『RE:LAY ―幽霊となった伝説のモデルが妹をプロデュースする話―』

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last updateLast Updated : 2026-05-01
By:  53歳おっさんテケナーUpdated just now
Language: Japanese
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伝説と呼ばれた元トップモデル・歌原レイラは、不審な死を遂げてから一ヶ月後、幽霊としてこの世に戻ってきた。 彼女が目にしたのは、両親の愛を受けられず、孤独の中で生きてきた妹・歌原彩の姿だった。 かつて二人は誓っていた。 ――いつか、姉妹で同じランウェイを歩こうと。 その約束を胸に、夢を諦めず努力を続ける妹の姿を前に、レイラは決意する。 何者でもない中年男・与那嶺良太に引き寄せられ、幽霊としてこの世に留まった彼女は、妹を再び表舞台へ導くことを選んだ。 だが、幽霊であるレイラは、直接この世界に触れることができない。 良太の助けを借りながら、妹をモデルの道へと導いていく。 後悔、喪失、そして再生。 過去と向き合いながら、人はもう一度、人生をやり直せるのか。 これは、死んだ姉が託した想いが、残された者たちの未来を動かしていく物語。

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Chapter 1

第一章 最後の約束 第1話 《ランウェイとランドセル》

春の夕暮れ。

アスファルトに残る昼の熱が、まだ足元から立ちのぼっていた。

小学一年になったばかりの彩は、

背中に大きすぎるランドセルを揺らして歩いている。

その隣を歩くのは、姉――十八歳の歌原レイラ。

死まで、あと十年。

1. 楽屋裏・ファッションショー会場(都内某所)

制服のまま。

大きすぎるランドセルが、背中をいっそう小さく見せる。

彩は、控室の扉のすき間から中をのぞいていた。

鏡台の前。

一流のメイクアップアーティストたちが、迷いのない手さばきでレイラを仕上げていく。

パウダーの匂い。

ライトの熱。

空気そのものが、張りつめている。

彩は目を丸くし、夢中で見入った。

――お姉ちゃんが、どんどんきれいになっていく。

キラキラして、まぶしくて。

ほんとうに、“おとぎばなしのお姫さま”みたいだった。

鏡越しに、レイラが視線を送る。

ずっと、気づいていた。

「……ふふ。そんなに見られると、こっちが照れるんだけど」

彩は、はっとして顔を引っ込めようとする。

「大丈夫。入ってきて。……ちゃんと見てて、彩」

彩は嬉しそうにうなずき、小走りで寄ってくる。

レイラが、そっと彩の頬に触れる。

――そのとき。

レイラの視線が、袖口に止まった。

左腕。

淡い紫色の痣。

一瞬、呼吸が遅れる。

「……」

言葉にならないまま、視線だけがそこに縫い留められる。

「あ、それね」

無邪気な声。

彩は、自分の腕を差し出した。

「だいじょうぶだよ」

レイラは、触れない。

触れられない。

「きのう、ちょっといたかったけど」

一拍。

「お母さんがね、“間違ってごめんなさい”って」

レイラの眉が、ほんのわずかに動く。

鏡越しでも分からないほどの変化。

「わざとじゃないって。

 だから、わたし、ゆるしたの」

“ゆるした”

その言葉が、静かに落ちる。

「……そう」

声は、完璧だった。

「いまは、もう痛くないよ。ほら」

痣の上で、指を動かそうとする。

「――やめなさい」

強くも、怒ってもいない。

ただ止める。

彩はきょとんとする。

「だいじょうぶだよ?

 お母さん、ちゃんと謝ってたし」

レイラは、ゆっくりと息を吐いた。

――二度目。

一度目は、偶然と呼べた。

二度目は、もう違う。

「……彩は、悪くない」

それだけ言う。

彩は、意味も分からないまま、にこっと笑った。

レイラは、そっと袖を整える。

痣が完全に隠れる。

――これは事故じゃない。

――取引だ。

レイラの瞳の奥で、何かが静かに切り替わる。

「レイラさん、あと三分です!」

「はい」

レイラは立ち上がり、彩の目線までしゃがむ。

そっと頬をつつき、囁く。

「行ってくるね、彩」

「うん! がんばって!」

レイラは、光の方へ歩いていく。

その背中は、遠くて、まぶしかった。

――あのとき、私は思ったんだ。

“お姉ちゃんみたいになりたい”って。

2. ショー本番・ステージ上

煌めくランウェイ。

歓声とフラッシュが交錯する。

レイラが登場した瞬間、会場の空気が変わった。

流れるような一歩。

完璧なポーズ。

そのすべてが、“スター”だった。

観客席最前列。

小さな椅子に座る彩は、両手を胸の前でぎゅっと握りしめている。

足元にはランドセル。

制服の上着が、きちんとたたまれていた。

……お姉ちゃんって、ほんとにすごい。

ステージ端で、レイラが彩にウインクする。

彩の頬が赤く染まり、目を大きく見開いた。

3. ショー終了後・控室裏の廊下

「おねーちゃんっ!」

レイラは、ハイヒールのまましゃがみ、彩を抱き上げる。

「ただいま。どうだった?」

「すっごくかっこよかった!

 わたしも、ぜったいモデルになる!」

一瞬、レイラは驚いた顔をして。

すぐに、笑った。

「ふふ……じゃあ、約束ね」

小指を絡める。

「いつか、ふたりでランウェイを歩こう」

「やくそくだよ!」

4. その夜・車の中

黒塗りの車。

運転席に歌原和人。

助手席に歌原陽子。

後部座席に、レイラと彩。

彩は制服のまま寄りかかり、眠そうにしている。

足元には、ランドセル。

「ねえレイラ、今月も……例の件、なんとかならないかしら」

「お前が稼いでるから、彩を育てられるんだ。

 家族のためだと思え」

レイラは、目を閉じて息を吐いた。

「……振り込みは、明日しておく」

一度は、彩を引き取ろうとした。

二人で生きる未来も、考えた。

でも――

“親権”という鎖を盾に、和人と陽子は彩を渡さなかった。

断れば、また痣が増える。

だから私は、差し出すしかない。

「ほんとレイラは頼りになるわねぇ。

 彩にお金かけてあげないと、可哀想でしょ?」

彩が、うっすらと目を開ける。

眠たげに、瞬いた。

レイラは身をかがめ、小さな声で耳打ちする。

「……彩は、私が守るから」

その言葉の意味も、重さも。

幼い彩には、まだわからなかった。

お姉ちゃんの匂いがしてた。

あの頃の思い出は、ずっと光ってる。

でも、

あれが“最後のやくそく”だったなんて、思いもしなかった。

約束を守れなかった悔いと共に、

私の物語は始まった。

――第2話へつづく。

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第一章 最後の約束 第1話 《ランウェイとランドセル》
春の夕暮れ。アスファルトに残る昼の熱が、まだ足元から立ちのぼっていた。小学一年になったばかりの彩は、背中に大きすぎるランドセルを揺らして歩いている。その隣を歩くのは、姉――十八歳の歌原レイラ。死まで、あと十年。1. 楽屋裏・ファッションショー会場(都内某所)制服のまま。大きすぎるランドセルが、背中をいっそう小さく見せる。彩は、控室の扉のすき間から中をのぞいていた。鏡台の前。一流のメイクアップアーティストたちが、迷いのない手さばきでレイラを仕上げていく。パウダーの匂い。ライトの熱。空気そのものが、張りつめている。彩は目を丸くし、夢中で見入った。――お姉ちゃんが、どんどんきれいになっていく。キラキラして、まぶしくて。ほんとうに、“おとぎばなしのお姫さま”みたいだった。鏡越しに、レイラが視線を送る。ずっと、気づいていた。「……ふふ。そんなに見られると、こっちが照れるんだけど」彩は、はっとして顔を引っ込めようとする。「大丈夫。入ってきて。……ちゃんと見てて、彩」彩は嬉しそうにうなずき、小走りで寄ってくる。レイラが、そっと彩の頬に触れる。――そのとき。レイラの視線が、袖口に止まった。左腕。淡い紫色の痣。一瞬、呼吸が遅れる。「……」言葉にならないまま、視線だけがそこに縫い留められる。「あ、それね」無邪気な声。彩は、自分の腕を差し出した。「だいじょうぶだよ」レイラは、触れない。触れられない。「きのう、ちょっといたかったけど」一拍。「お母さんがね、“間違ってごめんなさい”って」レイラの眉が、ほんのわずかに動く。鏡越しでも分からないほどの変化。「わざとじゃないって。 だから、わたし、ゆるしたの」“ゆるした”その言葉が、静かに落ちる。「……そう」声は、完璧だった。「いまは、もう痛くないよ。ほら」痣の上で、指を動かそうとする。「――やめなさい」強くも、怒ってもいない。ただ止める。彩はきょとんとする。「だいじょうぶだよ? お母さん、ちゃんと謝ってたし」レイラは、ゆっくりと息を吐いた。――二度目。一度目は、偶然と呼べた。二度目は、もう違う。「……彩は、悪くない」それだけ言う。彩は、意味も分からないまま、にこっと笑った。レイラは、そっと袖を整える。痣が完全に隠れ
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第2話 《檻の中の虚像》
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第3話 《世界が動いた日》
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第4話 《最初の決意》
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第5話《決別の夜》
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第7話 《監視の眼》
歌原レイラ(25歳)――死まで、あと三年。 妹を守る戦いは、 もう後戻りできない領域へと踏み込んでいた。 1 マンション前・夕方 レイラの部屋で過ごした帰り、 彩はまだ温もりの残る廊下を抜けて、マンションのエントランスに姿を現した。 エントランス前。 建物の影に、数人の記者が静かに待ち構えている。 新人記者 「あ……! 歌原レイラさんの妹さん! 裁判について――」 その瞬間、 ベテラン記者が新人の腕を強く掴んだ。 ベテラン 「やめろ。映像もインタビューも禁止だ」 新人 「え? でも――」 ベテラン 「知らないのか。 レイラが事前に通達してる。 “妹への取材は一切不可”」 新人の喉が鳴る。 ベテラン 「破った社は、 《HORIZON》出禁だ」 大手事務所からの出禁。 それは、メディアにとって“職業的な死”だった。 彩は、何も知らずに通り過ぎる。 カメラは上がらない。 声も、飛ばない。 守られていることに気づかないまま―― 少女は、扉の向こうへ消えた。 2 繁華街・夜 雨上がりの路地裏。 濡れたアスファルトが街灯の光を跳ね返し、 夜の色を鈍く歪めている。 黒塗りのセダンが、音もなく停まっていた。 エンジンはかかったまま。 低い振動と、 ワイパーが残した水の線だけが、 密室の時間を刻んでいる。 後部座席。 黒いジャケットを羽織ったレイラは、 白いカップを両手で包んでいた。 指先は細く、 だが震えはない。 陶器が触れ合う、 小さな音。 向かいに座る男――探偵・白坂。 灰色のコートのまま、 使い込まれた鞄を膝の横に置いている。 年齢は五十三。 背筋は伸び、 視線だけが、わずかに鋭い。 3 白坂の報告 白坂 「……依頼どおり、仕掛けは完了しました」 低い声。 余計な抑揚はない。 白坂 「居間と廊下、台所に二カ所。  彩さんの私室周辺にも――  生活を侵さない範囲で設置しています」 レイラは、ゆっくりと目を伏せる。 白坂 「音に紛れる配置です。 見ていると悟られない。 大きな死角は、ありません」 白坂 「外にも一
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第8話《決意の告白》
──妹を守る戦いは、ついに“選択”を迫る局面に差しかかっていた── 歌原レイラ(25歳)―― 死まで、あと三年。 1 レイラのマンション・夜 窓の外で、街の灯りが滲んでいる。 テーブルの上には、二つのマグカップ。 立ちのぼる湯気が、静かに揺れていた。 レイラは、指先でカップの縁をなぞる。 レイラ 「……家庭裁判所への申立て、正式に出したわ」 彩は、驚いた様子を見せなかった。 ただ、静かに頷く。 彩 「うん。覚悟してた。 おねーちゃん、ずっと準備してたもんね」 レイラ 「虐待の診断書も、浪費の証拠も揃えた」 一拍。 レイラ 「でも……裁判所は“急な環境の変更”を嫌うの。 だから、決定が出るまでは── 今の家で暮らすことになる」 彩の視線が、マグカップへ落ちる。 揺れる湯気の向こうで、顔がほんの一瞬だけ曇った。 彩 「……やっぱり、そうなるんだね」 レイラは、息を呑む。 そして、ゆっくりと首を振った。 レイラ 「ごめんね、彩」 声を低く、慎重に選ぶ。 レイラ 「わかってる。 あの家で過ごすのが、どれだけ苦しいか」 一拍、置いて。 レイラ 「でも今は、“我慢しているあなた”の姿を見せることが、 一番の証明になるの。 ……あと少しだけ、耐えてほしい」 彩は小さく頷く。 だが、唇を噛みしめる。 彩 「……もし、また何かされたら?」 レイラの瞳が、わずかに揺れる。 次の瞬間、鋭く光を取り戻した。 レイラ 「すぐに電話して」 即答だった。 レイラ 「どんな時間でもいい。 仕事中でも、撮影中でも、必ず出る」 彩を、まっすぐ見る。 レイラ 「あなたの声を聞いたら、私はすぐに動く」 彩の目に、涙が滲む。 レイラは、その手をそっと包んだ。 レイラ 「彩。これは約束よ」 声を落とす。 レイラ 「“助けて”って言ったら、 私はどんな場所にいても駆けつける」 一拍。 レイラ 「だから、怖くなったら……我慢しないで」 彩 「……うん」 小さな声。 彩 「おねーちゃんがそう言うと…… なんか、大丈夫な気がする」 レイラは微笑む。 だがその奥には、戦う者だけが持つ緊張が滲んでいた。 しばらくして、彩がぽつりと本音をこぼす。 彩 「で
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第9話《誰も着ない服》
──世界は、まだ歌原彩を知らない。 だがその日、誰にも期待されなかった一着が、 静かに運命を変えた── 1 芸能スタジオ・控室 撮影終わりの空気が、まだ部屋に残っていた。 子役モデルたちがソファに腰掛け、 スマホを見たり、水を飲んだりしている。 そこへ、ラフなジャケット姿の男が入ってきた。 人気俳優――三堂蓮。 俳優としての知名度を武器に、 近頃は個人ブランドも立ち上げた男だった。 蓮は控室を見渡し、 ふと一人の少女の前で足を止める。 蓮 「君、新人?」 子役モデルA 「え……はい」 蓮 「中学生?」 子役モデルA 「中一です」 蓮は軽く笑った。 蓮 「へぇ。大人っぽいな。モデルとして売れそうだ」 スマホ画面を見せる。 そこにはブランドロゴ。 Iva Lucia(イヴァ・ルシア) 蓮 「俺のブランド。今度、雑誌で使うんだよ。 君、モデルやらない?」 少女は困ったように笑って頭を下げた。 子役モデルA 「すみません。お仕事は事務所に任せてるので、私からはちょっと……」 蓮 「え? そういうもんなの?」 気を取り直して隣を見る。 蓮 「じゃあ、君は?」 子役モデルB 「あ、あの……私も事務所が……」 蓮 「また事務所?」 蓮は苦笑し、肩をすくめた。 蓮 「なんだよ。事務所、事務所って。 自分の意思はないのか?」 子役たちは曖昧に笑うしかない。 空気が少しだけ冷えたところで、 奥からプロデューサーが近づいてきた。 プロデューサー 「三堂さん」 蓮 「ちょうどいい。 Iva Luciaに相応しいモデル、いない?」 プロデューサーは少し考え、 ふと顔を上げる。 プロデューサー 「……歌原レイラさんの妹、どうでしょう」 蓮の眉が上がる。 蓮 「マジ? あの歌原レイラの妹?」 プロデューサー 「最近、レイラさんから “妹がモデルを始めたい。どんな小さな仕事でもいいからないか” って相談されてまして」 蓮は小さく笑った。 蓮 「はは。俺の仕事は“小さな仕事”ってこと?」 プロデューサー 「いえ、そのような意味では……」 蓮 「冗談だよ」 肩の力を抜いた笑みを浮かべる。 蓮 「あの歌原レイラの妹が 僕のブランドを着てくれるならありがた
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第10話《守る者》
──一枚の写真は、静かに世界を動かした。 だが、本物の問題は、そこから始まる── 1 UTAHARA OFFICE・会議室 朝。 机の上に、雑誌が何冊も積まれている。 表紙の横には事務所ロゴ。 UTAHARA OFFICE レイラが独立して立ち上げた個人事務所。 小さな会社だが、その名はすでに業界で知られていた。 開かれたページの中央。 そこに立つ少女。 歌原彩。 白い光の中で、派手でもなく、媚びてもいない。 それなのに、服だけが不思議なほど鮮明に見えた。 会議室のあちこちで、スタッフたちがスマートフォンを見つめている。 スタッフA 「また増えてる」 スタッフB 「トレンド、まだ落ちません」 スタッフC 「“このモデル誰?”、“この服こんな良かった?”、“イヴァ・ルシア完売”…投稿止まってないです」 別のスタッフが、半ば呆然とした声で言う。 スタッフ 「通販、全部売り切れたらしいです」 スタッフ 「店舗在庫も朝の時点でほぼゼロだって」 スタッフ 「ブランド側、追加生産に入るそうです」 会議室の扉が開く。 レイラが入ってくる。 部屋の空気が一瞬で引き締まる。 スタッフ 「レイラさん」 レイラは何も言わず、机の上の雑誌を一冊手に取る。 静かにページをめくる。 そこにいるのは彩だった。 けれど彼女自身よりも先に、服が目に入る。 布の落ち感。 線の整い。 空気を含んだような静かな立ち姿。 服が、呼吸している。 レイラ 「……そう」 それだけだった。 だがその声には、確かな確認があった。 スタッフが資料を差し出す。 スタッフ 「オファーが来ています」 スタッフ 「雑誌特集、CM、テレビ、インタビュー、ブランドタイアップ…」 スタッフ 「全部、彩ちゃん宛です」 レイラは資料に目を落としたまま言う。 レイラ 「柳田は?」 スタッフ 「外部打ち合わせから戻っています」 レイラ 「呼んで」 一拍。 レイラは視線を会議室の奥へ向ける。 そこには一人の男性が立っていた。 スーツ姿。 落ち着いた雰囲気。 望月(45)。 UTAHARA OFFICE 代表代理。 かつてレイラが所属していた大手事務所 HORIZON その時代から、レイラのマネジメントを担
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