。 少し緊張した顔で頭を下げる。 「どうぞ。」 良太 「今日はお願いします。」 佐久間 「こちらこそ。」 彩も頭を下げる。 「お願いします。」 七瀬は。 工房へ入るとすぐ。 周囲を見回す。 トルソー。 生地。 作業机。 照明。 鏡。 そして。 中央に掛けられた白い仮縫い。 足が止まる。
Last Updated: 2026-07-27
Chapter: 第69話《もし、私が消えたら》
1.与那嶺家・夜 玄関の扉が開く。 「ただいま。」 久しぶりだった。 この時間に。 良太が家へ帰ってくるのは。 少し前まで。 毎日のようにいた家。 五年間。 ほとんど。 ここから出なかった。 それが今は。 帰ってくる方が。 珍しくなっていた。 「おう。」 リビングから。 父親の声。 与那嶺和男。 良太が。 リビングを覗く。 「まだ起きてたのか。」 「まだ九時だ。」 「そうか。」 「お前が帰ってこないから。」 「時間の感覚がおかしくなってんじゃないか。」 良太は。 少し笑う。 「かもな。」 テレビがついている。 ちょうど。 番組が終わったところだった。 画面には。 《RE:CODE MODE CONTEST》 その文字。 良太の足が止まる。 「見てたのか?」 和男が。 テレビを見る。 「特番やってた。」 「へえ。」 「へえ、じゃない。」 良太が。 冷蔵庫を開ける。 水を取り出す。 和男が。 その背中を見る。 「お前。」 「何?」 一拍。 「本当に社長なんだな。」 良太の手が。 止まる。 「今さら?」 「今さらだ。」 和男は。 テレビを見る。 「名前出てたぞ。」 「UTAHARA MODEL OFFICE。」 一拍。 「代表。」 「与那嶺良太。」 良太は。 水を飲む。 「俺だな。」 「お前以外に誰がいる。」 「だよな。」 和男は。 少し黙る。 そして。 良太を見る。 「歌原彩。」 良太の表情が。 少しだけ変わる。 「うん。」 「この子。」 「ずいぶん注目されてるみたいじゃないか。」 「まあ。」 「まあって。」 和男は。 呆れた顔をする。 「日本一を決めるコンテストなんだろ。」 「正確には。」 「ノルディコレクションに出るモデルを決めるコンテスト。」 「同じようなもんだろ。」 「全然違う。」 「俺には分からん。」 良太は。 少し笑う。 「俺も。」 和男が。 良太を見る。 「お前が言うな。」 二人とも。 少しだけ笑う。 でも。 和男の表情は。 すぐに戻った。 「良太。」 「何?」 「大丈夫なのか。」 良太は。 父を見る。 「何が?」 「全部だ。」 一拍。 「つい最近
Last Updated: 2026-07-24
Chapter: 第68話《声が重なる》
1.1207号室・午後 「良太。」 レイラが。 突然言った。 《何だ?》 「スタジオと。」 一拍。 「家庭教師。」 《……は?》 良太が。 ノートパソコンから顔を上げる。 《何の話だ?》 「手配して。」 《ちょっと待て》 《何で同時に必要なんだ?》 レイラは。 当然のように答えた。 「彩を歩かせるから。」 《歩かせる?》 「ウォーキング。」 一拍。 「次は、それ。」 良太は。 机の上の資料を見る。 《RE:CODE MODE CONTEST》 開催日まで。 時間はない。 《スタジオは分かった》 《でも》 《なんで家庭教師まで必要なんだ?》 レイラは。 良太を見る。 「ウォーキングの練習には。」 「時間を使う。」 一拍。 「でも。」 「だからって。」 「彩の勉強を。」 「おろそかにはできない。」 良太は黙る。 レイラ 「学校。」 「仕事。」 「ウォーキング。」 「全部やる。」 《無茶じゃないか?》 「だから。」 「時間の使い方を変えるの。」 一拍。 「移動を減らす。」 「勉強は効率を上げる。」 「練習する日は。」 「練習に集中する。」 「休む日は。」 「ちゃんと休ませる。」 良太は。 レイラを見る。 世界を目指している。 でも。 世界のために。 彩の生活を壊すつもりはない。 それが。 歌原レイラだった。 《家庭教師か……》 良太は。 ノートパソコンを開く。 《分かった》 《探してみる》 レイラ 「あと。」 《まだあるのか?》 「スタジオは。」 「鏡があるところ。」 《鏡?》 「できれば。」 「端から端まで。」 「ちゃんと歩けるところ。」 《注文多いな》 「当たり前でしょ。」 《で》 《そこで何するんだ?》 レイラは。 少しだけ笑った。 「私が。」 一拍。 「彩に。」 「ウォーキングを教える。」 良太が。 止まった。 《……お前が?》 「そう。」 《どうやって?》 レイラは。 良太を見る。 そして。 当然のように言った。 「あなたがいるでしょ。」 《俺?》 「私が見る。」 「私が教える。」 一拍。 「私の声を。」 「あなたが彩に届けて。」 2.最初の一歩 数日後。
Last Updated: 2026-07-22
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